コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ペックズ・レックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ロッキー博物館のペックズ・レックス。

ペックズ・レックスPeck's Rex、標本番号 MOR 980)は、アメリカ合衆国モンタナ州ヘルクリーク累層から産出したティラノサウルスの個体。モンタナズ・レックスとも呼ばれる。第3中手骨が保存されていることで知られ、実骨化石はロッキー博物館英語版で展示されている。

発見

[編集]

ペックズ・レックスはモンタナ州東部のヘルクリーク累層にて[1][2]、1997年7月にコネチカット州の高校教師であるルイス・E・トレンブレーがフォートペック・ダム英語版の近くで発見した[2][3][4]。化石は密集しており、腐肉食者や分解者に漁られるよりも早く柔らかい泥に埋没したと考えられている。フォートペック古生物株式会社から派遣された調査チームが発掘した。発掘中に土地の所有権争いがあり、所有権を主張する男が化石を盗むという事件が起きたが、後に返還された[4]

ペックズ・レックスというニックネームは発見地に近いフォートペック英語版に因んで命名された。1998年にアメリカ陸軍工兵隊ロッキー博物館英語版に委託し、この時に標本番号 MOR 980 が指定され、モンタナズ・レックスという別のニックネームもついた[3]

特徴

[編集]

全長約12メートル、高さ約3.7メートル[3]シカゴ博物館学芸員であるピート・マコヴィッキーは、ペックズ・レックスの大腿骨周囲長が最大級のティラノサウルス個体であるスコッティスーと同等であることを指摘し、この2個体と同格の大きさであると主張した[5]

比較的多くの骨が保存されているが、その保存度合いは情報源によって異なる値が発表されている。ブラックヒルズ地質学研究所は30%以上[6]、"Tyrannosaurus rex, the tyrant king"[7]は40%、アメリカ陸軍は約60%[3]、トッド・ホエルマーは65%[4]、Bozeman Daily Chronicle は約80%[8]としている。ペックズ・レックスは特に第3中手骨が保存されている最初の標本であることでも知られる[4]。骨格には顎の備わった頭骨と歯[4]腹肋骨[3]、大腿骨[5]叉骨[4]、第3中手骨を含む右指骨などが保存されている。なお、左脚は発見されていない[4]

顎の骨には4つの噛み跡が確認されており、トッド・ホエルマーは他のティラノサウルス個体との餌や縄張りの奪い合いによるものであると推測している[4]。また、ペックズ・レックスは恐竜に見られる寄生性原虫の症状や[3]、前肢の使用方法の研究に用いられた。ペックズ・レックスの第3中手骨には、荷重や圧力によって引き起こされる可能性のある、辺縁部の骨折の繰り返しの痕跡が確認されている。

展示

[編集]

ペックズ・レックスのレプリカは2003年11月にメリーランド科学センター英語版が13万ドルで購入した[4]ほか、Fort Peck Interpretive Center and Museum[9]カーネギー自然史博物館などの博物館で展示された。カーネギー自然史博物館ではティラノサウルスのホロタイプ標本 CM 9830 と向き合ってエドモントサウルスの死骸を奪おうとする形で展示された[10][11][12]。前肢や歯、足や顎の一部といった部位のレプリカも販売されていた[2]

かつてロッキー博物館に展示されていたワンケル・レックスは2013年に国立自然史博物館に移され[13]トリケラトプスハッチャーを食べている姿でダイナソー・ホールの目玉展示として常設展示された[3]

出典

[編集]
  1. ^ article-niche.com”. Article-niche.com (4 March 2009). 2012年10月29日閲覧。
  2. ^ a b c Welcome to the Fort Peck Paleontology Online Gift Shop”. Fortpeckpaleo.com. 2008年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g Eileen Williamson. “What's the Army doing with dinosaurs? Redux”. アメリカ陸軍. 2020年12月29日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i Miller, Jared (2004年5月7日). “Finger bone, details give dino display its edge”. Greatfallstribune.com. 2011年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  5. ^ a b Steve Johnson (2019年3月29日). “Scotty vs. Sue: Is the Canadian T. rex really bigger than Chicago's? The Field Museum disputes new study”. Chicago Tribute. 2020年12月29日閲覧。
  6. ^ Specimen Catalog for Tyrannosaurus rex”. ブラックヒルズ地質学研究所 (2005年). 2020年12月29日閲覧。
  7. ^ Peter L. Larson; Kenneth Carpenter. Tyrannosaurus rex, the Tyrant King. Indiana University Press. pp. [要ページ番号]. ISBN 978-0253350879 
  8. ^ Gail Schontzler (2013年6月28日). “Montana T. rex heading to Smithsonian”. Bozeman Daily Chronicle. 2020年12月29日閲覧。
  9. ^ Weekender- Fort Peck” (8 August 2006). 2006年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。23 March 2019閲覧。
  10. ^ Robert Isenberg (2008年3月6日). “History: Head Trip”. Pittsburghcitypaper.ws. 2008年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  11. ^ Kathy SaeNgian (2008年6月12日). “Battling T. rexes face off in new Carnegie exhibit”. Post-gazette.com. 2008年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  12. ^ Electronic Images Web Site”. 13 June 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月29日閲覧。
  13. ^ J. Freedom du Lac (2013年6月27日). “T. rex dinosaur gets long-term lease at Smithsonian’s Natural History Museum”. ワシントン・ポスト. https://www.washingtonpost.com/local/tyrannosaurus-rex-gets-long-term-lease-at-smithsonians-natural-history-museum/2013/06/27/0ac970c8-de76-11e2-b797-cbd4cb13f9c6_story.html 2020年12月27日閲覧。