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プロディプロキノドン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
プロディプロキノドン
地質時代
後期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
上目 : ワニ形上目 Crocodylomorpha
階級なし : 新鰐類 Neosuchia
: ワニ目 Crocodilia
: プロディプロキノドン Prodiplocynodon
学名
Prodiplocynodon Mook, 1941
  • Prodiplocynodon langi Mook, 1941 (タイプ)

プロディプロキノドン学名Prodiplocynodon)は、絶滅した基盤的なワニ[1]アメリカ合衆国ワイオミング州に分布する上部白亜系マーストリヒチアン階のランス層化石が産出している[1]。ランス層はティラノサウルストリケラトプスといった恐竜の化石が産出する地層でもあり、プロディプロキノドンはそうした恐竜と共存していた属でもある[1]。なお学名は「ディプロキノドンの前」という意味であるが、命名当時と異なり、ディプロキノドンとの近縁性は支持されていない[1]

特徴

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頭蓋骨の個々の骨の輪郭を描く縫合線の大半はホロタイプ標本において見ることができず、多くの場合は亀裂によって曖昧になっている。しかし、プロディプロキノドンの頭蓋骨の全体的な形状は基盤的アリゲーター上科のものと類似す[2]。プロディプロキノドンに見られる特徴は多くが正鰐類と共通する。頭蓋骨は短くかつ三角形で、長さは約50センチメートルである。眼窩は極めて大型であり、三角形に近い。歯は短く、ある程度鋭利であり、現生のワニと比較して変化はほぼ無い。眼窩は直接上に向いているが、これはホロタイプ標本が僅かに圧縮されたためである可能性がある。外鼻孔の開口部は非常に大型である。前上顎骨上顎骨が接する地点は狭窄されており、下顎に生えた大型の歯がここで接する。プロディプロキノドンの狭窄は深くなく、アリゲーター属クロコダイル属の中間である[3]

分類

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Mookはプロディプロキノドンがアリゲーター科クロコダイル科の両方の特徴を兼ね備えていることから、2科の祖先である可能性を提唱した。しかし、Mookは現生のクロコダイル類に認められるプロディプロキノドンに見られる特徴のうちいくつかが収斂進化に起因する可能性も指摘していた[3]。このため、プロディプロキノドンはアリゲーター亜科の属として提唱された[4][5]

プロディプロキノドンが系統解析の内群として扱われたのは1996年が初めてのことであった。当該の研究では、プロディプロキノドンはアリゲーター亜科英語版が持つ7個の明確な共有派生形質を全て欠いていたためアリゲーター亜科から除外されることとなった。1996年の研究によれば、プロディプロキノドンをアリゲーター亜科から除外した形質の例としては、前上顎骨と上顎骨の間に明瞭な外側の狭窄が存在すること、鼻骨涙骨が接すること、物体を破砕する強靭な歯を口器の後側に持たないことが挙げられる。この時の系統解析でプロディプロキノドンはクロコダイル亜科英語版ではなくアリゲーター亜科の姉妹群として扱われており、その理由はプロディプロキノドンの頬骨と涙骨の縫合線が眼窩の腹側の縁よりも短かったためである。しかし、本研究の著者らはこの特徴が派生的なクロコダイル亜科にも見られること、またアリゲーター亜科の内集団のいくつかでは失われていることを指摘し[6]

その後の系統解析では、プロディプロキノドンはアジアトスクスと共に基盤的なクロコダイル上科として扱われている[7][8][9]。以下のそのクラドグラムを示す。

クロコダイル上科 

Prodiplocynodon langi

Asiatosuchus germanicus

Crocodylus affinis

Dormaal crocodyloid

Crocodylus acer

Brachyuranochampsa eversolei

 クロコダイル科 

トミストマ亜科*

クロコダイル亜科

*: 遺伝子的証拠からは、現生のマレーガビアルをはじめとするトミストマ亜科はインドガビアル上科に属することが示唆されている[10][11]


形態情報・分子情報・層序情報を用いたLee & Yates (2018)の解析ではワニ目の内部の類縁関係が確立され[12]、絶滅したヴォアイ英語版のDNAを抽出することでHekkala et al. (2021)がパレオゲノミクスを用いてこれを拡張した[13]。以下はプロディプロキノドンはをクロコダイル上科の外に置き、ロンギロストレス類英語版よりも基盤的な属として扱ったLee & Yates (2018)に基づくクラドグラムである[12]

ワニ目

アリゲーター上科

Prodiplocynodon

Asiatosuchus

"Crocodylus" affinis

"Crocodylus" depressifrons

"Crocodylus" acer

Brachyuranochampsa

メコスクス類英語版

ロンギロストレス類英語版
クロコダイル上科

"Crocodylus" megarhinus

クロコダイル科

インドガビアル上科

絶滅した基盤的インドガビアル上科

インドガビアル科

Gavialis

Tomistoma

出典

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  1. ^ a b c d 小林快次『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、39頁。ISBN 978-4-8329-1398-1 
  2. ^ Brochu, C. A. (2003). “Phylogenetic approaches toward crocodylian history”. Annual Review of Earth and Planetary Sciences 31 (31): 357–97. Bibcode2003AREPS..31..357B. doi:10.1146/annurev.earth.31.100901.141308. http://www.naherpetology.org/pdf_files/970.pdf. 
  3. ^ a b Mook, C. C. (1941). “A new crocodilian from the Lance Formation”. American Museum Novitates (1128): 1–5. hdl:2246/2257. https://hdl.handle.net/2246/2257. 
  4. ^ Steel, R. (1973). “Crocodilia”. Handbuch der Paläoherpetologie. Stuttgart and Portland: Gustav Fischer Verlag. pp. 116pp 
  5. ^ Carroll, R. L. (1988). Vertebrate Paleontology and Evolution. New York: W H. Freeman and Company. pp. 698pp. ISBN 9780716718222. https://archive.org/details/vertebratepaleon0000carr 
  6. ^ Wu, X.-C.; Brinkman, D. B.; Russell, A. P. (1996). “A new alligator from the Upper Cretaceous of Canada and the relationships of early eusuchians”. Palaeontology 39 (2): 351–375. https://www.palass.org/publications/palaeontology-journal/archive/39/2/article_pp351-375. 
  7. ^ Brochu, C. A. (2000). “Phylogenetic relationships and divergence timing of Crocodylus based on morphology and the fossil record”. Copeia 2000 (3): 657–673. doi:10.1643/0045-8511(2000)000[0657:pradto]2.0.co;2. 
  8. ^ Brochu, C. A.; Gingerich, P. D. (2000). “New tomistomine crocodylian from the middle Eocene (Bartonian) of Wadi Hitan, Fayum Province, Egypt”. Contributions from the Museum of Paleontology: The University of Michigan 30: 251–268. hdl:2027.42/48660. https://hdl.handle.net/2027.42/48660. 
  9. ^ Hua, S.; Jouve, S. (2004). “A primitive marine gavialoid from the Paleocene of Morocco”. Journal of Vertebrate Paleontology 24 (2): 341–350. doi:10.1671/1104. http://doc.rero.ch/record/15183/files/PAL_E2459.pdf. 
  10. ^ Densmore, L. D.; Owen, R. D. (1989). “Molecular systematics of the order Crocodilia”. American Zoologist 29 (3): 831–841. doi:10.1093/icb/29.3.831. 
  11. ^ Brochu, C. A. (2004). “A new Late Cretaceous gavialoid crocodylian from Eastern North America and the phylogenetic relationships of Thoracosaurs. Journal of Vertebrate Paleontology 24 (3): 610–633. doi:10.1671/0272-4634(2004)024[0610:anlcgc]2.0.co;2. http://doc.rero.ch/record/15194/files/PAL_E2470.pdf. 
  12. ^ a b Michael S. Y. Lee; Adam M. Yates (27 June 2018). “Tip-dating and homoplasy: reconciling the shallow molecular divergences of modern gharials with their long fossil”. Proceedings of the Royal Society B 285 (1881). doi:10.1098/rspb.2018.1071. PMC 6030529. PMID 30051855. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6030529/. 
  13. ^ Hekkala, E.; Gatesy, J.; Narechania, A.; Meredith, R.; Russello, M.; Aardema, M. L.; Jensen, E.; Montanari, S. et al. (2021-04-27). “Paleogenomics illuminates the evolutionary history of the extinct Holocene "horned" crocodile of Madagascar, Voay robustus” (英語). Communications Biology 4 (1): 505. doi:10.1038/s42003-021-02017-0. ISSN 2399-3642. PMC 8079395. PMID 33907305. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8079395/.