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ヒドララジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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ヒドララジン
Skeletal formula of hydralazine
Ball-and-stick model of the hydralazine molecule
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Apresoline
Drugs.com monograph
MedlinePlus a682246
ライセンス US FDA:リンク
胎児危険度分類
  • AU: C
  • US: C
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能26-50%
血漿タンパク結合85-90%
代謝Hepatic
半減期2-8 hours, 7-16 hours (renal impairment)
排泄Renal
データベースID
CAS番号
86-54-4 チェック
ATCコード C02DB02 (WHO)
PubChem CID: 3637
IUPHAR/BPS英語版 7326
DrugBank DB01275 チェック
ChemSpider 3511 チェック
UNII 26NAK24LS8 チェック
KEGG D08044  チェック
ChEBI CHEBI:5775 チェック
ChEMBL CHEMBL276832 チェック
化学的データ
化学式C8H8N4
分子量160.176 g/mol
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ヒドララジン(Hydralazine)は血管平滑筋に直接作用して弛緩させる血管拡張薬の一つであり、高血圧の治療に用いられる。商品名アプレゾリン。特に動脈細動脈への作用が高い。ヒドラジン系薬剤に分類される[1]血管平滑筋英語版の弛緩により、血流の末梢抵抗英語版が減少し、血圧を低下させ、後負荷英語版を軽減させる[2]。しかし、血圧低下作用は短時間しか持続しない。腎臓でのナトリウム利尿英語版を維持するためにはある程度以上の血圧が必要であり、身体はヒドララジンによる血圧低下をリセットして血圧を上昇させる。高血圧治療薬の長期的有効性は、血圧-ナトリウム利尿曲線(圧利尿曲線)を移動させる事で発現する。

WHO必須医薬品モデル・リストに収載されている[3]

効能・効果

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ヒドララジンは心臓に対して交感神経刺激作用(血圧反射機能)を持つので第一選択薬には採用されない[4]。この刺激作用で心拍数と心拍出量が上昇し、冠血管疾患を有する患者の狭心症心筋梗塞を誘発する[2]

ヒドララジンは血漿レニン濃度の上昇させ、体液貯留をもたらす。これらの望ましくない作用を防止するため、ヒドララジンは通常β遮断薬(プロプラノロール等)や利尿薬と併用される[2]。ヒドララジンは重症高血圧の治療に用いられるが、本態性高血圧の第一選択薬ではない。しかし妊娠高血圧に対しては、メチルドパとの併用が第一選択とされている[5]

DNAメチル基転移酵素の阻害活性を有するため、骨髄異形成症候群の治療にも適用される[6]

ヒドララジンはアフリカ系米国人の心不全の治療に二硝酸イソソルビド併用英語版される。

禁忌

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ヒドララジンは次の患者には禁忌である[7][8]

  • 虚血性心疾患のある患者
  • 大動脈弁狭窄、僧帽弁狭窄および拡張不全(肥大型心筋症、収縮性心膜炎、心タンポナーデ等)による心不全のある患者
  • 高度の頻脈および高心拍出性心不全(甲状腺中毒症等)のある患者
  • 肺高血圧症による右心不全のある患者
  • 解離性大動脈瘤のある患者
  • 頭蓋内出血急性期の患者
  • 製剤成分に対し過敏症の既往歴のある患者

そのほか、英語版の添付文書では、特発性全身性エリテマトーデスの患者に禁忌とされている[9]

副作用

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重大な副作用には、SLE様症状(発熱、紅斑、関節痛、胸部痛等)、劇症肝炎、肝炎、肝機能障害、黄疸、鬱血性心不全、狭心症発作誘発、麻痺性イレウス、呼吸困難、急性腎不全、溶血性貧血、汎血球減少、多発性神経炎、血管炎がある[7][8]

頻繁に見られる副作用(>10%)は、頭痛、頻脈、心悸亢進である[9]

1〜10%に見られる副作用としては、顔面潮紅、低血圧、狭心症症状、関節痛抗核因子(ANF)試験陽性、胃腸障害、 下痢、嘔気、嘔吐、関節腫脹、筋肉痛浮腫が知られている[9][10]

相互作用

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ヒドララジンは以下の薬剤の血圧低下作用を増強する[9]

交感神経β受容体遮断薬等、肝臓で強い初回通過効果を受ける薬剤の生物学的利用能は増加する[9]アドレナリンの心拍増加作用は増強され、毒性を発現し得る[9]

作用機序

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ヒドララジンが動脈血管を拡張する作用機序は未だ明確ではない。ヒドララジンが一酸化窒素を生成して作用するためには血管内皮細胞が必須であり[11]、従って細胞が生きているin vivo 環境でのみ作用が発現する。摘出された血管を用いたin vitro 実験では効果が現れない。

2004年に低酸素誘導因子の活性化が作用機序として提唱された[12]

出典

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  1. ^ Bourreli, B.; Pinaud, M.; Passuti, N.; Gunst, J. P.; Drouet, J. C.; Remi, J. P. (1988). “Additive effects of dihydralazine during enflurane or isoflurane hypotensive anaesthesia for spinal fusion”. Canadian Journal of Anaesthesia 35 (3): 242–248. doi:10.1007/BF03010617. PMID 3383316. 
  2. ^ a b c Harvey, Richard A., Pamela A. Harvey, and Mark J. Mycek. Lippincott's Illustrated Reviews: Pharmacology. 2nd ed. Philadelphia: Lipincott, Williams & Wilkins, 2000. 190.
  3. ^ WHO Model List of EssentialMedicines”. World Health Organization (October 2013). 22 April 2014閲覧。
  4. ^ Kandler MR, Mah GT, Tejani AM, Stabler SN, Salzwedel DM. Hydralazine for essential hypertension. Cochrane Database of Systematic Reviews 2011, Issue 11. Art. No.: CD004934. DOI: 10.1002/14651858.CD004934.pub4.
  5. ^ Bhushan, Vikas, Tao T. Lee, and Ali Ozturk. (2007). First Aid for the USMLE Step 1.. McGraw-Hill Medical. p. 251. ISBN 978-0071597944 
  6. ^ Candelaria, M; Herrera, A; Labardini, J; González-Fierro, A; Trejo-Becerril, C; Taja-Chayeb, L; Pérez-Cárdenas, E; Cruz-Hernández, E et al. (5 October 2010). “Hydralazine and magnesium valproate as epigenetic treatment for myelodysplastic syndrome. Preliminary results of a phase-II trial”. Annals of Hematology 90 (4): 379–387. doi:10.1007/s00277-010-1090-2. PMID 20922525. 
  7. ^ a b アプレゾリン錠10mg/アプレゾリン錠25mg/アプレゾリン錠50mg/10%アプレゾリン散「チバ」 添付文書” (2015年3月). 2016年4月11日閲覧。
  8. ^ a b アプレゾリン注射用20mg 添付文書” (2015年3月). 2016年4月11日閲覧。
  9. ^ a b c d e f PRODUCT INFORMATION APRESOLINE (hydralazine hydrochloride 20 mg powder for injection ampoule)” (PDF). TGA eBusiness Services. Link Medical Products Pty Ltd (27 March 2005). 13 February 2014閲覧。
  10. ^ Rossi, S, ed (2013). Australian Medicines Handbook (2013 ed.). Adelaide: The Australian Medicines Handbook Unit Trust. ISBN 978-0-9805790-9-3 
  11. ^ antihtn”. 2008年10月5日閲覧。
  12. ^ Knowles HJ, Tian YM, Mole DR, Harris AL (July 2004). “Novel mechanism of action for hydralazine: induction of hypoxia-inducible factor-1alpha, vascular endothelial growth factor, and angiogenesis by inhibition of prolyl hydroxylases”. Circ. Res. 95 (2): 162–9. doi:10.1161/01.RES.0000134924.89412.70. PMID 15192023. http://circres.ahajournals.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=15192023. 

関連項目

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