コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

エイジュ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブライアーから転送)
エイジュ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: ツツジ科 Ericaceae
: エリカ属 Erica
: エイジュ E. arborea
学名
Erica arborea L.
和名
エイジュ
英名
briar, brier, tree heath

エイジュ(栄樹)[2]あるいはブライヤまたはブライア英語: brier, briar)(学名Erica arborea L. エリカ・アルボレア[3])は、ヨーロッパ南部から南西アジアなどの地中海沿岸地域や東アフリカに分布するツツジ科エリカ属の常緑低木のことである。

3-7月頃に開花し、温室などで栽培することが多い。また、スコットランドなどに多いヒースに似た白い花を咲かせることから、別名としてホワイトヒース (: White heath) と呼ばれることもある[4]

パイプの原料となる(参照: #利用)。

リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[5]

分布

[編集]

アルジェリアアルバニアアンドライエメンイタリアウガンダエチオピアエリトリアギリシャ(本土およびクレタ島)、クロアチアケニアコンゴ民主共和国サウジアラビアジョージアスペイン(本土、カナリア諸島バレアレス諸島)、ソマリアタンザニアチュニジアトルコ(ヨーロッパ側)、フランス(本土およびコルシカ島)、ブルガリアボスニア・ヘルツェゴヴィナポルトガル(本土およびマデイラ島)、南スーダンモロッコモンテネグロルワンダに見られる[1]

ケニアでは標高2100-4500メートルの岩の多い森林地帯に自生が見られ、高山においてコソノキHagenia abyssinica)の林よりも標高の高い場所に共優占種として繁茂している[6]ケニア山#植物相も参照)。

本属の植物はヨーロッパのものがヒースとの関わりもあってよく知られるが、種数としては約600種が南アフリカを中心とした地域に集中しており、その一部は東アフリカ東部にまで分布している。ヨーロッパから地中海に分布するものは14種ほどで、そんな中にあって本種が地中海地方からコーカサスに分布し、その上にアフリカ北部に自生していることは、この属の南北の分布域をつなぐものであり、両者に連絡があったことを示すと考えられる[7]

特徴

[編集]

低木あるいは高木、0.5-7.5メートルで枝は傾上する[6]。以下は部位ごとの説明となる。

葉は傾上し、2-6.5×約1ミリメートルである点が挙げられる[6]

花は4部位からなり、色が白か桃色で長さ1.5-3ミリメートル、小花柄の下方の中ほどに見られる点が挙げられる[6]

果実は赤色で長さ3ミリメートル以下となる[6]蒴果で、その中に多数の小さな種子を含む[8]

利用

[編集]

エイジュは木としては強い難燃性を持ち、鉱物に比べ軽量であり、そのためタバコパイプ(喫煙具)の材料によく用いられる。このエイジュの木の根(ブライアルート (: briar root))から作られるタバコ用のパイプは、高級品(高級材)としても広く知られている[4]。ブライヤ材で作るパイプの原材料には、主にエイジュの木の根が使われることが多いが、廉価な製品では幹に近い箇所も利用される。

パイプの種類にはエイジュのほか、金属や陶器、カエデやサクラなどの木材、トウモロコシの芯を使ったもの(コーンパイプ)など様々なものがあるが、エイジュ製のものが耐久性に優れ風合いなどが好まれることから広く普及しており、しばしば「パイプの王様」と位置づけられる。

エチオピアでは乾いた枝を家回りの柵作りに用いたりするほか、木炭作り、飼料(葉および芽)、ミツバチの餌、生け垣作りに用いる[8]

備考

[編集]
  • 野生のバライバラの茂みのことを英語でブライアー (brier, briar) と呼ぶため、ブライヤ材はバラの根と混同されることがある[4]

諸言語における呼称

[編集]

ケニア:

脚注

[編集]
  1. ^ a b Harvey-Brown & Barstow (2017).
  2. ^ a b c 山崎・堀田 (1989).
  3. ^ 冨山 (2003).
  4. ^ a b c 日本パイプクラブ連盟 (2009).
  5. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 353. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358372 
  6. ^ a b c d e f Beentje (1994).
  7. ^ 塚本・三輪 (1988:353).
  8. ^ a b c Bekele-Tesemma (2007).
  9. ^ a b 塚本・三輪 (1988:354).
  10. ^ 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 (1994).
  11. ^ 鈴木ら (1968).
  12. ^ Benson (1964).

参考文献

[編集]

英語:

  • "thithinda", "thithinda2" in Benson, T.G. (1964). Kikuyu-English dictionary. Oxford: Clarendon Press. p. 519. NCID BA19787203 
  • Beentje, H.J. (1994). Kenya Trees, Shrubs and Lianas. Nairobi, Kenya: National Museum of Kenya. ISBN 9966-9861-0-3. http://www.nzdl.org/gsdlmod?e=d-00000-00---off-0unescoen--00-0----0-10-0---0---0direct-10---4-------0-1l--11-en-50---20-about---00-0-1-00-0--4----0-0-11-10-0utfZz-8-10&a=d&c=unescoen&cl=CL1.6&d=HASH01b88f73433d5003648dbf5b.12.92 
  • Bekele-Tesemma, Azele (2007). Useful trees and shrubs of Ehiopia: Identification, Propagation and Management for 17 Agroclimatic Zones, pp. 238–9. Nairobi, Kenya: RELMA in ICRAF Project. ISBN 92 9059 212 5 Accessed online 27 September 2018 via http://www.worldagroforestry.org/usefultrees NCID BA64717097
  • Harvey-Brown, Y. & Barstow, M. (2017). Erica arborea. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T73094040A109616921. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T73094040A109616921.en. Downloaded on 24 September 2018.

日本語:

  • bruyère鈴木信太郎ほか共著『スタンダード仏和辞典』大修館書店、1968年。
  • 塚本洋太郎・三輪智「エリカ〔属〕」『園芸植物大事典1』小学館、1988年、353-360頁。
  • 山崎敬+堀田満「Erica L. エリカ属」 『世界有用植物事典』平凡社、1989年、424頁。ISBN 4-582-11505-5
  • 小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版 編集委員会 編『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2)、1994年。ISBN 4-09-510101-6 
  • 冨山稔 写真、大場秀章 監修『世界のワイルドフラワーI 地中海ヨーロッパ / アフリカ; マダガスカル編』学研、2003年、12・107頁。ISBN 4-05-201912-1
  • 日本パイプクラブ連盟 編『パイプ大全』(第3)未知谷、2009年、40-43頁。ISBN 978-4-89642-269-6 


関連項目

[編集]