ブドウの房を持つ聖母
フランス語: La Vierge à la grappe 英語: The Virgin of the Grapes | |
作者 | ピエール・ミニャール |
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製作年 | 1655-1657年ごろ |
種類 | キャンバス、油彩 |
寸法 | 121 cm × 94 cm (48 in × 37 in) |
所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『ブドウの房を持つ聖母』(ブドウのふさをもつせいぼ、仏: La Vierge à la grappe、英: The Virgin of the Grapes) は、17世紀フランスの画家ピエール・ミニャールが1655–1657年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。同主題で描かれた4点のヴァージョンのうちの1点で[1][2]、画家のヴェネツィア滞在後に描かれた。1695年以前にフランス王ルイ14世のコレクションに入り、1793年のパリのルーヴル美術館の開館時以来[1]、同美術館に展示されている[1][2][3]。
作品
[編集]ミニャールは22年間もの長い間ローマで制作した後、45歳であった1657年ごろにフランスに帰った。彼は主席宮廷画家シャルル・ルブランの競争相手として激烈な権力争いを展開したが、ル・ブランの没落によって美術界の中心人物となった[3]。ル・ブランが壮大で力強い作風であるのに対し、ミニャールの画風は軽快で優美な点に特徴があり、特に婦人や子供の肖像画に優れたものがある[3]。
ミニャールはローマ滞在時にはプッサンやアンニーバレ・カラッチに学んだといわれる[3]が、本作の構図はラファエロに由来し[1]、聖母マリアの優しい顔立ちもまたラファエロを想起させる[2][3]。ミニャールはラファエロの熱烈な崇拝者で、晩年にいたるまでラファエロの作品を模写し続けた[2]。本作の聖母の顔立ちにはレオナルド・ダ・ヴィンチのような陰影も認められる[3]。非常な人気を博したミニャールの聖母子画は当時、「ミニャルド (Mignardes)」と呼ばれた[1]。
聖母の鮮烈な赤色と青色の目立つ衣の上にクッションが置かれ、鑑賞者の方を向いた幼子イエス・キリストが座っている。彼の左手は聖母の顔にかかるヴェールを掴み、右手は聖母から差し出されたブドウの房に置かれている[3]。ブドウというモティーフは聖母子を表す絵画にはしばしば描かれるもので、後のキリストの受難による血を象徴する[2][3]。この主題は対抗宗教改革に関連するものであった[1]。
なお、本作の別ヴァージョンの2点は、それぞれスペイン王カルロス2世、ヴァランティノワ (Valentinois) 公ジャック・フランソワ・レオノール・ド・ゴワヨン (Jacques François Léonor de Goyon,1689-1751年) のために描かれ、もう1点はミニャールの1695年の死後の目録に記載されている[1][2]。本作は、ルイ14世がヴェルサイユに有していた小邸宅 (Petit Appartement) の1695年と1701年の目録に記載されている[1][2]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h “La Vierge à la grappe”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『ルーヴル美術館200年展』、1993年、34頁。
- ^ a b c d e f g h 『NHKルーブル美術館VI フランス芸術の華』、1986年、62頁。
参考文献
[編集]- 『ルーヴル美術館200年展』、横浜美術館、ルーヴル美術館、日本経済新聞社、1993年刊行
- 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館VI フランス芸術の花』、日本放送出版協会、1986年刊行 ISBN 4-14-008426-X