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ブチルシアノアクリレート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
n-Butyl cyanoacrylate
Structural formula of butyl cyanoacrylate
Space-filling model of the butyl cyanoacrylate molecule{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 6606-65-1
ChemSpider 21607
UNII F8CEP82QNP チェック
ChEMBL CHEMBL2104251
特性
化学式 C8H11NO2
モル質量 153.18 g mol−1
密度 1.4430
沸点

83-84°C (3 mm Hg)

危険性
引火点 80 °C (176 °F; 353 K)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

n-ブチルシアノアクリレート (n-BCANBCA)は、シアノアクリル酸エステルであり、2-シアノ-2-プロペン酸のブチルエステルである。無色の液体であり、鋭い、刺激臭を有する。水には不溶である。その主な用途は医療用のシアノアクリレート系接着剤の主成分である[1]。以下のような様々な商標で販売されている、MediBond、MediCryl、PeriAcryl、GluStitch、Xoin、Gesika、VetGlu、Vetbond、LiquiVet、Indermil、LiquiBand、Histoacryl、IFABond[2]。NBCAの国際一般名 (INN)は、エンブクリレート(enbucrilate)である。

医学や獣医学用途では、NBCA、イソブチルシアノアクリレートオクチルシアノアクリレートが一般的に使用される。それら化学物質は静菌作用を示し、その使用において、通常、痛みを伴わない。ブチルエステルはより強力に接着するが硬い。一方、オクチルエステルは接着は弱いものの、より柔軟性を示す。オクチルシアノアクリレートとn-ブチルシアノアクリレートをブレンドすると、柔軟性と強い結合を兼ね備えた接着剤となる(例えばGLUtureのように)。NBCAは、脳動静脈奇形の手術前の塞栓術に利用される。

NBCAは、アセトンメチルエチルケトンニトロメタン塩化メチレンに溶解する[3]

NBCAモノマーは、水分、血液、組織液のようなイオン性物質が存在すると、急速に重合反応を起こす。

NBCAはオクチルシアノアクリレート、イソアミルシアノアクリレートのようなシアノアクリレートに比較すると特徴的な性質を示す。重合したNBCAのポリマーは優れた引張り強度を有し、手術または創傷の閉鎖に対し非常に効果的である。

創傷や切り傷を素早く塞ぐことができ(約30-45秒)、さらにその接着剤は本質的に有用性の高い静菌性を示す。接着剤によって傷を塞いだあとの見た目の美しさは、縫合糸で処置した場合に3〜6ヶ月後に残る傷跡と比較すると、同等もしくは一般的に優れている[要出典]

また、NBCAポリマーが体内で分解されることも重要な性質である。NBCAのこの特性は、ドラッグデリバリーに利用する種々のナノ粒子を作成するポリマーとして有用である、すなわち放出するまで薬効成分を維持し体内に送り届けるのである。

硬化した接着剤は、高温の加熱により熱分解され解重合を受ける、その結果、肺や眼に強い刺激性を示す気体状生成物を生じる。

医学的応用

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NBCAの医療応用として、皮膚の裂傷[4]、血管からの出血に対しての接着がある。また、NBCAは、血管造影検査で見られる異常に接着剤として適用することで、動静脈奇形の処置[5] に使用されてきた。

消化器病学において、NBCAは出血性の胃静脈瘤の治療に使用され、肝硬変静脈の血栓症の静脈の拡張にも使用される[6]。胃静脈瘤は内視鏡によって検査される、内視鏡は柔軟な光ファイバーカメラであり、胃に挿入する。NBCAは、内視鏡を通じて静脈に挿入されたカテーテル針で注入される。他の部位の静脈瘤としては、食道静脈瘤[7]十二指腸静脈瘤[8]大腸静脈瘤[9]、がある。 また、胃静脈瘤は、NBCAの反復注射治療で完全に消失させることができる[10]

関連項目

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脚注

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  1. ^ n-Butyl-2-cyanoacrylate”. Chemical Sampling Information. Washington, DC, USA: Occupational Safety & Health Administration (17 January 2007). 25 June 2011閲覧。
  2. ^ Material Safety Data Sheet for Butyl Octyl Blend”. GluStitch Inc. (19 October 2009). 26 March 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。25 June 2011閲覧。
  3. ^ Archived copy”. 2008年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年12月17日閲覧。
  4. ^ Farion, Ken J, ed (2002). “Tissue adhesives for traumatic lacerations in children and adults”. Cochrane Database Syst Rev (3): CD003326. doi:10.1002/14651858.CD003326. PMID 12137689. 
  5. ^ “Management of arteriovenous malformations: a multidisciplinary approach”. J. Vasc. Surg. 39 (3): 590–600. (March 2004). doi:10.1016/j.jvs.2003.10.048. PMID 14981454. 
  6. ^ “Review article: the management of acute variceal bleeding”. Aliment. Pharmacol. Ther. 18 (3): 253–62. (August 2003). doi:10.1046/j.1365-2036.2003.01664.x. PMID 12895210. http://www3.interscience.wiley.com/resolve/openurl?genre=article&sid=nlm:pubmed&issn=0269-2813&date=2003&volume=18&issue=3&spage=253. 
  7. ^ “Evaluation of undiluted N-butyl-2-cyanoacrylate in the endoscopic treatment of upper gastrointestinal tract varices”. Endoscopy 28 (2): 239–43. (February 1996). doi:10.1055/s-2007-1005435. PMID 8739740. 
  8. ^ “Endoscopic injection sclerotherapy with n-butyl-2-cyanoacrylate for ruptured duodenal varices”. J. Gastroenterol. 33 (4): 550–5. (August 1998). doi:10.1007/s005350050131. PMID 9719241. http://link.springer.de/link/service/journals/00535/bibs/8033004/80330550.htm. [リンク切れ]
  9. ^ “An endoscopic injection with N-butyl-2-cyanoacrylate used for colonic variceal bleeding: a case report and review of the literature”. Am. J. Gastroenterol. 95 (2): 540–2. (February 2000). doi:10.1111/j.1572-0241.2000.01782.x. PMID 10685765. 
  10. ^ “A prospective, randomized trial of butyl cyanoacrylate injection versus band ligation in the management of bleeding gastric varices”. Hepatology 33 (5): 1060–4. (May 2001). doi:10.1053/jhep.2001.24116. PMID 11343232.