フランソワ・ユーベル
フランソワ・ユーベル(François Huber, 1750年7月2日 - 1831年12月22日)は、スイスの博物学者。彼は盲目であったが、助手バーネンスらの助けを借りてミツバチに関する詳細な研究を行った。この成果は後に英訳され、ミツバチの生態記録としていまだに価値を保っている。
略歴
[編集]フランソワ・ユーベルは16世紀のランドルフ・ユーベル(Rodolfe HUBER, 1523-1573)[1]から数えて8代目の子孫であり、彼の一族には博物学者が多い。大叔母のマリー・ユーベル (Marie Huber) には神学上の膨大な著作があり、イギリスの日刊紙スペクティター (The Spectator (1711)) の翻訳・抄録も行っている(Amsterdam, 3 vols., 1753)。フランソワの父ジャン・ユーベル (Jean Huber) (1721-1786)は、フランスのフェルニー・ヴォルテール (Ferney-Voltaire) で長く軍人をする傍ら、鳥の研究を行っており、その成果をObservations sur le vol des oiseaux (「飛ぶ鳥の観察」、Geneva, 1784)としてまとめている。
フランソワ・ユーベルは1750年、スイスのジュネーヴに生まれた。彼は15歳で病気となり、だんだんと目が見えなくなっていった。1776年4月28日(25歳)にマリー・リュラン(Marie Aimée Lullin, 1751-1822)と結婚、子供にピエール(Pierre, 1777-?)、アン(Anne Marie)、ジャン(Jean)がいる[2]。妻マリーや助手のフランソワ・バーネンス(François Burnens)の助けを借り、ライフワークであるミツバチの研究を始めとする生物学の研究を行う。1831年12月22日(81歳)、スイスのローザンヌで死去。
スイスの植物学者、オーギュスタン・ピラミュ・ドゥ・カンドール(Augustin Pyramus de Candolle, 1778-1841)は彼に献名して、ブラジル原産の植物の1つをHuberia burmaと名付けている。
業績
[編集]ユーベルは盲目のため、助手のバーネンスに観察させ、その報告を解釈し、それを元に次の試験の計画を立てる、という独自の研究方法をとった。
ミツバチの研究では、釣鐘状のガラス容器の中でミツバチに巣を作らせ、観察したという[3]。1792年、その結果をジュネーブでNouvelles Observations sur les Abeilles(「ミツバチに関する新たな研究結果」)として出版する。この本は1806年にNew Observations on the Natural History Of Beesの題名で英訳され、1821年には第3版が出版され[4]、ミツバチの生体の観察記録としていまだに価値を保っている[3]。
ユーベルの報告によると、ミツバチはカーテン状に広がった群れを作り、それぞれが腹部の蝋腺からミツロウを分泌する。それを複数本のリボン状につなぎ、さらにリボンをつないで厚い壁とし、その壁を削って六角形の穴を穿つ。削り取った材料は再び巣の材料として活用する、というものである。ユーベルはさらに、群れの巣別れについても報告を行っている[3]。
ミツバチ以外の研究としては、スイスの牧師ジャン・セネビエ(Jean Senebier, 1742-1809)を手伝い、セネビエの著書Mém. sur l'influence de l'air, etc., dans la germination(「発芽に空気等が与える影響」、Geneva, 1800)の作成に協力している。その他、"Mém. sur l'origine de la cire"(ワックスの発生源に関する研究、Bibliothéque britannique, tome xxv.に収録)、"Lettre a M. Pictet sur certains dangers que courent les abeilles"(「ピクテ氏へのハチの危険性に関するレター」、Bib. brit. xxvii)、"Nouvelles Observ. rel. au sphinx Atropos"(「スズメガの一種sphinx atroposに関する新しい観察結果」、Bib. brit. xxvii)という論文を残している。
注釈
[編集]- ^ Leghorn Merchant Networks Rodolfe HUBER
- ^ Leghorn Merchant Networks François HUBER
- ^ a b c [本田:2001]
- ^ Natural history and bees François Huber
出典
[編集]- この記事にはアメリカ合衆国内で著作権が消滅した次の百科事典本文を含む: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Huber, François". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 13 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 845.
- 本田睨 『蜂の群れに人間を見た男―坂上昭一の世界』、p.126、2001年、日本放送出版協会、ISBN 978-4140806562