コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

フッケンヒバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フッケンヒバ
1. 樹冠(中国広東省
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 裸子植物 gymnosperms
: マツ綱 Pinopsida
: ヒノキ目 Cupressales[注 1]
: ヒノキ科 Cupressaceae
: ヒノキ属 Chamaecyparis
: フッケンヒバ C. hodginsii
学名
Chamaecyparis hodginsii (Dunn) Rushforth (2007)[5][6]
シノニム
和名
フッケンヒバ[7][8]、ラオスヒノキ[9][10][11]
英名
Fujian cypress[1]

フッケンヒバ[7][8](福建柏[7][12]学名: Chamaecyparis hodginsii)は、裸子植物マツ綱ヒノキ科ヒノキ属に分類される常緑高木になる針葉樹の1種である。林業分野ではラオスヒノキともよばれる[9][10][11]。ふつう独自の属(フッケンヒバ属 Fokienia)に分類され Fokienia hodginsii の学名が充てられていたが、分子系統学的研究からヒノキ属に含まれることが示唆され、ヒノキ属に分類することが提唱されている。には芳香があり、は鱗片状、平面的に分枝する小枝を覆う。"花期"は春、球果は翌年の秋に熟す。中国南部からラオスベトナムに分布する。材は建築などに、精油化粧品医薬品に利用される。

特徴

[編集]

常緑高木になる針葉樹であり、幹は直立し、大きなものは高さ25–35メートル (m)、幹の胸高直径 2 m になる[5](図1, 2a, b)。樹冠は円錐形[5](図1, 2a, b)。樹皮は灰褐色から紫褐色、平滑または不規則に縦に割れ、芳香がある[5][13](下図2c)。小枝は平面的に分枝し、十字対生する葉で覆われる[5][14](下記参照)。

2a. 樹形
2b. 樹形
2c. 樹皮

は鱗片状、十字対生して扁平に枝を覆うが、成木では節が短縮して葉がほとんど4輪生する[5][14]。成木では、葉はアスナロに似た鱗片状で長さ2–7ミリメートル (mm)、鈍頭、側葉は卵形で背軸側に白色の気孔帯があり、背腹の葉は倒披針形で先端は三角形[5][13][14][7](下図3)。幼木の葉は大きく、長さ約 8 mm、トゲ状、向軸面が青緑色[5][13]

3a. 枝葉
3b. 枝葉

雌雄同株、"花期"は3–4月[14][13]雄球花[注 2]は黄緑色、楕円形、長さ 4-5 mm、5–6対の小胞子葉からなり、各小胞子葉には3個の花粉嚢が付随する[14][13]雌球花[注 3]も小枝先端に単生し、十字対生する5–8対の果鱗からなり、各果鱗には2個の胚珠が付随する[5][14]。球果は2年目の10–11月に熟し、木質、亜球形、1.5-2.5 × 1.2-2.2 cm、果鱗先端は盾状で中央に突起がある[5][14][13][7]種子は長さ 4–5 mm、3–4隆条があり、両面に樹脂塊が存在、翼は不等であり、大きな翼は約 5 mm、小さな翼は 1.5 mm 以下[5][13]

精油成分として、ネロリドールムウロロール、α-カジノールを、はα-ピネンリモネン球果は、α-ピネン、ミルセンを多く含む[18]

分布

[編集]

中国南部(福建省広東省広西チワン族自治区貴州省湖南省江西省四川省雲南省浙江省)からラオスベトナムの亜熱帯域に分布する[5][6][13]。タイプ産地は雲南省のベトナム国境近く[5]。降水量が多い標高 100–1,800メートルの山地に生育し、沢沿いや林縁などに見られる[5][13]。耐陰性は低い[5]Dacrydium elatumマキ科)や Pinus dalatensisマツ科)、モクレン科クスノキ科ブナ科の樹木と混生する[5]

人間との関わり

[編集]

は軽く上質、木目は通直、芳香がある[5]建築家具工芸品などに利用され、古くはに使われた[5]。また、高火力の木炭原料とされる[5]の材から抽出される精油は、化粧品医薬品に利用される[5]

分類

[編集]

21世紀初頭までフッケンヒバは独自の属(フッケンヒバ属 Fokienia)に分類され、2023年現在でも Fokienia hodginsii の学名が充てられていることがある[6][8]。しかし、分子系統学的研究から、本種はヒノキ属Chamaecyparis)の中に含まれることが示唆されており、ヒノキ属に分類すること(Chamaecyparis hodginsii)が提唱されている[5]

学名種小名である hodginsii は、発見者である A. E. W. Hodgins 船長の名に由来する[5]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ ヒノキ科はふつうイチイ科コウヤマキ科とともにヒノキ目に分類されるが[2][3]マツ科など他の針葉樹(およびグネツム類)を加えた広義のマツ目に分類することもある[4]
  2. ^ "雄花"ともよばれるが、厳密にはではなく小胞子嚢穂(雄性胞子嚢穂)とされる[15]。雄性球花や雄性球果ともよばれる[16][17]
  3. ^ "雌花"ともよばれるが、厳密には花ではなく大胞子嚢穂(雌性胞子嚢穂)とされる[15][16]。送受粉段階の胞子嚢穂は球花とよばれ、成熟し種子をつけた雌球花は球果とよばれる[16]

出典

[編集]
  1. ^ a b Thomas, P. & Yang, Y. (2013年). “Chamaecyparis hodginsii”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013. IUCN. 2024年2月11日閲覧。
  2. ^ 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編), ed (2015). “種子植物の系統関係図と全5巻の構成”. 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 18. ISBN 978-4582535310 
  3. ^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表. 北隆館. p. 44. ISBN 978-4832609754 
  4. ^ 大場秀章 (2009). 植物分類表. アボック社. p. 18. ISBN 978-4900358614 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Chamaecyparis hodginsii”. The Gymnosperm Database. 2024年2月11日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i Fokienia hodginsii”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2024年2月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e 大澤毅守 (1997). “クロベ”. 週刊朝日百科 植物の世界 11. pp. 186–189. ISBN 9784023800106 
  8. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fokienia hodginsii (Dunn) A.Henry et H.H.Thomas”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月11日閲覧。
  9. ^ a b 円谷浩之 (1996). “いわゆるラオスヒノキについて”. 熱帯林業 37: 2–10. doi:10.32205/ttf.37.0_2. 
  10. ^ a b 圓谷浩之 (2011). “ラオス産木炭, 特にマイテュー白炭について”. 海外の森林と林業 80: 34–40. doi:10.32205/jjjiff.80.0_34. 
  11. ^ a b 野口昌巳 (1993). “いわゆるラオス檜の性質”. 木材工業 48 (4): 179-183. CRID 1520572358330313984. 
  12. ^ 堀田満 (1989). “フッケンヒバ属”. In 堀田満ほか. 世界有用植物事典. 平凡社. p. 463. ISBN 9784582115055 
  13. ^ a b c d e f g h i Flora of China Editorial Committee (2010年). “Fokienia hodginsii”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2024年2月11日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g Flora of China Editorial Committee (2010年). “Fokienia”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2024年2月11日閲覧。
  15. ^ a b 長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化. 裳華房. p. 205. ISBN 978-4785358716 
  16. ^ a b c 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 260. ISBN 978-4896944792 
  17. ^ アーネスト M. ギフォードエイドリアンス S. フォスター『維管束植物の形態と進化 原著第3版』長谷部光泰鈴木武植田邦彦監訳、文一総合出版、2002年4月10日、332–484頁。ISBN 4-8299-2160-9 
  18. ^ Nguyen, A. D., Nguyen, T. T. N. & Tran, H. T. (2018). “Chemical composition of essential oils of Fokienia hodginsii (Dunn)”. European Journal of Technical and Natural Sciences 4: 64–68. 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]