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フタトゲチマダニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フタトゲチマダニ
血を吸った雌のフタトゲチマダニ

分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: ダニ目 Acari
亜目 : マダニ亜目 Ixodoidea
: マダニ科 Ixodidae
: チマダニ属 Haemaphysalis
: フタトゲチマダニ H. longicornis
学名
Haemophysalis longicornis
Neumann, 1901

フタトゲチマダニは、節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目マダニ亜目マダニ科チマダニ属に属するダニの一種である。重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSウイルス)の宿主の一つでもある[1]

分布

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ロシアから東南アジア,オーストラリア,ニュージーランドにかけて広く分布。日本でも北海道から沖縄県八重山地方にかけて広く分布している。

形態

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成虫で体長は約3mmだが、吸血すると約10mmになる[2]

生態

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主な活動期は、5-10月。イネ科植物の茎や葉に生息し、草上で宿主が通るのを待つ。ウシ、ニホンジカ[3]イヌ、ヒト、鳥類[4]などに寄生し約1週間程度吸血する。吸血できない場合は、適切な湿度があれば飢餓状態で1年から2年程度生きているが[5]、その後も宿主に遭遇できない場合は餓死する。冬の間は幼虫や成虫の状態で、落ち葉の下などで越冬し、5月頃から活動を始める[2]。鳥取県東部における未寄生個体の調査では、幼虫は夏~秋、若虫は春~夏、成虫は夏~秋に多く採集された[6]

繁殖

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フタトゲチマダニはマダニ科の中で唯一恒常的に単為生殖を行う[7][8]。両性生殖を行う系統と単為生殖を行う2つの系統が存在し、オセアニアから東南アジアおよび日本に分布する系統は単為生殖系統(三倍体 n=30 - 35)で、両性生殖系統(二倍体 メス=22、オス=21)は西日本に分布する[8]。交尾を行っても未受精卵と受精卵が産卵され、未受精卵からはメスが発生し、受精卵からはオスが発生する。つまり雌雄決定はアリハチと同じ性決定様式である。また、日本における単為生殖系統の雌雄比率は、メス 500:オス 1とされオスも生殖能力を有しない[8]

メスは吸血後1ヶ月以内に産卵を行う。1頭のメスが、2000-3000個の約0.3mmになる卵を産む。産卵後、約3日でメスは死ぬ。ふ化した幼虫は、吸血と宿主からの脱落、脱皮を繰り返し、若虫の時期を経て成虫に成長する[2]

媒介する主な伝染病

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また、その他にも犬や牛に感染する原虫病の一部(ピロプラズマ症)を媒介する。

脚注

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出典

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  1. ^ <速報>国内で初めて診断された重症熱性血小板減少症候群患者 国立感染症研究所 掲載日2013/1/30
  2. ^ a b c 山梨県衛生環境研究所(2013).
  3. ^ 山内健生, 田原研司, 金森弘樹, 川端寛樹, 新井智, 片山丘, 藤田博己, 矢野泰弘, 高田伸弘, 板垣朝夫 (2009). “島根半島におけるニホンジカの分布密度に関連したマダニ相 [Tick fauna associated with sika deer density in the Shimane Peninsula, Honshu, Japan]” (英語). 衛生動物 (日本衛生動物学会) 60 (4): 297-304. doi:10.7601/mez.60.297. NAID 110007503660. https://doi.org/10.7601/mez.60.297. 
  4. ^ 山内健生「日本産鳥類とマダニ類との宿主-寄生関係に関する文献的検索」『ホシザキグリーン財団研究報告』第5巻、ホシザキグリーン財団、2001年12月、271-308頁、ISSN 1343-0807NAID 120001493192 
  5. ^ 角田隆、マダニ類-しつこい吸血鬼- 森林科学 2006年 47巻 p.60-63, doi:10.11519/jjsk.47.0_60
  6. ^ 柴田祥明・山内健生・唐沢重考 (2020.3.27) 鳥取県東部におけるマダニ科の季節消長. 鳥取県立博物館研究報告, 57: 1-18. https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1204522/57-01_shibata.pdf
  7. ^ 松尾智英, 大倉信彦, 角田浩之, 矢野泰弘「フタトゲチマダニの繁殖学」『日本ダニ学会誌』第22巻第1号、日本ダニ学会、2013年5月、1-23頁、doi:10.2300/acari.22.1ISSN 09181067NAID 10031158574 
  8. ^ a b c 佐伯英治「マダニの生物学」(PDF)『動薬研究』第57巻、第5号、バイエル薬品株式会社、13-21頁、1988年http://www.bayer-pet.jp/vet/research_pdf/nomi_madani_57c.pdf2013年4月18日閲覧 [リンク切れ]
  9. ^ Kenji TABARA; Hiroki KAWABATA; Satoru ARAI; Asao ITAGAKI; Takeo YAMAUCHI; Takashi KATAYAMA; Hiromi FUJITA; Nobuhiro TAKADA (2011). “High Incidence of Rickettsiosis Correlated to Prevalence ofRickettsia japonica amongHaemaphysalis longicornis Tick”. Journal of Veterinary Medical Science (日本獣医学会) 73 (4): 507-510. doi:10.1292/jvms.10-0369. https://doi.org/10.1292/jvms.10-0369. 

参考文献

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