フォン・シュタウト=クラウゼンの定理
フォン・シュタウト=クラウゼンの定理(フォン・シュタウト-クラウゼンのていり[1]、Von Staudt–Clausen theorem)は、数論におけるベルヌーイ数の小数部分に関する定理である。 カール フォン・シュタウト (1840)と、 トーマス クラウゼン (1840)が独立して発見した。
nを正整数、pを2nがp − 1で割り切れるような素数として、ベルヌーイ数B2nにすべての1/pを加えた数は整数になる[2][3]。つまり、
この定理により即座に、0でないベルヌーイ数B2nの(規約な)分母が、2nがp − 1で割り切れるような素数pの総積であることが分かる。更に、無平方で、6で割り切れる事も導ける。
ベルヌーイ数B2nについて、n番目の分母の成す数列は次の通り。
- 6, 30, 42, 30, 66, 2730, 6, 510, 798, 330, 138, 2730, 6, 870, 14322, 510, 6, 1919190, 6, 13530, ... オンライン整数列大辞典の数列 A002445.
整数列 は次のようになる。
- 1, 1, 1, 1, 1, 1, 2, -6, 56, -528, 6193, -86579, 1425518, -27298230, ... オンライン整数列大辞典の数列 A000146.
証明
[編集]4つの補題を用いる。
pを素数とする。
1. 2nがp – 1で割り切れるならば、
2. 2nがp – 1で割り切れないならば、
補題1,2の証明にはフェルマーの小定理を使う。m = 1, 2, ..., p – 1について、
である。
2nがp – 1で割り切れる(2nがp – 1の倍数)ならば、m = 1, 2, ..., p – 1について、
であるから、
より補題1が証明された。ただし、二番目の式では二項定理を用いている。
2nがp – 1で割り切れないならば、フェルマーの小定理より、
℘ = ⌊ 2n / (p – 1) ⌋とする。床関数の性質℘ < 2n / (p – 1) < ℘ + 1より0 < 2n – ℘(p – 1) < p – 1。
m = 1, 2, ..., p – 1、0 < 2n – ℘(p – 1) < p – 1について、フェルマーの小定理より、
したがって、
j > nのときS(n,j) = 0であるから、補題2が証明された。
3. a,b > 2のとき、(ab – 1)!はabで割り切れる。
4. 第二種スターリング数は整数である。
フォン・シュタウト=クラウゼンの定理の証明には、ベルヌーイ数の一般項の公式を用いる。
これは第二種スターリング数S(n,j)を用いて次のように書ける。
j + 1を4より大きい合成数とすると、補題3よりj!は j + 1で割り切れる。
j = 3ならば、
Inを整数とする。j + 1が素数ならば補題1,2を使って、j + 1が合成数ならば補題3,4を使って、次の式の成立が分かる[4][5]。
これは示されるべきことであった。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ 『新訂版 数学用語 英和辞典: 和英索引付き』近代科学社、2020年12月2日。ISBN 978-4-7649-0624-2。
- ^ ハーディ, G. H.、ライト, E. M.『数論入門』PHP研究所、2001年7月1日。ISBN 978-4-431-70848-3。
- ^ 藤原松三郎『代数学 第1巻』内田老鶴圃、1929年、126頁。doi:10.11501/1133288。
- ^ H. Rademacher, Analytic Number Theory, Springer-Verlag, New York, 1973.
- ^ T. M. Apostol, Introduction to Analytic Number Theory, Springer-Verlag, 1976.
- Clausen, Thomas (1840), “Theorem”, Astronomische Nachrichten 17 (22): 351–352, doi:10.1002/asna.18400172204
- Rado, R. (1934), “A New Proof of a Theorem of V. Staudt”, J. London Math. Soc. 9 (2): 85–88, doi:10.1112/jlms/s1-9.2.85
- von StaudtCh.「Beweis eines Lehrsatzes, die Bernoullischen Zahlen betreffend」『Journal für die Reine und Angewandte Mathematik』第21巻、372–374頁、1840年。ISSN 0075-4102 。
外部リンク
[編集]- Weisstein, Eric W. "von Staudt-Clausen Theorem". mathworld.wolfram.com (英語).
- 坂田実加. “多重ベルヌーイ数の2-orderと3-orderについて”. 近畿大学大学院総合理工学研究科. 2024年8月15日閲覧。