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ファシスト暦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
MCMXXVIII A.VI(1928年・ファシスト暦6年)と刻印されたイタリアの硬貨
トレント自治県カヴァレーゼにある、MCMXXXIX XVII E F(1939年・ファシスト暦17年)と刻まれた日時計

ファシスト暦(ファシストれき、: Era Fascista)は、ファシスト党政権時代のイタリア王国において使用されていた紀年法

概要

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ローマ進軍、より正確には1922年10月29日のベニート・ムッソリーニ首相就任が、ファシスト暦の1日目となる。この暦は1926年に導入され、1927年(ファシスト暦5年、Anno V)に公式のものとなった[1]。略称は "A.F." で、これは "Anno Fascista" の頭文字を取ったものである[2][3]フランス革命暦の影響を受けて作られた[4]

ファシスト暦の日付表記は、グレゴリオ暦の日付とそれに対応するローマ数字表記のファシスト暦という構成で書かれることが多く、ファシスト党によるプロパガンダの一環として、古代ローマの図像が流用された。

ファシスト暦は、"Anno XIX" や "A. XIX"(ファシスト暦19年)、または "E.F." と表記される場合がある。[5]

この暦はイタリアの公共生活において、「ブルジョア」のグレゴリオ暦から置き換えられることを意図しており、1939年には、新聞元日について書くことを禁止されていた[6]

A. VII E.F.(ファシスト暦7年、Anno VII Era Fascista)と刻まれたマルケッルス劇場の飾り板と束桿のモニュメント

ローマ進軍から10周年に当るファシスト暦10年(Anno X)は、古代ローマの祭り "Decennalia" を想起させる "Decennale" という名で呼ばれていた。この年のファシスト党によるプロパガンダの目玉は、ファシスト革命の展示であった[7]

当時の日本の文書にもファシスト暦は見られ、例として1940年昭和15年、ファシスト暦18年)9月27日に調印された「日本國、獨逸國及伊太利國間三國條約」(日独伊三国間条約)の末尾には、「昭和十五年九月二十七日即チ千九百四十年、『ファシスト』暦十八年九月二十七日『ベルリン』ニ於テ本書三通ヲ作成ス」と記されている[8]

1943年(ファシスト暦21年、Anno XXI)のファシスト党政権の崩壊により、ファシスト暦はイタリアの大部分で廃止されたが、1945年(ファシスト暦23年、Anno XXIII)4月のムッソリーニの死まで、イタリア社会共和国では使用され続けた[9]

現在でもイタリアの多くの記念碑には、ファシスト暦の日付が残されている。

西暦との対照表

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ファシスト暦 元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年
西暦 1923年 1924年 1925年 1926年 1927年 1928年 1929年 1930年 1931年 1932年
ファシスト暦 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年
西暦 1933年 1934年 1935年 1936年 1937年 1938年 1939年 1940年 1941年 1942年
ファシスト暦 21年 22年 23年
西暦 1943年 1944年 1945年

脚注

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  1. ^ Edgardo Baldi, Aldo Cerchiari, Enciclopedia moderna italiana, p. 1306
  2. ^ Adriano Cappelli, Cronologia, cronografia e calendario perpetuo, Hoepli, 1998, p. 131
  3. ^ Matthew Kneale, Rome: A History in Seven Sackings, Simon and Schuster, 2018, p. 296
  4. ^ Philip V. Cannistraro, "Mussolini's cultural revolution: fascist or nationalist?" in Roger Griffin, Matthew Feldman, eds., Fascism: Fascism and Culture in Fascism: Critical Concept in Political Science 3:194, ISBN 041529018X
  5. ^ Catherine E. Paul, Fascist Directive: Ezra Pound and Italian Cultural Nationalism, 2016, ISBN 9781942954057, p. 114
  6. ^ Simonetta Falasca-Zamponi, Fascist Spectacle: The Aesthetics of Power in Mussolini's Italy, 2000, ISBN 0520226771, p. 105
  7. ^ B. Painter, Mussolini's Rome: Rebuilding the Eternal City, ISBN 1403976910, 2016, p. 26
  8. ^ 官報. 1940年10月21日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  9. ^ Paolo Monelli, Mussolini: An Intimate Life, 1953, p. 288