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ファウスティーナ・ボルドーニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ファウスティーナの肖像(ロザルバ・カッリエーラ画、1730年代)

ファウスティーナ・ボルドーニ(Faustina Bordoni、1697年3月30日 - 1781年11月4日[1])は、イタリアメゾソプラノ歌手。

ヴェネツィアを中心に活動していたが、1720年代後半のロンドンオペラプリマ・ドンナとして、ライヴァルのフランチェスカ・クッツォーニと争った。その後は作曲家のヨハン・アドルフ・ハッセと結婚し、ハッセ作品の主要な歌手として活躍した。

生涯

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ファウスティーナとセネジーノを描いたカリカチュア。ヴェネツィア、1729年

ファウスティーナはヴェネツィアに生まれ、M.ガスパリーニに学んだ。早くから「プファルツ選帝侯の宮廷ヴィルトゥオーザ」の称号を得ていた[2]。1716年にヴェネツィアのサン・ジョヴァンニ・グリゾストモ劇場においてカルロ・フランチェスコ・ポラローロ (Carlo Francesco Pollaroloの『アリオダンテ』でデビューした[1][2]。その後1725年までヴェネツィアを本拠として歌った[1]。ほかにイタリア各地、および1724年以降はミュンヘンウィーンでも歌って成功した[2]

ロンドンでオペラの興業を行っていた王立音楽アカデミーではフランチェスカ・クッツォーニがプリマ・ドンナとして歌っていたが、2人めのプリマ・ドンナとしてファウスティーナと契約を結んだ[3]。ファウスティーナは1726年5月にヘンデルの『アレッサンドロ』でデビューした。ファウスティーナはクッツォーニとは対照的だった。風采があがらないが美声に恵まれ、悲劇のヒロイン向きだったクッツォーニに対して、ファウスティーナは容貌が優れ、声はクッツォーニよりも低く、力強い役割を得意とした[4]。この2人はすでに1718年にヴェネツィアで共演しているが、その頃から犬猿の仲で、台本作家や作曲家はこの2人を平等に扱うために苦労を重ねる必要があった[5]。聴衆もクッツォーニ派とファウスティーナ派に分かれて争った[6]。1727年6月のボノンチーニの『アスティアナッテ』の上演中にファン同士が争い、劇場は混乱に陥った[6]

カストラートセネジーノ、クッツォーニ、ファウスティーナという3人のスター歌手に対する報酬、およびクッツォーニとファウスティーナの反目はアカデミーが破綻に至る大きな原因であった[3]。アカデミーは1728年6月までで公演の継続を断念し[7]、歌手たちはロンドンを去った。

ヴェネツィアに戻った後、ファウスティーナは1730年にハッセと結婚した[2]。ファウスティーナはハッセのオペラ『ダリーザ』(Dalisa)で歌った[8]。この後、ファウスティーナはしばしば夫の主要な作品で歌うことになった[2]

翌1731年に夫婦はドレスデンへ行き、夫のハッセはザクセン選帝侯宮廷楽長に就任した[8]。ファウスティーナもドレスデンの宮廷歌手として仕えた[2]。しかし夫妻はドレスデンに定住していたわけではなく、しばしばイタリア各地を巡ってオペラを公演して名声を得た[8]。1751年に舞台から引退した後も宮廷歌手の称号は維持し、年金を支給された[2]

1763年にザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト2世が没すると、夫妻はドレスデンを去ってウィーンに移った[2][8]

1775年に生まれ故郷のヴェネツィアに戻り、1781年に没した[2]

脚注

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  1. ^ a b c Dean, Winton, “Bordoni [Hasse; Bordon Hasse], Faustina”, Grove Music Online, doi:10.1093/gmo/9781561592630.article.O009903 
  2. ^ a b c d e f g h i Francesco Degrada (1971), “BORDONI, Faustina”, Dizionario Biografico degli Italiani, 12, https://www.treccani.it/enciclopedia/faustina-bordoni_(Dizionario-Biografico) 
  3. ^ a b 三澤 (2007), p. 65.
  4. ^ 三澤 (2007), pp. 65–66.
  5. ^ 三澤 (2007), p. 66.
  6. ^ a b ホグウッド (1991), p. 154.
  7. ^ 三澤 (2007), pp. 73–74.
  8. ^ a b c d Heussner, Horst: Hasse, Johann Adolf. In: Neue Deutsche Biographie (NDB). Band 8, Duncker & Humblot, Berlin 1969, ISBN 3-428-00189-3, S. 41–43 (電子テキスト版).

参考文献

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  • クリストファー・ホグウッド 著、三澤寿喜 訳『ヘンデル』東京書籍、1991年。ISBN 4487760798 
  • 三澤寿喜『ヘンデル』音楽之友社〈作曲家 人と作品〉、2007年。ISBN 9784276221710