ビーム橋
ビーム橋(ビームきょう、英: Beam bridge)は、両端で支持される短い支間(スパン)を持つ、最も単純な構造形式の橋である。
ビーム(beam)とは
概要
[編集]現代では「
最も古く、また単純で簡素なビーム橋は、小川をまたいで丸太(丸木橋参照)や木の厚板、あるいは板状の石(スラブ〈クラッパー橋参照〉)などを架け渡した橋であろう。一方で、近代的なインフラストラクチャー用に設計されたビーム橋の場合は、通常、鋼またはコンクリート、またはその両方の組み合わせによって建造されている。コンクリート材には、鉄筋で補強した鉄筋コンクリートや、PC鋼材で強化したプレストレスト・コンクリートが用いられる。
建設の種類には、それらの間にデッキを支持している主ビームのどちらかの側で、それらの上部にデッキと並んで多くのビームが渡っているものがある。主ビーム(主梁)には、I形鋼(あるいはH形鋼)、トラスまたはボックスガーダー(箱桁)が使用されることがある。これらは、ハーフスルー橋またはスルー橋を建造するために、上部に渡された補強材となっている。
アーチ橋より、モーメントの推力が伝達されないために、例えば上部構造内で水平力をこらえるレンティキュラートラスおよびボウストリングアーチのような、主に革新的な設計には適応させることができない。
ビーム橋は必ずしも両端で単純支持された1つの支間(スパン)のみを備えるとは限らない。一部の高架橋は構造的には単純桁橋[5][6]を連続させる方式で作られており[7]、たとえば1989年1月に開通した中華人民共和国の飛雲江大橋(Feiyunjiang Bridge)[注 2]は橋長1.7キロメートルに達し、橋脚で支持された単純支持支間をじつに37個有している[8]。これは、一本の桁を3基以上の橋脚・橋台で支える連続桁橋(連続トラス橋)[10]とはまったく異なる構造である。
トラス橋とは異なり、ビーム橋では構造的に橋桁の両端以外の支点が組み込まれておらず、比較的短い距離を繋ぐのに使用される。橋脚(橋台)が唯一の支持となるため、橋脚間が大きく離れる、すなわち支間(スパン)が長くなるほどビーム橋は強度不足となる[11]。その結果、ビーム橋においては250フィート(約76メートル)以上の支間はめったに存在しない。ただし、これはビーム橋が長距離を横断するのに使用できないことを意味するものではなく、長距離を繋ぐ際には、連続するビーム橋として、複数のビーム橋を連結して連続支間を構成すること[7]を意味しているだけである。
脚注
[編集]註釈
[編集]出典
[編集]- ^ 島田静雄 (2010年4月22日). “桁橋のお話し|島田技術顧問のサイト|技術情報” (PDF). 中日本建設コンサルタント株式会社. p. 1. 2016年4月13日閲覧。 “橋を横から見て一本の梁に見える薄板状の形式を桁橋と言います。橋梁工学では、梁橋とは使いませんが、英語〔で〕は、梁橋に当たるbeam bridgeと桁橋に当たるgirder bridgeと〔を〕使い分けることがあります。” ※pdf配布元は中日本建設コンサルタントウェブサイトの「島田技術顧問のサイト」ページ。
- ^ 島田静雄 (2017年6月). “橋梁モデルIFC-Bridge検討小委員会 成果報告書”. 社会基盤情報標準化委員会ウェブサイト. 社会基盤情報標準化委員会. p. 83-96. 2023年6月11日閲覧。 “5.2.2 橋梁に関する用語の抽出結果” ※報告書個別pdfあり。
- ^ 島田静雄 (2017年5月). “桁橋のお話|島田技術顧問のサイト” (pdf). 中日本建設コンサルタント株式会社. p. 5. 2023年6月11日閲覧。 “あまり加工しない細長い素材を使う橋がbeam bridgeです。[...] 製鉄所で形鋼として出荷されるI形鋼、H形鋼を、あまり加工をしないで架設する、支間の短い桁橋がbeam bridgeです。” ※pdf配布元は「PDF版 橋のお話シリーズ|島田技術顧問のサイト」ページ。初出は雑誌『橋梁&都市PROJECT』連載。
- ^ “「橋の基礎知識」長岡ドボク図鑑 for Kids”. 新潟県ホームページ. 新潟県. 2023年6月11日閲覧。 “橋台(きょうだい):橋の両はじにあって、橋を支える部分/ 橋脚(きょうきゃく):上部構造を支える橋のあしの役割をする部分”
- ^ “橋の用語集|橋梁の基礎知識”. 日本車両. 日本車輌製造株式会社. 2023年6月11日閲覧。 “単純桁(たんじゅんげた) 両端を単純支持した桁のこと/ 連続桁(れんぞくげた) 両端とその中間の2箇所以上を単純支持した桁のこと”
- ^ “橋梁の基礎知識 その1 : 橋梁の構造と種類について|橋梁の基礎知識”. 株式会社長野技研. 2023年6月11日閲覧。 “複数径間にそれぞれ独立して桁を架けるのが単純桁橋。”
- ^ a b 中部地方整備局道路部 (2014年3月). “中部地方整備局 道路設計要領:第5章 橋梁”. 国土交通省中部地方整備局ウェブサイト. 国土交通省中部地方整備局. 2023年6月11日閲覧。 “昭和時代に施工された橋梁の多くは、静定構造で複雑な設計計算が必要なく、経済性でも有利となる場合が多いことから、連続高架橋などにおいても、単純桁を並べる構造を多く採用していたが、平成7年〔1995年〕に発生した兵庫県南部地震において、地盤の水平移動などにより、落橋防止対策が講じられていたにもかかわらず、単純桁の落橋被害が数多く発生した。” ※「第5章 橋梁」(pdf)のp. 5-1「I. 基本コンセプト」参照。
- ^ a b 老百晓. “瑞安市飞云江大桥” (中国語). 老百晓集桥. 2023年6月11日閲覧。 “主孔跨径62米,全桥37孔。主航道5孔,每孔跨径62米,其余18孔跨径各51米,14孔跨径35米。”
- ^ 飞云江#桥梁(中国語版)、“飞云江大桥 [...] 当时全国最大跨度的预应力混凝土简支梁桥”。 ※「简支梁桥(簡支梁橋)」は、simply supported beam bridgeの訳語。
- ^ 島田静雄 (2017年7月). “連続橋のお話|島田技術顧問のサイト” (pdf). 中日本建設コンサルタント株式会社. 2023年6月11日閲覧。 ※記事個別pdfあり。初出は雑誌『橋梁&都市PROJECT』連載。
- ^ “用語集”. オングリットホールディングス株式会社. 2023年6月11日閲覧。 “単純桁橋:両桁端を支承によって単純支持させた、最も基本的な形式である。/ 連続桁橋:連続桁橋は、桁が2径間以上にわたって連続し、かつ支承により支持されているものである。連続桁橋は、同一支間の単純桁橋よりも曲げモーメントの最大値が小さくなり、同一桁高の単純桁橋より支間を長くすることが可能となる。”
関連項目
[編集]- 桁橋 - 英語におけるgirder bridge(ガーダー橋)とbeam bridge(ビーム橋)を両方含む橋梁の分類用語。
- カンチレバー橋(片持ち梁橋)