ビリー・ザ・キッド (コープランド)
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『ビリー・ザ・キッド』(Billy the Kid )は、アーロン・コープランドが作曲したバレエ音楽。コープランドの1作目のバレエと思われがちだが、1932年に『グローグ』(舞踏交響曲の原型)を作曲しているため、厳密には2作目に当たる。
概要
[編集]アメリカン・バレエ・キャラヴァンの主宰者リンカーン・カースティンの依頼で1938年に作曲された。まずバレエ版の初演が1938年10月、シカゴのオペラハウスで演奏され、その後ウィリアム・スタインバーグ指揮NBC交響楽団により組曲版の初演が行われた。
楽器編成
[編集]- フルート2
- ピッコロ1
- オーボエ2
- クラリネット(B♭)2
- ファゴット2
- ホルン4
- トランペット3
- トロンボーン3
- チューバ1
- ティンパニ
- パーカッション5(グロッケンシュピール、シロフォン、シンバル、スレイベル、トライアングル、ギロ、ウッドブロック、テンプルブロック、むち、バスドラム、スネアドラム、ティン・ホイッスル)
- ハープ
- ピアノ
- 弦五部
ティン・ホイッスルは、舞台で演じられる時のみ使用(「開拓者の町の踊り」の最初に出る笛)。
演奏時間
[編集]組曲版は約20分。
構成
[編集]実在した西部開拓時代のアウトロー、ビリー・ザ・キッド(1859年 - 1881年)の生涯を描いている。ただし半ば伝説化したエピソードに基づいており、歴史的事実とは異なる部分もある。
- 序奏:涯しない大平原(Introduction - The open Prairie)
- 3/4拍子の、ゆるやかで荘厳な音楽により舞台の幕が開く。19世紀後半、アメリカ西部劇時代のプレーリーである。
- 開拓者の町の踊り(Street in a Frontier Town - Mexican Dance and Finale)
- 開拓者の町の様子が描かれる。6つの曲が接続曲的に演奏される。テンポの速い5/8拍子の部分はメキシコ娘の踊りである。
- 町にやってきた12歳のビリーは、ならず者によって殺された母親の仇を討ち、アウトローとしての人生を歩み始めた。
- 夜のカルタ遊び(Prairie Night (Card game at night))
- 星空の下、ビリーと仲間たちが静かにトランプに興じている。変イ長調のノクターンである。弱音器をつけた弦楽器を背景にトランペットのソロが旋律を歌う。
- 拳銃の戦い(Gun battle)
- ビリーのかつての友人であった保安官パット・ギャレットが率いる捜査隊との激しい銃の打ち合い。
- ピアノが打楽器的に用いられ、ティンパニや低音楽器と共に銃声を表現する。
- ビリー逮捕後の祝賀会(Celebration (after Billy's caputure))
- 関係者が祝杯をあげる。嬰ハ長調のベースラインの上にハ長調の旋律が奏でられるなど、複調の手法が用いられている。
- ビリーは牢獄につながれるが、"伝説的な"脱獄に成功し逃亡する。
- ビリーの死(Billy's Death)
- 逃避行の途中、砂漠で休んでいたビリーはパット・ギャレットに発見され銃殺される。音楽は弦楽器中心のト長調の美しいコラールである。
- 再び、涯しない大平原(The Open Prairie again)
- 大平原に始まった物語は大平原に終わる。
参考文献
[編集]- 最新名曲解説全集7 管弦楽曲IV(音楽之友社)
- 組曲版スコア(ブージー・アンド・ホークス)