ヒョウモンオトメエイ
ヒョウモンオトメエイ | |||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Himantura leoparda Manjaji-Matsumoto & Last, 2008 | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Leopard whipray |
ヒョウモンオトメエイ(学名:Himantura leoparda)は、アカエイ科に属するエイの一種。太平洋西部とインド洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布している。水深70 m未満の沿岸部の砂地に生息する。体盤は菱形で幅は1.8 mに達し、吻は尖り、尾は鞭状で細長い。成魚は黄褐色の地にヒョウのような暗褐色の模様があり、円盤の正中線に沿って拡大したハート型の皮歯が並んでいる。幼魚には大きくしっかりとした黒い斑点があり、皮歯はほとんど無い。分布域の多くで主に食用として漁獲されている。
分類
[編集]歴史的に、よく似たアミメオトメエイ、ハチノスオトメエイと混同されてきた。2008年には別種として記載され、模様から「leoparda」という種小名が提唱された。模式標本は、クイーンズランド州ウェイパ北西のカーペンタリア湾で採集された体盤幅1.1 mの雌であった[2]。undulate whiprayとも呼ばれる[3]。アミメオトメエイ、ゴウシュウオトメエイ、ハチノスオトメエイなどと同じ「uarnak」種群に属する[4]。
分布と生息地
[編集]インド東部とスリランカ沖、フィリピンを含む東南アジア全域、南日本と台湾、ニューギニア、そしてコーラル湾からヨーク岬半島までのオーストラリア北部で報告されている[2][4][5]。日本では沖縄県近海から知られる。底魚であり、海岸近くの砂泥底に生息。また沿岸の砂泥底域やサンゴ礁周辺の砂底に生息。時には河口から汽水域にも侵入する。生息水深は70 m未満[3]。
形態
[編集]体盤幅1.4 m、全長4.1 mに達し、体盤は幅広の菱形で、中央がやや厚く、外側の角は狭く丸い。体盤前縁は波打っており、吻は幅広。吻の先端は明確に尖っている。幼魚は体盤の長さと幅がほぼ同じ。目は小さく、その後ろにほぼ長方形の噴水孔がある。鼻孔は長く狭く、その間には後縁が細かくフリル状になった幅広の皮褶がある。口は強い弓形で、角には浅い溝がある。口底には4つの短い乳頭があり、外側のものは小さい。乳頭は下顎にもある。歯は小さく、円錐形で鈍く、上顎には約59列ある。5対の鰓裂はS字型をしている。腹鰭はかなり細い。雄は丈夫なクラスパーを持つ[2][5]。
尾は薄く鞭状で、長さは体盤の2.5 - 3.8 倍で、尾の基部の後方、体盤幅の半分ほどの長さの位置に、鋸歯状の毒棘がある。尾に尾褶は無い[2]。成魚では目の前から尾まで、狭い間隔で突起が並んでいる。体盤の中心には、最大15 個のハート型の歯列が正中線に並んでおり、両側には大きな皮歯がある。尾の付け根には大きな皮歯が無い[3]。出生時には背面が灰色から茶色で、大きな黒い斑点があり、棘までは尾の両側に暗い斑点の列があり、棘を超えると暗い輪と明るい輪が交互に現れる。斑点は体盤幅約55 cmで空洞になっており、黄褐色の地に大きな濃い茶色の輪といった、ヒョウのような模様となる[2]。尾の輪は腹側に向かって鞍型になる。腹面は一様に白色である。模様には二つのタイプがあると考えられていたが[2][5]、実際は Himantura tutul という別種であった[6][7]。
生態
[編集]歴史的に他の種と混同されていたため、生態については不明な点が多い。甲殻類や小魚などを捕食していると考えられる[3]。無胎盤性の胎生であり、母親が作り出す組織栄養物(「子宮乳」)によって胚が維持される。出生時は体盤幅約20 cm、全長92 cmで、アミメオトメエイやハチノスオトメエイよりも小さく、皮歯はほとんど無いか全く無い。これら2種とは対照的に、体盤幅50 cmの若魚は、背側の皮歯がまだ発達していない。雄は体盤幅70 - 80 cmで性成熟する[2][5]。本種の寄生虫は、多節条虫亜綱の Parachristianella indonesiensis および P. baverstocki が挙げられる[8]。
人間との関係
[編集]国際自然保護連合(IUCN)によって危急種に指定されている[1]。インドネシアなどの地域では、底引網、延縄などを使って、主に食用のため肉を目的として、また皮や軟骨も目的として大量に漁獲されている[3][5]。インドネシア東部で捕獲された個体のほとんどは幼魚であった[9]。
出典
[編集]- ^ a b Rigby, C.; Moore, A. & Rowat, D. (2016). “Himantura leoparda”. IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T195456A68628645. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T195456A68628645.en 17 April 2024閲覧。.
- ^ a b c d e f g Manjaji-Matsumoto, B.M.、Last, P.R. 著「Himantura leoparda sp. nov., a new whipray (Myliobatoidei: Dasyatidae) from the Indo–Pacific」、Last, P.R.、W.T. White、J.J. Pogonoski 編『Descriptions of New Australian Chondrichthyans』CSIRO Marine and Atmospheric Research、2008年、292–302頁。ISBN 978-1-921424-18-2。
- ^ a b c d e Last, P.R.; W.T. White; J.N. Caira; Dharmadi; Fahmi; K. Jensen; A.P.F. Lim; B. Mabel Manjaji-Matsumoto et al. (2010). Sharks and Rays of Borneo. CSIRO Publishing. pp. 200–201. ISBN 9781921605598
- ^ a b Borsa, P.; Williams, C.T.; McIvor, A.J.; Hoareau, T.B.; Berumen, M.L. (2021). “Neotype designation and re-description of Forsskål's reticulate whipray Himantura uarnak”. Marine Biodiversity 51 (2): 28. doi:10.1007/s12526-021-01180-1. hdl:10754/665804 .
- ^ a b c d e Last, P.R. and J.D. Stevens (2009). Sharks and Rays of Australia (second ed.). Harvard University Press. p. 446–447. ISBN 978-0674034112
- ^ Arlyza, I.S.; Shen, K.-N.; Solihin, D.D.; Soedharma D.; Berrebi, P.; Borsa, P. (2013). “Species boundaries in the Himantura uarnak species complex (Myliobatiformes : Dasyatidae)”. Molecular Phylogenetics and Evolution 66 (1): 429–435. doi:10.1016/j.ympev.2012.09.023. PMID 23023209 .
- ^ Borsa, P.; Durand, J.-D.; Shen, K.-N.; Arlyza, I.S.; Solihin, D.D.; Berrebi, P. (2013). “Himantura tutul sp. nov. (Myliobatoidae, Dasyatidae), a new ocellated whipray from the tropical Indo-West Pacific, described from its cytochrome-oxidase I gene sequence”. Comptes Rendus Biologies 336 (2): 82–92. doi:10.1016/j.crvi.2013.01.004. PMID 23608177 .
- ^ Campbell, R.A. and I. Beveridge (May 2009). “Oncomegas Aetobatidis Sp. Nov. (Cestoda: Trypanorhyncha), A Re-Description of O. Australiensis Toth, Campbell & Schmidt, 1992 and New Records of Trypanorhynch Cestodes from Australian Elasmobranch Fishes”. Transactions of the Royal Society of South Australia 133 (1): 18–29. doi:10.1080/03721426.2009.10887107.
- ^ White, W.T.; Dharmadi (June 2007). “Species and size compositions and reproductive biology of rays (Chondrichthyes, Batoidea) caught in target and non-target fisheries in eastern Indonesia”. Journal of Fish Biology 70 (6): 1809–1837. doi:10.1111/j.1095-8649.2007.01458.x.