ヒモワタカイガラムシ
ヒモワタカイガラムシ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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ヒモワタカイガラムシ雌成虫
宿主植物はイスノキ | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Takahasia japonica (Cockerell) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ヒモワタカイガラムシ |
ヒモワタカイガラムシ Takahasia japonica (Cockerell) は、カタカイガラムシ科ヒモワタカイガラムシ属の昆虫である。白いリボン状の部分が大きく伸びて、輪のようになって木の枝にぶら下がる。
多くの種の樹木に寄生し、それほど多いものではないが、時に大量に発生する。
特徴
[編集]雌成虫は前体部と後体部からなるが、前体部が虫の本体である。しっかりした触角と足はあるが、外からは全く見えないため、昆虫としての構造は感じられない。
前体部は長さ3-7mmの楕円形で、腹面は宿主樹木の枝に密着し、後体部が発達すると先端以外は離れる。背面はなだらかに盛り上がり、淡黄色で暗褐色の斑紋があり、中央には赤っぽい縦線があるが、産卵後は全体に褐色になる。
後体部は真っ白の円柱状で、これは蝋状の分泌物質が外側にあって、内部に大量の卵を包んだものである。雌成虫の成熟後、この部分はどんどん伸びるが、その先端は宿主の樹皮にくっついているので、前体部の先端と後体部の後端がごく近い位置で樹皮にくっついて、その間の部分は樹皮を離れて垂れ下がり、結果として全体で輪のような形となる。その形はミスタードーナッツのハニーチュロにも似ている。よく多数が集まって寄生するため、遠目にも多数の白いリボンがついているような奇観となる。中にある卵は黄色で、その数は一雌当たり3000個にも達する。
雄虫は体長約1.2mm、細長くて黄色、胸部はやや色濃く、立派な翅を持つ。腹部末端に肉質突起と長毛をそれぞれ一対有する。
生活史
[編集]宿主の範囲は非常に広く、ヤナギ類・ハンノキ・ケヤキ・エノキ・クワ・コブシ・ホオノキ・イスノキ・フウ・スモモ・マルメロ・タチバナモドキ・キハギ・ネムノキ・ミカン類・カエデ類・カキなどいくつもの科にまたがる。
年一化性で、成虫は五月中旬~下旬に成熟し、幼虫は六月ころから出てくる。幼虫は当初は葉の裏面に寄生し、そこで終齢幼虫(三齢)まで成長する。終齢幼虫は落葉の前、10-11月にそこから移動し、枝先に定着し、そこで越冬する。越冬した幼虫は四月ころ成虫となる。
分布
[編集]本州・四国・九州に分布し、国外では朝鮮、中国から知られる。
利害
[編集]宿主植物には栽培植物も多く含まれるので、農業害虫として扱われる。出現頻度は多くないものの、時に大発生をする。成虫には農薬はほとんど効果がなく、幼虫の出現時に薬をまくのが効果的とのこと。
参考文献
[編集]- 河合省三、『日本原色カイガラムシ図鑑』、(1980)、全国農村教育協会
- 竹内吉蔵、『原色日本昆虫図鑑(下)』、(1955)、保育社
- 石井悌他編、『日本昆蟲圖鑑』、(1950)、北隆館
- 米山伸吾・木村裕、『庭木の病気と害虫 -見分け方と防ぎ方-』、(2001)、農産漁村文化協会