ヒドロキシピナコロンレチノアート
ヒドロキシピナコロンレチノアート | |
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(3,3-dimethyl-2-oxobutyl) (2E,4E,6E,8E)-3,7-dimethyl-9-(2,6,6-trimethylcyclohexen-1-yl)nona-2,4,6,8-tetraenoate | |
別称 granactive retinoid | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 893412-73-2 |
PubChem | 25054592 |
ChemSpider | 32700524 |
UNII | NJ3V2F02E1 |
ChEBI | |
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特性 | |
化学式 | C26H38O3 |
モル質量 | 398.58 g mol−1 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ヒドロキシピナコロンレチノアート (hydroxypinacolone retinoate, HPR)は、レチノイドの一種で、レチノイン酸のエステル[1]。皮膚刺激性、光学的安定性や毒性の点でトレチノインやレチノールよりも改良されている[1]。一般にGranactive Retinoid®と呼ばれている。
Granactive Retinoid®は米国GRANT INDUSTRIES社[2]が開発した次世代型のレチノール誘導体で、有効成分である「ヒドロキシピナコロンレチノアート(日本語表示名称:レチノイン酸ヒドロキシピナコロン)」とキャリア溶媒「ジメチルイソソルバイド」の混合原料である。
日本市場において、2021年4月株式会社NIKU[3]が形成外科医の上原恵理医師監修のもと、Granactive Retinoid®を配合した商品をはじめて上市した[4]。レチノール初心者から上級者まで幅広いニーズに対応するため、4段階の濃度(2%、5%、7%、10%)で化粧品ブランド「Lov me Touch」のグラナクティブシリーズとしてラインナップされている[5][6][7][8]。
トレチノインは1969年から使用されてきたが、頻繁に適用部位に皮膚刺激性があり紅斑や皮剥けを起こし、より効力が弱いレチノールでは化学的に不安定な物質である[9]。化粧品化学者のマーク・コーネルによれば、レチノールによる皮膚刺激性によって皮膚が乾燥し赤くなることは、まだ人々がレチノールを敬遠する原因となる[10]。エスティローダーは2018年の国際皮膚科学調査会議にて報告し、レチノールは皮膚の抗老化でよく知られているが、その皮膚刺激性、光学的な不安定性は化粧品に使用するための欠点であり、より安定し刺激の少ない新しい化合物としてのヒドロキシピナコロンレチノアートを説明した[11]。
ヒドロキシピナコロンレチノアートはトレチノインのような皮膚刺激を起こさない。APICDMOはその有名なメーカーである[12]。生理活性のあるレチノイン酸へと代謝するレチノールとは異なり、ヒドロキシピナコロンレチノアートではレチノイン酸受容体に直接結合することができる[1]。
ニキビの98人での2015年の比較対照のない試験では、0.1%ヒドロキシピナコロンレチノアートと1%レチノールが配合された合剤で、平均でニキビ病変は約41%減少し、副作用は約15%に起こり乾燥、紅斑、熱感、皮剥けであった[13]。
出典
[編集]- ^ a b c Nora Ruth, Thomas Mammone (2018). “Antiaging effects of retinoid hydroxypinacolone retinoate on skin models”. Journal of the American Academy of Dermatology 79 (3): AB44. doi:10.1016/j.jaad.2018.05.215.
- ^ “Home” (英語). Grant Industries. 2024年3月16日閲覧。
- ^ “株式会社NIKU 〜ドクターズ製品を通して「 一瞬の美ではない、継続的な美」をご提供〜”. 2024年3月16日閲覧。
- ^ “日本上陸!!【ビタミンA界の新星】グラナクティブレチノイド*1配合コスメ誕生。上原恵理医師ブランド『Lov me Touch(ラブミータッチ)』から2%・5%配合製品が新発売!4/9(金)より予約開始”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES (2021年4月6日). 2024年3月16日閲覧。
- ^ Dr.BEAUTOPIA. “【通販】Lov me Touch ラブミータッチ グラナクティブレチノイド2%ミルク 30mL | Dr.BEAUTOPIA”. dr-beautopia.com. 2024年3月16日閲覧。
- ^ Dr.BEAUTOPIA. “【通販】Lov me Touch ラブミータッチ グラナクティブレチノイド5%ミルク 30mL | Dr.BEAUTOPIA”. dr-beautopia.com. 2024年3月16日閲覧。
- ^ Dr.BEAUTOPIA. “【通販】Lov me Touch ラブミータッチ グラナクティブレチノイド7%ミルク 30mL | Dr.BEAUTOPIA”. dr-beautopia.com. 2024年3月16日閲覧。
- ^ Dr.BEAUTOPIA. “【通販】ラブミータッチ プロ グラナクティブレチノイド10%ミルク 30mL | Dr.BEAUTOPIA”. dr-beautopia.com. 2024年3月16日閲覧。
- ^ Katie Rodan, Kathy Fields, George Majewski, Timothy Falla (2016-12). “Skincare Bootcamp: The Evolving Role of Skincare”. Plastic and reconstructive surgery. Global open 4 (12 Suppl Anatomy and Safety in Cosmetic Medicine: Cosmetic Bootcamp): e1152. doi:10.1097/GOX.0000000000001152. PMC 5172479. PMID 28018771 .
- ^ Liz Ritter (2017年12月19日). “5 Things Everyone Believes About Retinol That Are Wrong”. New Beauty. 2019年6月21日閲覧。
- ^ Sarah Vickery (2018年5月17日). “The Estée Lauder Companies showcases robust research at 2018 IID Meeting”. EurekAlert!. 2019年6月21日閲覧。
- ^ Truchuelo, Maria Teresa; Jiménez, Natalia; Jaén, Pedro (2014). “Assessment of the efficacy and tolerance of a new combination of retinoids and depigmenting agents in the treatment of melasma”. Journal of Cosmetic Dermatology 13 (4): 261–268. doi:10.1111/jocd.12110.
- ^ S. Veraldi, M. Barbareschi, E. Guanziroli; et al (2015-4). “Treatment of mild to moderate acne with a fixed combination of hydroxypinacolone retinoate, retinol glycospheres and papain glycospheres”. Giornale italiano di dermatologia e venereologia : organo ufficiale, Societa italiana di dermatologia e sifilografia 150 (2): 143–147. PMID 25876142.
関連項目
[編集]- レチノイン酸レチニル 同様に改良目的で、レチノイン酸とレチノールが結合したもの。
- バクチオール - 同様にレチノールの代用として注目されている他の成分。