パーリー・キングズ・アンド・クイーンズ
パーリー・キングズ・アンド・クイーンズ (英語: Pearly Kings and Queens) は、イングランドのロンドンにおいて、労働者階級の文化として伝統的に行われている組織的な慈善活動である[1][2]。パーリーズ (pearlies) とも呼ばれる。真珠層のボタンで飾った華やかな衣類を着込んで、病院などに対する寄付金を募る活動をしている。
ヘンリー・クロフト
[編集]真珠層のボタンで装飾された服を着る習慣は、ヘンリー・クロフト (1861-1930) に端を発する[1]。クロフトは、慈善活動のために寄付金を集めていた孤児の街路清掃員であった。当時、ロンドンの行商人には、真珠層のボタンで縫い目が装飾されたズボンをはく習慣があった。1870年代後半、クロフトはこの習慣をスパンコールのスーツを作ることに応用し注目を集め、自身の寄付金集めに役立てた[3][4]。クロフトの衣服は6万個もの光り輝くボタンで飾られていたという[2]。クロフトは主に病院や孤児院などのための寄付金集めに尽力した[5]。1911年、ロンドン北部のフィンチリーで、組織化されたパーリーの団体が結成された[1]。
1930年1月に行われた葬儀には400人の支持者が参列し[1]、全国的にメディアで報道された[6]。1934年、クロフトを「初代パーリー・キング」と称える記念碑の除幕式がセントパンクラス墓地で行われ、記念スピーチの中では、クロフトがロンドンの病院で苦しむ人々のために5,000ポンドの寄付金を集めたことが言及された[7]。
パーリーの団体
[編集]現在、パーリーはいくつかの活動団体に分かれている。クロフトの設立した活動団体は、オリジナル・ロンドン・パーリー・キングズ・アンド・クイーンズ・アソシエーションと呼ばれている。1975年に改革が行われ[1][3]、シティ・オブ・ロンドン、ウェストミンスター、ヴィクトリア、ハックニー、タワーハムレッツ、ショーディッチ、イズリントン、ダルストン、ホクストンなどの、パーリーが名乗り始めたときから存在している称号のほとんどを保有している。ほかの団体も年を追うごとに設立されてきている。最も古い団体はパーリー・ギルドであり、この団体は1902年に設立された[1][8]。近年設立した団体としては、ロンドン・パーリー・キングズ・アンド・クイーンズ・ソサエティという、2001年にはじまった団体や[1][4]、パーリー・キングズ・アンド・クイーンズ・ギルドなどがある[9]。対立関係があるにもかかわらず、各グループはロンドン中心部の教会と関わりを持ち、ロンドンを拠点とする慈善団体への募金活動に尽力している[1]。それぞれ地元の慈善事業のための寄付金集めを行う他、ホスピスや学校などを訪問したり、地元のイベントに出席したりする活動を行っており、「ロンドン生活のアイコン[2]」と見なされている。
影響
[編集]2007年にザ・ホワイト・ストライプスが出したアルバム『イッキー・サンプ』のジャケットではジャック・ホワイトとメグ・ホワイトがパーリー・キングとパーリー・クイーンをヒントにした扮装をした[10]。
2012年ロンドンオリンピックの開会式では、実在のパーリー・キングとパーリー・クイーンのパレードが取り上げられた[11]。
ファッションデザイナーのリチャード・クインはパーリー・キングズ・アンド・クイーンズの衣装をモチーフとしたスーツをデザインしており、2023年に『ヴォーグ』がロンドンで行ったヴォーグ・ワールドのイベントではアニー・レノックスがこのスーツを着用して出演した[12]。
参考文献
[編集]- ^ a b c d e f g h Swinnerton, Jo (2004). The London Companion. Robson. p. 18. ISBN 9781861057990 . "London Pearly Kings and Queens Society established."
- ^ a b c Howard, Ellie. “The pearly kings and queens: London's 'other' royal family” (英語). www.bbc.com. 2023年4月25日閲覧。
- ^ a b “Original London Pearly Kings and Queens Association”. 2009年9月24日閲覧。
- ^ a b “London Pearly Kings and Queens Society”. 2009年9月24日閲覧。
- ^ “Six things you never knew about Pearly Kings and Queens” (英語). Museum of London. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “The Passing of the King of Pearly Kings”. British Pathe (January 9, 1930). 2009年9月24日閲覧。
- ^ “Memorial to 'Pearly King'”. British Pathe (June 4, 1934). 2009年9月24日閲覧。
- ^ “Pearly Guild”. 2009年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月24日閲覧。
- ^ “Pearly Kings and Queens Guild”. 7 May 2012閲覧。
- ^ NME (2007年6月20日). “White Stripes' stylist reveals secrets of band's pearly suits” (英語). NME. 2023年11月28日閲覧。
- ^ “Rewatching the London 2012 opening ceremony – what was it all about?” (英語). BBC Bitesize. 2023年10月5日閲覧。
- ^ “見逃し配信でチェック!2023年 「VOGUE WORLD」のベストモーメント10”. Vogue Japan (2023年9月15日). 2023年11月3日閲覧。
外部リンク
[編集]- www.thepearlies.co.uk The Original Pearly Kings and Queens Association
- www.pearlies.org.uk Pearlies of Kings Cross & St.Pancras
- www.pearlysociety.co.uk The London Pearly Kings and Queens Society
- www.pearlykingsandqueens.com Pearly Kings and Queens Guild
- Henry Croft, Pearly King and other Pearly photos on flickr
- The Pearly Families - The Hitchen Family - Pearly King City of London
- "The War of the Pearly Kings", by Mary Braid. The Independent, (16 April 2014). Retrieved 13 March 2021.
- "One last knees up: What does the future hold for London's ageing Pearlies?", by Charlotte Leedham. Goldsmiths University of London, (8 January 2018). Retrieved 13 March 2021.
- "What's All This Then? – London's Pearly Kings and Queens.", by John Rabon. Londontopia, (23 February 2017). Retrieved 13 March 2021.