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パンチコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
パンチコ
パンチコのロゴ
基本情報
出身地 ノッティンガムイングランド
ジャンル
活動期間
  • 1997年 - 2001年
  • 2020年 -
公式サイト panchiko.net
メンバー
  • オウェイン・デイヴィス
  • アンディ・ライト
  • ショーン・フェレデイ
  • ジョン・スコフィールド
  • ロブ・ハリス
旧メンバー ジョン[1]

パンチコ英語: Panchiko)は、イギリスオルタナティヴ・ロックバンドである。

1997年に結成。自主制作盤CDを約30枚制作したのみで2001年に解散したが、2016年に4chanで再発見され[2]ロストウェイヴとして話題となり[3]、2020年に再結成した。スタイルとしてはドリーム・ポップノイズポップシューゲイザートリップ・ホップネオ・サイケデリア英語版など多様なジャンルを融合している。

歴史

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1997-2001: 結成~1st EP『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』~そして解散

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パンチコは1997年から1998年にかけて、イングランドノッティンガム出身の当時16〜17歳の友人たちによって結成された。結成メンバーは、リードボーカルギタリストのオウェイン・デイヴィス、ギタリスト兼キーボーディストアンディ・ライトベーシストのショーン・フェレデイ、ドラマーのジョン[1]の4人組である。

バンドは当初、地元のパブでカバー演奏を行い、地元のバンドコンテストにも参加していた。しかし、観客がわずか3人しかいないこともあり、評価はあまり芳しくなかった[4]。その後、メンバーは自宅の地下室や寝室で安価な機材を使用して音楽制作を始め[5]、1999年から2000年にかけて1st EP『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』を自主制作した(ジャケットには吉住渉少女漫画ミントな僕ら』のコラージュが使用されている)。このEPは2000年6月18日に完成し、約30枚のCD-Rが制作され、友人に配布されたほか、ロンドンのレコードレーベル「フィアース・パンダ・レコード」にも送られたが、大きな反響は得られなかった[3]

2001年、バンドは活動停止を決定。メンバーたちはそれぞれ異なる道を選んだ。バンド解散後、ギターボーカルのオーウェンはゲーム業界を経て教師に転向した。キーボードのアンディは他のバンドに携わりながらオーディオ・エンジニアの仕事を続けた。ベースのショーンは樹医となり、ドラムのジョンは軍隊に入隊して他のメンバーとの連絡を絶った[6]

2016-2020: 4chanでの再発見と捜索活動

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2016年7月21日、オックスファムリサイクルショップでパンチコのEP『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』が匿名ユーザーによって発見され、匿名掲示板・4chanの音楽板「/mu/」にジャケット写真と音源が共有された[2]。音源はディスクの経年劣化で音質が大きく歪んでいたが、かえってこれがバンドへの興味関心を集めた。4chanユーザーは掲示板上でバンドの情報を求めたものの、メンバーのファーストネームとリリース年しか記載されておらず、それ以上の情報は得られなかった。この匿名ユーザーはすぐに姿を消してしまうが、この投稿をきっかけにパンチコはロストウェイヴの一例としてインターネット上でカルト的な人気を獲得する。

その後、リスナーはリッピングした音源をファイル共有サイトのMEGAに再アップロードし、2017年には奇妙な音楽や映像をアーカイブする「Dismiss Yourself」というYouTubeアカウントが音源を拡散したことで人気が一気に拡大した[7][8]。一方、あるRedditユーザーは「4ちゃんねらーが自作したアルバムだろう」と述べ、別のユーザーは「実際の年代よりも最近作られた偽物ではないか」という陰謀説を唱えた[6]。この現象についてBandcampは「インターネット最大の音楽ミステリーのひとつ」「これは正真正銘の90年代の骨董品なのか? インターネットに精通したティーンエージャーが仕掛けたいたずらなのか? それともヴェイパーウェイヴの精神にのっとった、ノスタルジアをテーマとしたインターネット実験なのか?」と評した[5]

再発見から4年後の2020年1月19日、Discordに集まった熱心なファンの捜索により、ノッティンガムにあるリサイクルショップがジャケットのバーコードから特定され、その地域に住む「オウェイン」という名のミュージシャンが捜索された[6]。1月22日には、リードシンガーのオウェイン・デイヴィスのFacebookが発見され、彼とのコンタクトが取られた[4][5][9]。そこで初めてバンドの人気を知ったオウェインは、すぐに元メンバーのアンディらと連絡を取り、バンドをめぐる状況に全員が驚愕した[3][6]。メンバーはバンドの人気を知らなかったが、ファンの期待に応えるべくアンディの主導で過去音源の復元とリマスターが進められた[3]

オウェインは連絡を受けた直後、Discordのパンチコ・コミュニティ「Panchikord」に次のコメントを発表している。

この24時間の間に、私はインターネット上のさまざまな人たちから連絡を受けました。パンチコというバンドが作った『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』というEPについてインチキなのかどうかという質問です。

ここで私は、パンチコの『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』が実際に2000年に作られた正真正銘の作品であることを明言します。それは1999年から2000年にかけて、4人組のバンドによって作られたEPです。

音楽に対する皆さんの反応や、発見された1枚のコピーの劣化具合を聴くのは不思議な感じがします。その劣化が音楽にどのようなアクセントを加えているのかも含めて、とても興味深いものでした。

現在、特に面白いと感じているのは、YouTubeでEPに関する多くのビデオを視聴した後、CDの劣化が実際には音楽の一部であり、人々がその音楽を楽しむ理由のひとつとなっているという点です。

私はオリジナル盤を探すつもりであり、将来的にそれをお見せできるかもしれません。しかし、それは人々が音楽に見出したものから何かを奪ってしまうような気もします。もしかしたら、この興味深い、半ば破壊された往時の音楽として、人々が発見したままにしておくのがベストなのかもしれません。

繰り返しになりますが、これはデマではなく、4人組の学生バンドがレコード会社に自分たちの音楽を売り込むために制作した本物のデモCDです。もしかすると、現存するのは理論上1枚だけかもしれない。30枚作られたかどうかもわかりません。30枚かもしれないし、もしかしたら40枚かもしれない。

腐食のないバージョンを見つけられるかもしれませんが、先に述べたように、まさにその点こそがこの物語を今日魅力的なものにしている要素だと思います。それがこのCDの魅力であり、楽しむべき部分だと思います。もしかしたら私たちが完全に修復されたバージョンを聴くことは二度とないのかもしれない。 — 2020年1月24日、オウェインがDiscordのコミュニティにシェアしたビデオメッセージの全文[10]

2020年-現在: 再結成・再発・ツアー

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2023年5月に行われたアメリカツアー

2020年2月、リマスター版の『D>E>A>T>H>M>E>T>A>L』がBandcampCDレコードカセットで再リリースされた。このバージョンには未発表EP『Kicking Cars』のトラックから3曲、4chanに投稿されたROT版から4曲が追加で収録された。これに続いて、未発表デモを収録した『Ferric Oxide (Demos 1997-2001)』や新曲を含むコンピレーション・アルバムなどを次々とリリースした。

2021年8月、メンバーが再集結し、新メンバーとしてギタリストのロブ・ハリスとドラマーのジョン・スコフィールドが加わった。そして2021年12月5日、解散以来20年ぶりとなるライブを故郷のノッティンガムで行い、約400人の観客の前で演奏した[6][11]

2022年にはアメリカを舞台にした初のツアーに乗り出し、テキサス州のサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)にも出演した。2023年5月5日には、正式な1stスタジオ・アルバム『Failed at Math(s)』をリリースし、同年に2度目となるアメリカツアーを行った。

2024年9月現在、パンチコの月間リスナー数は、Spotifyだけで100万人を超えている。

メンバー

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現メンバー

  • オウェイン・デイヴィス - ボーカル、ギター、サンプリング、プロデュース、作詞 (1997–2001, 2020–現在)
  • アンディ・ライト - ギター、キーボード、サンプリング、エンジニアリング、プロデュース、作詞 (1997–2001, 2020–現在)
  • ショーン・フェレデイ - ベース、エフェクト (1997–2001, 2020–現在)
  • ロブ・ハリス - ギター (2021–現在)
  • ジョン・スコフィールド - ドラム、パーカッション (2021–現在)

旧メンバー

脚注

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  1. ^ a b c バンドのライナーノーツでは、メンバーのフルネームが記載されていないため、ジョンの姓は公開されていない。
  2. ^ a b Anonymous (2016年7月21日). “/mu/ - Music » 4chan Thread #66571671 Panchiko - D>E>A>T>H>M>E>T>A>L”. 4chan archive - 4archive.org. 2024年9月14日閲覧。「このアルバムを知っている人はいますか? ノイズポップヴェイパーウェイヴのようなものかと思ったけど、いま聴いてみると、トラック1はまるで地獄のようなローファイシューゲイザーで、ノイズが前後にパンしている。これはバイラル・マーケティングの戯言ではない。レアなアルバムを手に入れられるということで、少し興奮しているんだ。」
  3. ^ a b c d The Surprising Story of Panchiko”. Corduroy Threads Podcast (2020年3月15日). 2020年7月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月15日閲覧。
  4. ^ a b How Panchiko Made Me Fall For Death Metal”. Medium. Sets and the CD (2021年1月3日). 2023年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年9月7日閲覧。
  5. ^ a b c Camp, Zoe (2020年5月18日). “Panchiko Reflect on "D>E>A>T>H>M>E>T>A>L," Lost Y2K Demo Turned Internet Cult Hit”. Bandcamp Daily. 2021年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年9月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e Panchiko: How a Mysterious Shoegaze Album Sparked an Global InterSearch”. Vice (2022年2月2日). 2022年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年9月5日閲覧。
  7. ^ Press-Reynolds, Kieran (2021年7月8日). “How Dismiss Yourself Became a Hub for Internet Weirdness”. Bandcamp Daily. 2024年9月8日閲覧。
  8. ^ [Outdated Bitrot Upload] Panchiko - DEATHMETAL - YouTube
  9. ^ Panchiko DEATHMETAL - Tales From the Internet - YouTube
  10. ^ Panchikobin - Pastebin
  11. ^ Panchiko - Deathmetal & Kicking Cars - Live at Metronome, Nottingham, UK - YouTube

外部リンク

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