コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

パハウ・フモン文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
パハウ・フモン文字
類型: アルファベット
言語: ミャオ語
発明者: ション・ルー・ヤン
時期: 1959年-現在
Unicode範囲: U+16B00..U+16B8F
ISO 15924 コード: Hmng
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
テンプレートを表示

パハウ・フモン文字[1]英語: Pahawh Hmong scriptRPA: Phajhauj Hmoob)は、ミャオ語(モン語、フモン語)の表記体系のひとつで、1959年にラオス北部とベトナムの国境地帯に住むション・ルー・ヤンによって発明された。左から右に書かれるアルファベットの一種であるが、音節から頭子音と、それ以外の韻に対して文字を定義し、その2文字によってひとつの音節を表す。この点は中国の注音符号に多少似ている。また韻を頭子音の前に置くところに特徴がある。

成立

[編集]
パハウ・フモン文字で書かれた「ション・ルー・ヤン」

20世紀はじめには、ミャオ語は無文字言語であった。その後、キリスト教宣教師によってポラード文字注音符号ラテン文字などを使ったミャオ語の表記方法が開発された。

ション・ルー・ヤンは文盲の農民だったが、1959年以降に神の啓示によって文字を示されたという[2]。ション・ルー・ヤンはその後も文字の改革を続けたが、彼の影響の拡大を恐れる政府の兵士によって1971年に暗殺された。

パハウ・フモン文字は普及しているというには程遠い状態だが、モン族はション・ルー・ヤンとパハウ・フモン文字に大きな誇りを持っている[3]

なお、ション・ルー・ヤンは他にモン・クメール語派のクム語のための文字も作ったというが、現存していない[2]

特徴

[編集]

パハウ・フモン文字では、音節を頭子音と韻(頭子音以外の部分)に分け、それぞれを1文字で記す。ひとつの音節は、韻を先に、頭子音を後に書くことで表される。頭子音を表記しなかった場合、暗黙の頭子音 k があるものと見なされる。また、韻を表記しなかった場合、暗黙の韻 au (中平調)があると見なされる。ただし、省略するとあいまいさが生じる場合には au が明示的に書かれる[4]

ミャオ語の複雑な頭子音体系を反映し、頭子音を表わす文字は60種類ある。これらは20種類の文字の上に2種類のダイアクリティカルマークを加えることで実現されているが、ダイアクリティカルマークのある文字とない文字の間に、音声上はっきりした関係は存在しない。60種類のうち2種類は Hmong Njua(青苗)方言専用の文字である[4]

韻の表記方法はバージョンによって異なるが、もっとも普及している第3版では、(声調を除いた)13種類の韻のそれぞれに2種類の文字を割りあて、それぞれ高平調と中昇調を表す。それ以外の6種類の声調は、その2種類の文字の上に3種類のダイアクリティカルマークを加えることで表す[5]

ほかに、数字や句切り符号、踊り字なども存在する。

Unicode

[編集]

パハウ・フモン文字は2014年のUnicode 7.0で追加多言語面(SMP)のブロックU+16B00..U+16B8Fを与えられた[6]

Pahawh Hmong[7]
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+16B0x 𖬀 𖬁 𖬂 𖬃 𖬄 𖬅 𖬆 𖬇 𖬈 𖬉 𖬊 𖬋 𖬌 𖬍 𖬎 𖬏
U+16B1x 𖬐 𖬑 𖬒 𖬓 𖬔 𖬕 𖬖 𖬗 𖬘 𖬙 𖬚 𖬛 𖬜 𖬝 𖬞 𖬟
U+16B2x 𖬠 𖬡 𖬢 𖬣 𖬤 𖬥 𖬦 𖬧 𖬨 𖬩 𖬪 𖬫 𖬬 𖬭 𖬮 𖬯
U+16B3x 𖬰 𖬱 𖬲 𖬳 𖬴 𖬵 𖬶 𖬷 𖬸 𖬹 𖬺 𖬻 𖬼 𖬽 𖬾 𖬿
U+16B4x 𖭀 𖭁 𖭂 𖭃 𖭄 𖭅
U+16B5x 𖭐 𖭑 𖭒 𖭓 𖭔 𖭕 𖭖 𖭗 𖭘 𖭙 𖭛 𖭜 𖭝 𖭞 𖭟
U+16B6x 𖭠 𖭡 𖭣 𖭤 𖭥 𖭦 𖭧 𖭨 𖭩 𖭪 𖭫 𖭬 𖭭 𖭮 𖭯
U+16B7x 𖭰 𖭱 𖭲 𖭳 𖭴 𖭵 𖭶 𖭷 𖭽 𖭾 𖭿
U+16B8x 𖮀 𖮁 𖮂 𖮃 𖮄 𖮅 𖮆 𖮇 𖮈 𖮉 𖮊 𖮋 𖮌 𖮍 𖮎 𖮏

脚注

[編集]
  1. ^ 日本語名称については『言語学大辞典』別巻の『世界文字辞典』による
  2. ^ a b Ratliff (1996) p.619
  3. ^ Ratliff (1996) p.623
  4. ^ a b Ratliff (1996) p.621
  5. ^ Ratliff (1996) pp.619-620
  6. ^ Unicode 7.0.0, The Unicode Consortium, (2014-06-16), http://unicode.org/versions/Unicode7.0.0/ 
  7. ^ (pdf) Pahawh Hmong, Unicode Consortium, https://www.unicode.org/charts/PDF/U16B00.pdf 

参考文献

[編集]
  • Ratliff, Martha (1996). “The Pahawh Hmong Script”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 619-624. ISBN 0195079930 

外部リンク

[編集]