パスツール効果
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パスツール効果(パスツールこうか、英: Pasteur effect)とは、酸素による、発酵の阻害効果のことである[1]。
発見
[編集]この効果は、1857年、ルイ・パスツールにより、イーストの培養液に通気を行うと、イーストの増殖が増大する一方で、発酵の速度が低下するという知見から見い出された[2]。
説明
[編集]この効果は以下のように説明できる。
イーストは通性嫌気性菌であるため、二つの異なる代謝経路でエネルギーを産生することができる。酸素濃度が低い際には、解糖系の産物(ピルビン酸)がエタノールと二酸化炭素に変換され、1分子のグルコースから2分子のATPが生成される(エネルギー生成効率は低い)。酸素濃度が増加すると、ピルビン酸は、クエン酸回路に利用されるアセチルCoAに変換され、1分子のグルコースから38分子のATPが生成される[3]。
上記に示した様に、嫌気性の環境において、グルコースはより速く代謝されるが、生成されるATPの量は少ない。好気性の環境にさらされると、ATP産生は増加し、生成されたATPが、解糖系における第三の酵素であるホスホフルクトキナーゼ1のアロステリック阻害剤として働くため、解糖系の割合は低下する[1]。
このため、ATP産生の観点から、イーストにとっては、好気的な環境下でクエン酸回路が働くことが、より少ないグルコースから多くのATPを得られるという利点となる。
実用上の意義
[編集]イーストをバイオマスとして増殖させる際には培養液を通気し、好気的な条件で培養を行うが、イーストをアルコールの生産に用いる際には、すべての過程で、嫌気的な環境が保たれている。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b “遺伝的プログラムとしての生命”. 生命を考える. 帯広畜産大学. 2016年4月18日閲覧。
- ^ https://www.sci.keio.ac.jp/gp/2E73001A/17A5C7C5/F075937D.pdf
- ^ http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/glyclysis.htm