バリの聖ニコラウスの施し物
フランス語: La Charité de saint Nicolas de Bari 英語: The Charity of St. Nicholas of Bari | |
作者 | アンブロージョ・ロレンツェッティ |
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製作年 | 1330年代 |
種類 | ポプラ板上にテンペラ、金箔 |
寸法 | 30 cm × 20.5 cm (12 in × 8.1 in) |
所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『バリの聖ニコラウスの施し物』(バリのせいニコラウスのほどこしもの、仏: La Charité de saint Nicolas de Bari、英: The Charity of St. Nicholas of Bari)は、14世紀のイタリア・シエナ派の画家アンブロージョ・ロレンツェッティが1330年代にポプラ板上にテンペラと金箔で制作した絵画である。本来、三連祭壇画の左翼であったと考えられており[1][2]、右翼には自身のマントを割いて与える『聖マルティヌスの施し物』 (イェール大学美術館所蔵) が描かれていた[1][3]。一部の美術史家は、祭壇画の中央パネルはシエナ国立美術館にある『聖母子と聖人たち』であったと考えている[1][3]。本作は1916年に美術商ラウル・デュセニュール (Raoul Duseigneur) に寄贈されて以来、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3]。
作品
[編集]本作に描かれている聖ニコラウスは、サンタ・クロース伝説のもとになった人物である[4]。彼は4世紀のミュラ (現トルコ) 司教で[1]、早くから神に生涯を捧げ、両親が死んだ後は貧民に大金を分配し[4]、さまざまな治癒の奇蹟や善行のゆえに非常な崇敬を集めた[2]。
画面に描かれているのは、青年時代のニコラウスにまつわる逸話である[1][2]。ある男が貧窮して、3人の娘の結婚持参金を用意できなかった[1]ために彼女たちを売り飛ばすしかなくなった。そこで、ニコラウス (左端) は彼女たちが分相応の結婚ができるよう[2]、夜中に密かに男の家を訪れ、金貨の詰まった財布を窓から投げ入れた[1][2]。
この絵画は左翼パネルであったために、中央パネルに向かって、すなわち右側に向かって建物の線が後退する室内の遠近法が用いられている[2]。ニコラウスの古い伝説は、ゴシック後期風のアーチや家具に見られるような同時代の細部で表されている。貧しい家庭では、1台のベッドで数人が寝ていたという。赤いクッションのある手前のチェストは寝心地が悪そうである[1]。
色彩の面では、ピンク、黄、緑、赤、白色が華やかに用いられ、素朴かつ民話的な情景が作り出されている。フラ・アンジェリコにつながるイタリアのプリミティブ美術の系譜に属す作品である[2]。なお、フィレンツェのウフィツィ美術館には、アンブロージョ・ロレンツェッティによる同主題の場面を含む『聖ニコラウスの物語』が所蔵されている[5][6]。
ギャラリー
[編集]-
アンブロージョ・ロレンツェッティ『聖母子と聖人たち』、シエナ国立美術館
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、18頁。
- ^ a b c d e f g h 『NHKルーブル美術館III 中世からルネサンスへ』、1985年、89頁。
- ^ a b c “La Charité de saint Nicolas de Bari”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年5月23日閲覧。
- ^ a b 『NHKルーブル美術館III 中世からルネサンスへ』、1985年、86頁。
- ^ ルチャーノ・ベルティ、28頁。
- ^ ルチアーノ・ベルティ、アンナ・マリーア・ペトリオーリ・トファニ、カテリーナ・カネヴァ 1994年、22頁。
参考文献
[編集]- ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
- 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館III 中世からルネサンスへ』、日本放送出版協会、1985年刊行 ISBN 4-14-008423-5
- ルチャーノ・ベルティ『ウフィツィ』、ベコッチ出版社 ISBN 88-8200-0230
- ルチアーノ・ベルティ、アンナ・マリーア・ペトリオーリ・トファニ、カテリーナ・カネヴァ『ウフィツィ美術館』、みすず書房、1994年 ISBN 4-622-02709-7