バイラクタル クズルエルマ
バイラクタル クズルエルマは、トルコのバイカル社が開発中の無人航空機(UCAV)である。 この航空機は当初プロジェクトMIUS(トルコ語: Muharip İnsansız Uçak Sistemi;英語: Combatant Unmanned Aircraft System)と呼ばれていた。初期型のクズルエルマ-Aは亜音速、派生型のクズルエルマ-BおよびCは超音速を意図しており、後者は双発である。 これはTAI Anka-3と並び、トルコのジェット動力ステルスUCAVの2機のうちの1機である。
バイカル社CTOのSelçuk Bayraktar氏は当初、クズルエルマが2023年までに初飛行する予定であると発表し 、ジェット動力のUCAVは「12年来の夢」であると付け加えた。 クズルエルマは予定通り2022年12月に初飛行を完了した。
開発
[編集]MIUSの最初の概念研究は2013年に始まり、2021年7月に最初のデザイン画像と航空機の特性に関する情報が一般に公開さた。
エンジン
[編集]2021年11月、AI-322ターボファンエンジンの供給契約とAI-25TLTターボファンエンジン統合契約がバイカル社とウクライナのイーウチェンコ・プログレスの間で署名された。最初のプロトタイプはAI-25TLTエンジンを使用して亜音速で飛行、その次のプロトタイプがAI-322Fエンジンを搭載し超音速で飛行すると予定された。
プロジェクト名の公開
[編集]プロジェクト名は当初、MIUSとして知られていた。正式名称の クズルエルマ(Kızılelma=トルコ語で赤いリンゴ)は2022年3月に公開された。
試作機
[編集]名前の公開と同時にSelçuk Bayraktarは、最初のクズルエルマが組立ラインに入ったと明らかにした。最初の即戦力プロトタイプはテクノフェスト2022で一般に公開された。 量産プロトタイプとされる3機目の試作機は、2024年9月25日にチョルルのAKINCI飛行訓練試験センターからの初飛行を成功させた。 この試作機はテールナンバーTC-ÖZB3で、アフターバーナー搭載エンジン、空力の改善、更新されたアビオニクスなど、最初の試作機とは大きく異なっていた。
設計
[編集]機体形状
[編集]クズルエルマはAESAレーダーを搭載し、ステルス性を備え、双発のターボファンエンジンによって超音速飛行が可能となっているる。ヨー制御は2つの垂直尾翼によって行われ、さらに操縦性の向上と主翼の気流を適切に制御するためのカナード翼を備えている。内部は区画で仕切られ、ステルス性をを維持しつつ激しい環境で運用できるようになっている。
最大離陸重量は6,000kg(13,200lb)で、ペイロードは1,500kg、運用高度は35,000フィート(10,670m)となっている。
試作機には状況認識を向上させるためにAESAレーダーが組み込まれ、またアセルサンのKARAT-100赤外線捜索・追跡システム(IRST)、TOYGUN-100電気光学追跡システム、分散開口システム(DAS)、IRISミサイル接近警報システム(MAWS)などの防御と生存性のための装備も備えている。
艦上での運用
[編集]クズルエルマはカタパルトシステムを必要とせず、アナドルなどの強襲揚陸艦に離着陸できるように設計されている。
2022年, バイカル社は異なるエンジンを搭載した3種類のクズルエルマを発表した。エンジンはトルコとウクライナの合弁会社であるブラック・シー・シールドによって製造される。 クズルエルマ-AはAI-25TLTエンジンを搭載し、亜音速で飛行。クズルエルマ-Bはウクライナ製のAI-322Fエンジン1基を搭載し、超音速で飛行する。 またクズレルマ-Cは2基のAI-322Fエンジンを搭載する。
試作機はAI-322のアフターバーナー使用することで、高速域での機動性を向上させて音速に近づくことを可能とした。バイカルは5~6年以内にクズルエルマで利用できる数種類のエンジンを用意し、外国への依存を減らすことを目指していると述べた。
性能諸元 (クズルエルマ-A)
[編集]- ペイロード: 1,500 kg (3,300 lb)
- 全長: 14.7 m (48 ft 3 in)
- 全幅: 10 m (32 ft 10 in)
- 全高: 3.3 m (10 ft 10 in)
- 最大離陸重量: 5,987.4kg (13,200 lb)
- 燃料搭載量: 不明
- 動力: 1 × イーウチェンコ・プログレス AI-25TLT ターボファンエンジン, 推力16.9 kN (3,790 lbf) , アフターバーナー無し(クズルエルマ-A)およびAI-322Fターボファンエンジン, ドライ推力24.5 kN (5,510 lbf) , アフターバーナー使用時 44kN (9,900 lbf) (クズルエルマ-B).
性能
- 最大速度: 1,100 km/h (680 mph, 590 kn) マッハ0.9
- 巡航速度: 735 km/h (457 mph, 400 kn) マッハ0.6
- 戦闘行動半径: 930 km (580 mi, 500 nmi) 内部搭載燃料のみの場合
- 飛行時間: 5~6時間
- 上昇限度: 14,000 m (45,000 ft)
- 運用高度: 11,000 m (35,000 ft)
武装
- ハードポイント: 機内に2基, 翼部に6基 (いずれも予定)
- 誘導ロケット弾
- ミサイル
- 爆弾
- Teber-81 (Mark 81爆弾/ROKETSAN レーザー誘導キット)
- HGK-82 (Mark 82爆弾/TUBITAK-SAGE 精密誘導キット)
- KGK-82 (Mark 82爆弾/TUBITAK-SAGE 補助翼誘導キット)
- Teber-82 (Mark 82爆弾/ROKETSAN レーザー誘導キット)
- HGK-83 (Mark 83爆弾/TUBITAK-SAGE 精密誘導キット)
- KGK-83 (Mark 83爆弾/TUBITAK-SAGE 補助翼誘導キット)
- HGK-84
- LHGK-84
- TUBITAK-SAGE TOGAN 81mm迫撃砲弾
- TUBITAK-SAGE KUZGUN-SS 滑空爆弾
- アセルサン小型爆弾
- SARB-83 地中貫通爆弾
- NEB-84 地中貫通爆弾
- TUBITAK-SAGE BOZOK
- MAM-C
- MAM-L
- MAM-T
Avionics
- トルコ製AESAレーダー
- アセルサン識別システム
- 電子戦用ポッド
- トルコ製SIGINTモジュール
関連項目
[編集]その他のUCAV
トルコ
中国
アメリカ