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ハル・ウス湖

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハル・ウス湖。中央で湖を東西に分けているのがアク・バシ島。画像左から流入するのがホブド川で、三角州を形成している。画像右へチョノハライハ川が流出。

ハル・ウス湖(ハル・ウスこ、モンゴル語: Хар-Ус нуур, Khar-Us Nuur / Khara-Usu Nuur)は、モンゴルの西部、大湖盆地にある淡水湖。モンゴルで3番目に大きい湖である。日本語ではハルオス湖ハラ・ウス湖などとも表記[1][2]

概要

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ジャルガラント=ハイルハンとハル・ウス湖

モンゴル西部、ホブド県の北緯48度・東経92.07度、標高1152mの半砂漠地帯にあり、同県のマンハン郡モンゴル語版英語版ボヤント郡モンゴル語版英語版ミャンガド郡モンゴル語版英語版ドゥルゲン郡モンゴル語版英語版チャンダマニ郡モンゴル語版英語版の境界に位置する。面積は1852km2で、形状は長さ72km、幅27kmで南北に細長く、最大深度は4.4m。湖内には大小10以上の島があり、最大は面積400km2のアク・バシ島[1][2][3]

アク・バシ島より西をウルト・ダライ湖と呼び、ホブド川が流入している。ほかに、ボヤント川モンゴル語版(Buyant River)、ツェンヘル川が流入する。アク・バシ島より東をホイト・ダライ湖と呼び、こちらからチョノハライハ川(Chono Kharaikh gol)が流出し、ハル湖モンゴル語版英語版へ注ぐ[1][2]

湖の周囲は半砂漠草原地帯で、北東側は砂丘となっている。西岸のホヴド川河口の三角州湿地帯であり、自動車は通行困難である。西岸の近隣にホブドの街が存在する。湖面は11月から4月の間は結氷する[1][2][4]。冬季は凍結した湖面を利用して遊牧民と家畜が湖内の島へ渡り、広大な牧草地として利用している。アク・バシ島にはが繁茂しており、家畜の餌になっている[5]

ハル・ウス湖に生息するサカツラガン

湖にはサカツラガンメジロガモカオジロオタテガモゴビズキンカモメなどが生息しており、1999年ラムサール条約に登録された(登録番号976)[6]。また、周辺域を含めてモンゴル政府によりハル・ウス湖自然公園英語版に指定され、自然複合保護区となっている[1]

鳥類、植物、魚類、爬虫類、昆虫など多様な野生生物の宝庫となっており、特に鳥類は240種以上が営巣、産卵する。渡り鳥も含めると360種類以上の鳥が見られ、白鳥越冬地にもなっている。モンゴルの希少鳥類であるペリカンも約110-120羽ほどが主に夏に生息するが、密猟が横行していることから現地政庁による保護活動の取り組みがある[3][5][7]

中国語の史料にはしばしば「黒水湖」の名称で登場するが、これはモンゴル語でХар(ハル)が黒、Ус(ウス)が水を表すことに由来する。ただし実際の湖水は黒ではなく透き通っており、これはモンゴル語のハルには黒のほかに透明という意味が含まれるためである[1][8]

湖水の変動

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ホヴド川やアチト湖モンゴル語版英語版、ハル湖、ドルゴン湖ヒャルガス湖アイラグ湖とはザブハン川など河川や水路で接続され、一体の内陸流域を形成している。これらは水深が浅く、流入河川のわずかな水量の変化に伴い湖面の面積が変動する[9]

モンゴルの大きな湖の水位は1960年代前半から1990年代半ばまで上昇していたが、近年は低下する傾向にあり、ハル・ウス湖は2001年から2009年までに32cmの低下が見られた。水量は安定しているが若干減少する傾向にある[10]

ホブド川ではエルデネブレン水力発電所(Erdeneburen hydropower plant)の建設が計画されており、貯水池などの整備により周辺の湿度を人工的に上げることでホブド川やハル・ウス湖周辺の降水量増加をもたらし、牧草地帯の土壌再生に好影響を与えることが期待されている[11]

ハルオス湖の水収支[12]
(水収支量の単位: mm/年)
地表面での流入 地表面での流出 地下水
流入量-流出量
滞留時間
(年)
降水 表面流 蒸発 表面流
56.4 1,979.2 942.7 675.3 -417.6 1.1

脚注

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  1. ^ a b c d e f 『世界地名大事典』(2017)。
  2. ^ a b c d 『日本大百科全書』(1988)。
  3. ^ a b ホブド県(県の紹介シリーズ 11) - 国営モンツァメ通信社、2018-08-17(2022.11.29閲覧)。
  4. ^ 『マイペディア』(1994)。
  5. ^ a b 石井祥子、奈良由美子稲村哲也、高橋博文、スヘー・バトトルガ、鈴木康弘 "モンゴル西部の地方都市と遊牧社会における暮らしと自然災害 ─ホブド県における現地調査報告" 放送大学研究年報、第36巻、2019年、101、105頁。
  6. ^ Har Us Nuur National Park | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (1999年4月6日). 2023年4月6日閲覧。
  7. ^ ペリカンの保護活動に取り組む - モンゴルの声, 2021-03-23(2022.11.29閲覧)。
  8. ^ 蟻川『世界地名語源辞典』(2003)。
  9. ^ 『ブリタニカ 19』(1991)。
  10. ^ 日モ環境ソニン vol.4 北海道大学大学院環境科学院グローバルCOEプロジェクト支援ユニット 宮崎真、吉村暢彦、2010年10月、2-3頁。(2022年11月29日閲覧)
  11. ^ 西部の地域活性化 電力安定供給を担うエルデネブレン水力発電所 - 国営モンツァメ通信社、2022-05-17(2022.11.29閲覧)。
  12. ^ ゴンボ・ダワー、ダムバラブジャー・オユンバータル、杉田倫明 "モンゴル国の地表水" 『モンゴル環境ハンドブック』、モンゴル環境ハンドブック編集委員会編, 42-54頁:52頁, 2007.01。RAISE Project(北東アジア植生変遷域の水循環と生物・大気圏の相互作用の解明)にて公開。

参考文献

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  • 『世界地名大事典 2 アジア・オセアニア・極2』 朝倉書店、2017年、1540-1541頁「ハルオス湖」項(島村一平著)。
  • 『日本大百科全書 19』 小学館、1988年、98頁「ハラ・ウス湖」項(吉田順一著)。
  • 『【新訂】マイペディア 小百科事典』 平凡社、1994年、1140頁「ハラウス(湖)」項。
  • 『ブリタニカ国際大百科事典 19』 TBSブリタニカ、1975年初版/1991年第2版改訂、448頁「モンゴル」項。
  • 蟻川明男著 『三訂版 世界地名語源辞典』、古今書院、2003年、308頁「ハルウス湖」項。

関連項目

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