ハリヨ
ハリヨ | ||||||||||||||||||||||||
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Gasterosteus aculeatus subsp.
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Gasterosteus aculeatus subsp. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ハリヨ |
ハリヨ(針魚 Gasterosteus aculeatus subsp.[1])は、トゲウオ科に分類される淡水魚の一種。
ハリヨの学名については、G. microcephalusあるいはG. aculeatus microcephalusが付けられてきた。その後、ハリヨは北米のカリフォルニアに生息するG. a. microcephalusとは異なった独自の進化を遂げたと推測され[2]、独自の学名を与える考えも提唱されているが[3]、現時点で適用すべき学名はない[1]。
分布
[編集]日本固有亜種と考えられ[1]、昭和初期までは滋賀県、岐阜県、三重県に生息地があったが、現在では滋賀県東部と岐阜県西濃地区、岐阜地区の平野部の湧水地のみで生息が確認されている[4]。岐阜県の養老郡養老町の養老山地からの伏流水が湧き出す津屋川が、生息地の一例である[5]。三重県では1950年代に絶滅した[6]。滋賀県米原市の河川では、人為的に放流されたと見られる同じトゲウオ科の陸封性イトヨと交雑した個体と置き換わり、別に飼育していたものを除きハリヨが絶滅していることがわかった。移入により兵庫県にも生息している[7]。
形態
[編集]全長5cm前後の小魚で、最大7cm程度[6]。体は木の葉のように左右に平たい。背中には背びれの棘条が3本離れて発達し、さらに腹に2本、尻びれ付近にも1本とげがある。鱗はないが、胸びれの周囲にトゲウオ科特有の鱗板があり、若い個体は2-3個ほどだが成長すると5-7個ほどに増える。若い個体やメスは黄褐色をしているが、成熟したオスは体が青緑っぽくなり、のどから腹部にかけて橙色の婚姻色を発現する。
生態
[編集]年間の水量が一定した綺麗な湧水地や、その周辺の流れの緩やかな河川に限定して生息し、水草の生い茂った水深20-50cmの浅瀬に生息する。清浄な湧水のあることは生息環境の必須条件で、10-18℃の低水温を好み、水温20℃を超える場所では生息できない。同属種のイトヨには海と川を回遊する個体群が存在するが、ハリヨは回遊せず、一生を通して淡水域で生活する。食性は肉食性で、小型の甲殻類や水生昆虫などを捕食する。
産卵期は3-5月が中心であるが、ほぼ周年にわたって繁殖活動が見られる生息地もある[6]。婚姻色が出たオスは縄張りを作り、同種のオスを激しく追い払う。同時にオスは縄張り内の川底に穴を掘って水草の根などを集め、トンネル状の巣を作り、メスを誘って産卵をおこなう[8]。オスは産卵後も巣に残って卵を保護する。寿命は1-2年で、繁殖期が終わるとほとんどが死んでしまう。
保全状態評価
[編集]絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
開発による湧水地の減少や川の汚染で絶滅の危機にあり、環境省によって絶滅危惧IA類に選定されている[9]。生息地そのものが天然記念物に指定[10]されているところもあるが、分布域の各自治体で保護区を設けて保護活動を行っており、多くの自治体において条例で捕獲が禁止されている[11][12]。また、小学校や地域団体の自主活動としてもハリヨと清流を守ろうという動きがあり、積極的に河川の清掃などが行われている。しかし、愛好家や業者による密漁捕獲によって減少している[13]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 中坊徹次, 藍澤正宏, 上皇陛下『日本産魚類検索 : 全種の同定』(第3版)東海大学出版会、2013年、2440頁。ISBN 9784486018049。 NCID BB11928524 。
- ^ ハリヨの系統的位置と遺伝的多様性, p. 61-73.
- ^ トゲウオ科魚類の分類の現状と問題点, p. 23-45.
- ^ 森誠一「魚と人を巡る水環境―ハリヨのこれまで、いま、これから」『水資源・環境研究』第1994巻第7号、水資源・環境学会、1994年、22-29頁、doi:10.6012/jwei.1994.22、ISSN 0913-8277、NAID 130003632033。
- ^ “ダーウィンが来た(242回 泉の珍魚 卵を盗んでハートも盗め!)”. NHK・ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜 (2011年8月21日). 2011年9月25日閲覧。
- ^ a b c 川那部浩哉, 水野信彦, 桜井淳史『日本の淡水魚』山と溪谷社〈山渓カラー名鑑〉、1989年、438-441頁。ISBN 4635090213。 NCID BN03953553 。
- ^ “ハリヨの固有種、交雑で危機 滋賀・米原地蔵川”. 中日新聞. オリジナルの2010年5月19日時点におけるアーカイブ。 2018年12月19日閲覧。
- ^ 長田芳和, 吉村智子, 森誠一「ハリヨ(トゲウオ科)の求愛行動〔英文〕」『大阪教育大学紀要 第III部門:自然科学』第37巻第1号、大阪教育大学、1988年8月、29-36頁、ISSN 03737411、NAID 110002961821。
- ^ “環境省レッドリスト2020の公表について”. 環境省. 2020年3月27日閲覧。
- ^ “大垣市の魚 ハリヨ”. 大垣市. 2017年3月17日閲覧。
- ^ “ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例”. 滋賀県. 2020年3月31日閲覧。
- ^ “岐阜県希少野生生物保護条例の概要”. 岐阜県. 2020年5月1日閲覧。
- ^ 森誠一, 小北智之, 松田征也「滋賀県ハリヨの危機」『魚類学雑誌』第63巻第2号、日本魚類学会、2016年、148-152頁、doi:10.11369/jji.63-148、ISSN 0021-5090、NAID 130007382984。
参考文献
[編集]- 後藤晃, 森誠一『トゲウオの自然史 : 多様性の謎とその保全』北海道大学図書刊行会、2003年。ISBN 4832980416。 NCID BA62192797 。
- 渡辺勝敏「ハリヨの系統的位置と遺伝的多様性」『トゲウオの自然史-多様性の謎とそのと保全-』、北海道大学図書刊行会、2003年、61-73頁、NAID 10030350696。
- 酒井治己、矢部衛「トゲウオ科魚類の分類の現状と問題点」『トゲウオの自然史-多様性の謎とそのと保全-』、北海道大学図書刊行会、2003年。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ハリヨ 国立環境研究所 侵入生物DB