ハイリックス
ハイリックス(英: hylics)は、物質主義者たち・唯物論者たちを意味する言葉[1][注 1]。単数形はハイリック(hylic 物質主義者)であり[1]、その同義語はサーキック(sarkic 肉体主義者)、ソマティック(somatic 身体論者)など。語源はギリシャ語の「ヒュレー」(hyle 物質)。
ハイリックの対義語はサイキック(psychic 霊能者・精神主義者・超能力者)であり、語源はギリシャ語の「プシュケー」(psyche 魂)。
グノーシス主義的な信仰体系の中において、ハイリックス(hylics)とはソマティックス(somatics)とも呼ばれる者たちであり、人間の三種類の中で最下位だった。他の二種類はサイキックス〔心魂〕とニュマティックス〔霊気〕だった。つまり人類〔人間性〕を形づくっているものとは、物質に束縛されている存在たち〔ハイリックス〕と、物質に宿る心魂たち〔サイキックス〕と、物質に縛られないまたは実体の無い霊気たち〔ニュマティックス〕だった。
ハイリックス〔ソマティックス〕は、完全に物質に束縛されていると見なされていた。物質や物質的世界は悪であると、グノーシス主義者たちによって考えられていた。 物質的な世界は創造主〔デミウルゴス〕によって創られたものである。創造主〔デミウルゴス〕は、とある例では、盲目の狂った神である。その他の例では、反抗的な天使たちの軍勢である。そして物質的な世界とは、霊的な思考〔エンノイア〕に対する罠として創られたものである。隠された知識(グノーシス)に助けられて物質的世界から逃げることは、(霊的な)人間の義務だった[2]。
ハイリックスは人間の形をしているが、食事・睡眠・交尾やクリーチャー的〔獣・生物・怪物・被造物的〕な快適さ等の物質的世界にすっかり入れ込んでいた。そのため、悲運から逃れられないのだと見なされていた。ニュマティックスは、自分は秘奥義〔秘密の知識〕によって物質的世界の悲運から逃げ出しつつある、と認識していた。ハイリックスは理解能力が無い、と考えられていた。
こうした精神的動態についての考察例としては、『ユダの福音書』を参照。これはグノーシス的なテキストとして信じられていた。『福音書』の推定では、イエス・キリストはニュマティックであり、他の非知識的(非グノーシス的)な弟子たちはハイリックである[要出典]。
関連項目
[編集]- 神話 – 精神主義 – 心霊主義 – オカルト
- 精神分析学における自我
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 以下は学術論文からの引用[1]。
『真正な教え』〔真正な言説〕というキリスト教系の文書〔ナグ・ハマディ文書〕にとって、からだとは肉欲から生じるのであり、肉欲とは物質性〔具体性〕から生じるのである。「見えていない」ということは、「完全な闇の中に居て物質的存在である」ということを意味する(マイヤー 2007年, 385ページ) ―― 言い換えれば、ハイリック(物質主義者)である。
原文:"For the Authoritative Discourse, a Christian text, the body comes from lust, and lust from materiality. Being “blind” means “one is in complete darkness and is a material being” (Meyer 2007, 385) — in other words, a hylic (a materialist)."[1]
出典
[編集]- ^ a b c d Chalquist 2010, p. 59.
- ^ Freke, Timothy (2001). Jesus and the Lost Goddess: The Secret Teachings of the Original Christians. Three Rivers Press. ISBN 978-1-4000-4594-5
参照文献
[編集]- Chalquist, C (2010). “"Hidden in What Is Visible": Deliteralizing the Gnostic Worldview”. Jung Journal (Taylor & Francis, Ltd.) 4 (4): 46-64. doi:10.1525/jung.2010.4.4.46.