ハイダラーバーディー・ビリヤニ
ハイダラーバーディー・ビリヤニ | |
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ハイダラーバーディー・ビリヤニ | |
発祥地 | インド |
地域 | ハイデラバード |
主な材料 |
ハイダラーバーディー・ビリヤニ(Hyderabadi biryani)、あるいはハイダラーバーディー・ドゥム・ビリヤニ(Hyderabadi dum biryani)はインドのハイダラーバード(ハイデラバード、以降都市名はこちらで表記する)由来のビリヤニのスタイルである。バスマティとヤギ肉にスパイスをふんだんに使って調理した料理で[1]、独特の弱火によるドゥム・プクトと呼ばれる調理法で作られている。ハイデラバードのニザームの食卓で生まれた料理であり、ハイデラバード料理とムガール料理の要素を組み合わせたものである。現在ではハイダラーバーディー・ビリヤニはハイデラバード料理を代表する一皿になっており、ビリヤニといえばハイデラバードと評される[2]。
歴史
[編集]ハイデラバードは1630年代にムガール帝国によって征服され、ニザームによって統治された。ムガール料理の伝統が土着の料理と結びついてハイデラバード料理が生まれた[3] :92。地域の民話によれば、ハイダラーバーディー・ビリヤニは18世紀半ばに初代ニザームであるニザームル・ムルクのシェフが狩りの遠征のさなかに生み出したものという[4][5]。1857年にデリー包囲によってムガル帝国が崩壊すると、ハイデラバードは南アジア文化の中心に躍り出た[6][7]。このことはハイダラーバーディー・ビリヤニに様々な革新をもたらす結果となった[8][9]:viii [10]。
起源
[編集]ハイダラーバーディー・ビリヤニの正確な起源ははっきりしていない。伝説ではニザームのシェフの発明ということになっているが、このビリヤニはアラブ人商人たちによって南アジアにもたらされたピラフの一種をもとに生まれた南インド起源の料理といわれている。プラオは中世インドの兵糧であったかもしれない。兵士たちは米と何かしら手に入る肉を一つの鍋で調理したものを食べたようである。「プラオ」と「ビリヤニ」の差はあいまいなものである[11][12]。
食材
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ほかのインド料理とともに供されるハイダラーバーディー・ビリヤニ(左)
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定番の付け合わせ:ミルチィ・カ・サーランとライタ/ダヒ・チャツネ
基本の食材はバスマティ、ヤギ肉(鶏肉や牛肉になることも)、ダヒ、フライド・オニオン、そしてギーである。使われるスパイスはシナモン、クローブ、カルダモン(elaichi)、ベイリーフ、ナツメグ、パパイヤペースト、キャラウェイ(shahi jeera)、ナツメグの皮(javitri)、スターアニス、レモン、そしてサフラン、パクチー、そして付け合わせである[5]。
タイプ
[編集]ハイダラーバーディー・ビリヤニには生のカッチー(kachchi)・ビリヤニと、調理したパッキー(pakki)・ビリヤニの二つのタイプがある[13]。
カッチー・ゴーシュト・キ・ビリヤニ
[編集]カッチー・ビリヤニにはkachchi goshtというスパイスに一晩以上つけてからダヒに浸した生肉が使われる。ハンディ(handi)という容器の中に香り高いバスマティと生肉の層を交互に重ね、小麦粉を練った生地[1]で容器を密閉してから調理する。この記事は容器内の水分を調整し、また圧を加えて香りを閉じ込めるためのもので[1]ダム・スタイル[1](dum)と呼ばれる。この方法は難しい方法で、肉への火の通り方を調節するために時間と温度に細心の注意を払う必要がある[14][15]。
付け合わせ
[編集]ビリヤニの定番の付け合わせにはダヒ・チャツネ やミルチィ・カ・サーラン(青唐辛子のカレー[16])があり[17]、ライタもよく添えられる[16]。一般的な副菜にはバガール・エ・バインガン(ナス料理)がある。玉ねぎやニンジン、キュウリ、そしてくし形に切ったレモンが入ったサラダもある。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c d 香取薫『家庭で作れる南インドのカレーとスパイス料理』河出書房新社、2015年7月2日、72頁。ISBN 4309285325。
- ^ 辛島昇、大村次郷『カラー版 インド・カレー紀行 (岩波ジュニア新書)』岩波書店、2009年6月19日、90頁。ISBN 4005006299。
- ^ Collingham, Lizzie (2006). Curry: A Tale of Cooks and Conquerors. Oxford University Press. ISBN 978-0-19-988381-3 2 March 2021閲覧。
- ^ Rao, Nagarjuna (6 May 2018). “Which is the world’s best biryani?”. Gulf News 1 March 2021閲覧。
- ^ a b Colleen Taylor Sen (2004). Food culture in India. Greenwood Publication. p. 115. ISBN 0-313-32487-5 2011年10月12日閲覧。
- ^ “The courtesans of Hyderabad & Mehboob Ki Mehendi”. The Times of India. (23 December 2012). オリジナルの10 September 2015時点におけるアーカイブ。 1 March 2021閲覧。
- ^ Jaisi, sadiq; Luther, Narendra (2004). The Nocturnal Court: The Life of a Prince of Hyderabad. Oxford University Press. p. xlii. ISBN 978-0-19-566605-2
- ^ Mohammed, Syed (24 July 2011). “Hyderabad through the eyes of a voyager”. The Times of India. オリジナルの10 September 2015時点におけるアーカイブ。 27 December 2011閲覧。
- ^ Lynton, Harriet Ronken (1987). Days of the beloved. Orient Blackswan. ISBN 978-0-86311-269-0
- ^ Lanzillo, Amanda Marie (8 April 2020). “Hyderabadi Cuisine: Tracing its History through Culinary Texts”. sahapedia.org. 1 March 2021閲覧。
- ^ Karan, Pratibha (2009). Biryani. Random House India. pp. 1–12, 45. ISBN 978-81-8400-254-6
- ^ Sanghvi, Vir. “Biryani Nation”. 17 August 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。24 August 2014閲覧。
- ^ “Metro Plus Chennai / Eating Out : Back to Biryani” (2005年6月13日). 2009年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月18日閲覧。
- ^ “There's more than just one type of Hyderabadi biryani, and here's how different they are” (英語). The News Minute (2017年4月27日). 2020年12月7日閲覧。
- ^ Latif, Bilkees (2000). Essential Andhra Cookbook. Penguin. ISBN 9788184754339 2 March 2021閲覧。
- ^ a b 香取薫『家庭で作れる南インドのカレーとスパイス料理』河出書房新社、2015年7月2日、76頁。ISBN 4309285325。
- ^ “Telangana / Hyderabad News : Legendary biryani now turns 'single'” (2005年8月18日). 2007年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月18日閲覧。
参考文献
[編集]- A Princely Legacy, Hyderabadi Cuisine by Pratibha Karan. ISBN 81-7223-318-3, 978-81-7223-318-1
- Elegant East Indian and Hyderabadi Cuisine by Asema Moosavi. ISBN 0-9699523-0-9
- The Hindu: Hyderabadi Biryani popularity and its variants
- The Story of Biryani: How This Exotic Dish Came, Saw and Conquered India!
外部リンク
[編集]- ウィキメディア・コモンズには、ハイダラーバーディー・ビリヤニに関するカテゴリがあります。