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ノート:非可換幾何

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分からない箇所があるので質問します。

(1)

一方、関数解析学などのいくつかの場面で、あるいは数理物理学などの応用において
「非可換な空間」上の関数たちを表すべき代数系として非可換な環があらわれる。

とありますが、「非可換な空間」が存在するかのように聞こえますが、 そのような空間は実際存在して、構成できるのですか?英語版では、

For other cases and applications, including mathematical physics and functional analysis,
non-commutative rings arise as the natural candidates for a ring of functions on some non-commutative "space".

とあります。これは、「非可換な環ができれば、それは非可換な空間を作ったと思えるだろう」 ということを主張しているので、若干意訳し過ぎのような気がします。

(2)

「非可換空間」をどう定義しようとも、普通の位相空間(これは普通可換な環との対応がつくことが知られている)と
本当に同じようなものが得られるというわけではない。

この文で、「同じようなもの」が何を指すのかが不明です。 英語版を見ると

"Non-commutative spaces", however defined, cannot be too similar to ordinary topological spaces,
as these are known to correspond to commutative rings in many important cases.

です。これも、ちょっと意味不明です。 何をもって、"similar"といってるのかが分かりません。 as 以下の意味で、"cannot be similar"といっているとすると、「非可換な空間」は非可換な環と 対応付けられないということになり、先に言ったことに矛盾します。 私は非可換幾何の専門家ではないのでよく分かりませんが、専門家以外の人が読んでわかるように もう少し具体的に書いた方がよいと思います。

(3)

非可換な C*-環はしばしば非可換空間とよばれる。
これはゲルファント表現によって可換 C*-環が局所コンパクト空間の双対と見なせることの連想からきている。
一般には任意の C*-環 A に対し、その既約表現のユニタリ同値類 Â を対応させることができる。

ここの第一・二文目まではいいのですが、第三文目「一般には、……」は話の流れが違います。 第二文目は可換C*-環と局所コンパクト空間との対応を言っているので、ある意味可換なC*-環の分類です。 なので、第三文目に来るべきは、可換とは限らないC*-環の分類についてですよね。 英語版にあるとおり、

In general, one can associate to any C*-algebra S a topological space Ŝ; see spectrum of a C*-algebra.

とした方が流れとしては自然な気がします。 その後で、ユニタリ同値類がどうのこうの、というほうがいいと思われます。

(4)「非可換な可微分多様体」の節についてです。 非可換な空間の非可換性から起因する何が、ベクトル場や微分形式を考える際に障害となっているのか、 またそれを克服するために何をいかに扱うべきかがよくわかりません。 文章を読んでいると、「可換な場合と同じでは?」と思えてしまいます。 例えば、

非可換な場合には、問題になっている代数が非可換となり、微分形式を取り扱うためには p-形式すべてと、
それらの間のウェッジ積からなる次数付きの外積代数束と、その切断を考えることになる。
外微分は次数を一つ上げる反微分で二乗すると零になるようなものとしてとらえられることになる。

は、「非可換な場合には、問題になっている代数が非可換となり」の部分がないと、 可換の場合とまるっきり同じだと思うのですが。 非可換になると困る部分が何なのかが、よく分かりません。

(5)

古典力学のシンプレクティック位相空間が位置作用素と運動量作用素で生成されるような

非可換の位相空間へと変形される。 「シンプレクティック位相空間」、「非可換の位相空間」とありますが、たぶん誤訳ではないでしょうか。 英語版では、"symplectic phase space", "noncommutative phase space"とあります。 "phase space"とは、数学では「相空間」、物理では「位相空間」と訳をしますが、 数学で使われる位相が入った空間ではなくで、力学(系)が定義される空間を指します。 なので、「シンプレクティックベクトル空間」、「非可換な空間」などと訳す方が適切ではないでしょうか。

また、"symplectic phase space"を「シンプレクティック多様体」と訳してしまうと、 幾何学的量子化が多様体上で出来るのかが問題となるので、注意が必要でしょう。

(6) 

多様体上に葉層構造があたえられたとき、同じ葉の上にある点を同一視して得られる葉の空間は
しばしば古典的な幾何学においては病的と見なされる空間になってしまう。

「古典的な幾何学」はどのような幾何学を指しているのでしょうか? 古典力学と量子力学という意味で、「古典的な幾何学」という言葉を使っているのならば、 非可換幾何が目指す所は、「量子力学と関係のある幾何学」ではなくて、そのものズバリ「幾何学の量子化」です。 もし幾何学の量子化の完成形がある程度出来ていれば、 我々が現在普通に研究している微分幾何などは古典的といってもいいかも知れません。 しかし、現状はそうではないと思うのですが、専門的にはどうなのでしょうか?

また、「病的とみなされる」とは具体的にはどのような状況ですか? 専門家でない人にとっては、状況をイメージすることが難しいので、 もう少し具体的記述していただけるとうれしいです。 --以上の署名のないコメントは、130.54.130.67会話/Whois)さんが 2006年12月8日 (金) 18:47 (JST) に投稿したものです(wikify too.Makotoy 2006年12月8日 (金) 15:59 (UTC)による付記)。[返信]

コメントありがとうございます。文意を損なわない範囲で整形させていただきました。はじめに断っておくと、僕は専門家ではないので「専門家による解説」はできませんし細かいところで間違ったことを書くかもしれません。下に書いた説明でわかりにくいところやおかしなところはぜひご指摘ください。
(1) については、非可換な空間をかっこでくくっていること、直後の文で「本当に同じようなものが得られるわけではない」、その次の文で「中間項としてのみ存在することになる」などと断りを入れているなどから、『「非可換な空間」が存在するかのように』は受け取られないだろうと思っていました。ところで「非可換な空間は存在するか?」という問題にはなるべく踏み込まないような記述に下つもりですし、今もできればそうしたいと考えています。つまり、こういった『絵にかけない図形』のような抽象的な概念についてそれが実在するかしないかという問いは微妙な問題で、多分専門家の間でも非専門家の間でも意見が一致しないだろうと思います。また、こういった抽象概念の実存に関する問題はあまりに神学論争めいていて、非可換空間が存在すると言い切ってみても、逆に存在しないと言い切ってみてもそれで数学的に(あるいは物理的に、哲学的に)何か有意義なことが直ちに従うとも思えません。今のところの僕自身は『非可換な空間』はパラダイムとして「存在」し、また個々の非可換空間は何らかの現象・状況を表していて、これらは正三角形の概念や物が無限個並んでいるという状況と同じぐらいに確からしいことだろうと思います。そういうわけで、「存在する・しない」という言い方はなるべくしたくありません。また、「非可換な環を作為的に作ってそれを非可換空間と呼ぶ」というのもできればさけたいところです。こういう言い方は非可換幾何学にでてくる非可換間がそれぞれなにがしかの必然性を持って表れてきていることを覆い隠してしまっているからです。
(2) については、うまい言い方が見つからなかったので現在の訳文になってしまったというところです。ここはあまり元の英文にこだわらない方がいいかもしれません。というのは、I型と呼ばれるクラスの作用素環はいくつかの意味で可換環と『ほとんど同じ」ものと見なされているからです(可換環 A と A を係数にする行列環 Mn(A) を区別しない方がいいというふうに)。
可換環との対応がつくことが知られている普通の幾何学的対象に対し、非可換な環はそこからの変形を表していると見なすことができる
はどうでしょうか?
(3) については、ここでのC*-環のスペクトルとは点集合としてはまさにユニタリ表現の同値類の集合と同じになります。C*-環のスペクトルの記事がまだないのでこの記事で説明してしまうことにしました。また、スペクトルを位相空間と見なせることはあえて省いてあります。この記事の現在のレベルではC*-環 A と、位相空間としてのAのスペクトル上の連続関数のなす可換環を、読者がごっちゃにしてしまったり、A がまさにそのスペクトルを表す環だと読まれてしまうのをさけたかったからです。
(4) についは、恥ずかしながらなぜこの記述にしたのか自分でもわかりません。ここも下の英文にあまりとらわれない方がよさそうです。
微分形式の環と、外微分の概念を非可換環に対して意味を持つように定式化する必要がある
あたりがいいかと今は思います。可微分多様体上の微分形式を定義するときに使う外戚代数(ウェッジ積)の構成を、関数環が非可換なときに強引に適用するとド・ラーム複体として期待されるものよりも小さなものができてしまいます。
(5) については、誤訳というか、phase spaceの訳語にとして「位相空間」を使ってしまっています。純粋数学よりの現在の文の中では「相空間」の方が自然ですね。「ベクトル空間」と言い切ってしまう必要はないかと思います。僕が誤解しているのかもしれませんが、いわゆる「量子化」によって得られる非可換空間は別に一点での接空間以上の情報を持っているはずだからです。
(6) については、「古典的な空間」で、絵に書けるような曲線・曲面といった図形や可微分多様体として表される図形のことなどを考えています。確かにこれらを「古典的」といってくくってしまうのは語弊があるのかもしれません。「通常の図形」ぐらいの方がいいでしょうか?あと、葉層構造と葉の空間については個別の記事がまだできておらず未整備の状態で、この記事に具体的な説明を入れた方がいいのかわからなかったので現在のような記述にしてしまいました。病的な空間というのは、葉層構造が入った多様体の上で葉たちの代表系を可測にとることができなかったり、普通の空間(例えば実閉区間 [0, 1])への可測写像の像がかならず測度 0 になってしまったり、「体積形式」にあたる微分形式を考えようとしてもかならず恒等的に 0 になってしまうように見えたり、ということです。--Makotoy 2006年12月8日 (金) 15:59 (UTC)[返信]
とりあえず問題の部分を直してみました。まだ手を入れる余地はたくさんあるので引き続きコメントをお願いします。--Makotoy 2006年12月12日 (火) 09:07 (UTC)[返信]