ノート:化膿レンサ球菌
呼び名
[編集]細菌学での正式な和名がより正当とご判断されて、移動されたようですが、臨床分野では、Group A Streptococci(Streptococcus pyogenes)という記載のほうが主流のようです。
細菌についての記載なのだから細菌学の用語がより「正当」である、という理解でよろしいでしょうか?となると臨床家は言葉の使い方を誤っていることになりますか(それも国際的に)?Avec
- 基本的な路線として、ある病原微生物にとって「ヒトに対する病原性がある」というのは、その生物の全体的な特徴から見て「一側面」にすぎない、という考え方を、私はしています。そのため、概念上は「生物として」が上位、「病原性」が下位、という位置づけから、優先順位からは細菌学分野のものを優先しました。
- 臨床分野において独自の呼び方をしている、というのは別に化膿レンサ球菌に限ったことではないです。しかし、かと言って、臨床家の用法が「間違っている」というわけではありません。病原菌の鑑別同定という立場からは、その病原菌の「生物学的な種」までを決める必要は必ずしもなく、疾患との結びつきから他の菌との鑑別可能なレベルまでの作業で十分なので、例えばCNSみたいに「コアグラーゼがないブドウ球菌」とかの、引っ括めて扱うようなカテゴライズも行われてます。それはそれで実用的だし、理に適ったやり方だと思います。「臨床家が言葉の使い方を誤っている」というわけではなく、その分野で扱われているものに対して、「どこまで同定されているか」という観点において、むしろ厳密な使い方をしているとも言えます。
- 一方、話をこの項目に戻すと、レンサ球菌属はそもそもの生物学的分類が、臨床における「便宜的な」分類法(特に溶血性とランスフィールド群別)とかなり密接に結びついて行われてきたという歴史的な側面があるので、ちょっと厄介です。しかし「A群β溶血性レンサ球菌」という方式の表記法は、あくまで鑑別性状を列記したものであり、生物種(=学名や和名)と必ずしも一対一対応するとは限りません。細菌学的には「ランスフィールドA群」「β溶血性」というのは、あくまで血清学的、生化学的性状であって、例えば「コアグラーゼ陽性」などと似たようなものです。これが生物種との対応がないCNSのようなケースだと、CNSと表皮ブドウ球菌などの個別の菌との両方を並立することも可能でしょうが、A群β溶血性レンサ球菌と化膿レンサ球菌のように一致しているものであれば、同じ内容の記事を二つ作ることになりかねないため、望ましいとは言えません。そういった点からも、実は今回の移動については少し迷いましたが、それでもやはり細菌という「生物」の名前を冠した項目であるため、生物学上の名称の優先度を高くする方が妥当だと判断した次第です。
- ただし、この項目内でも実際の感染症についての節において、「GAS」あるいは「GAS感染症」という表記を用いることは、その(各論的な/あるいは下位の)分野での用例として妥当であり、むしろその方が正確で望ましいと考えています。以前私も執筆に参加しましたサルモネラ#病原性においては、食品衛生分野での呼称の扱い方に、このような使い分けを行っております。
- 以上、ご回答になれば幸いです。--Y tambe 2006年6月1日 (木) 05:09 (UTC)
- 丁寧なご回答、ありがとうございました。やはり臨床家の視点からでは「生物としての」細菌よりも「病原体としての」細菌という側面に偏る点があるようですね。この項目の内容も、私が書いた部分はほとんど「症状・治療」の部分だけといってもいいくらいですから、この部分は「化膿レンサ球菌感染症」なり「溶連菌感染症」なりに分割したほうがいいかもしれません。
- 臨床というのは学問といっても実学ですから、論理的には必ずしも最善ではなくても、使い慣れたもの、使いやすいものは使い続けてしまう傾向があるようです。GAS→S.pyogenes、GBS→S.agalactiaeに用語を修正しても、non-A,non-B Streptococciの感染症はまれなので、特に臨床的も困ることはなさそうですが。
- 他にはDown症候群→21trisomyもなかなか一般化しません。用語の厳密化という点では、SARS→コロナウイルス性急性間質性肺炎、AIDS→レトロウイルス性T細胞減少性免疫不全症とでも言い換えたほうがよさそう(「症候群」は原因不明な疾患群を、ひとまず似通った症状・所見からひとくくりにする際の用語です)ですが、これも一般に浸透しすぎていて、用語が変更されることは当面ないでしょうね。Avec
(インデント戻します)コメントありがとうございました。例えば、英語版では、やはり細菌についての内容を本項目で解説し、疾患についてはまた別の項目で、という形の構成になっています。ただその場合も、完全に分離・分割するのではなくて、細菌の方にも疾患についてのサマリを、疾患の方にも病原体についてのサマリを、それぞれ書くという形にしています。日本語版でも、同じようなことをもくろんでいて、炭疽菌やコレラ菌、赤痢菌あたりで、割とそういう形に進めています。
ただ、私はAvecさんとは反対に基礎系なため、あまり臨床的に突っ込んだことが書けなかったため、臨床的な内容の部分はスタブのまま放置してた次第でして。最近は、化学療法に詳しい参加者の方も現れ、各種抗生物質や治療についての記述も増えつつはあるのですが、残念な事に、肝心の感染症についてのことを書ける臨床系の執筆者が少なかったこともあって、そのままになっている部分が多いです(上に挙げたのの他に黄色ブドウ球菌や、秀逸記事になっているヘリコバクター・ピロリについても、そんな状況です)。お手空きのときにでも構いませんので、是非、これらの記事の共同執筆者として、臨床的な内容についての加筆・修正に参加していただければと思っています。
それから記事名についてですが、分野が変われば呼び方が変わるものは医学生物学に限らず多いです。また、一般大衆が耳にすることの多いマスメディアでの呼び方というのも、ある意味「メディア分野」とでもいうべき分野の呼び方、と言えるかもしれないなあ、などとぼんやりと考えています。(細菌学よりの方に移動させた後で言うのもなんですが)「正式な記事名が何か」というのは、場合によってはいくら議論百出しても答えのでない、ともすれば不毛な議論になることもあると思っていますし、実際、そういう「移動合戦」は他の分野ではしばしば見られてます。私としては、Wikipedia:記事名のつけ方あたりを後ろ盾にしながら(笑)、でも結局は、たかだか「最初の一行に出る名称か、その次の行に出る名称かの違い」なんだから、どこかしらの妥協点を考えつつ進めていく方が、終わりの見えない論争に疲弊して肝心の記事が書けなくなるよりも建設的ではないかなあ、と思ってます。--Y tambe 2006年6月2日 (金) 12:20 (UTC)
記事分割の提案
[編集]なかなか忙しくてあまりいろんな記事は書けていないのですが、Y tambeさんご指摘の炭疽菌、赤痢菌などと同様に、この件も疾患についての部分を分割してみようかと思っています。サマリは例に挙がっている項目のものよりも、もっと簡潔なものにしてはいかがかと思っています。
このような提案をする理由は、「細菌としての『化膿レンサ球菌』」に興味を持って調べようとする利用者と、「化膿レンサ球菌によって起こる『溶連菌感染症』」に興味を持って(こっちは必要に迫られて、かもしれません)調べようとする利用者が、おそらく別であると考えられるためです。細菌学は科学であるのに対し、医学には科学と言い切れる部分と、科学に基づいた実学である部分が存在していると、私は思っています。
細菌学的な内容が非常に充実しているのに対し、臨床的な内容はこれでもかなり簡略に書かれているように思います(私が書いた部分に関しては、資料もほとんどみないで書いているので詳細な記述や参考文献の提出ができていません)。ただ、病院で医者に「溶連菌感染症です」と診断されたから調べてみたくなった、という利用者(人数は多いのではないのでしょうか)にとっては、現状の内容が読みやすいように思われます。ここに、あまり詳細な「サマリ」が入ってしまうと、読みやすさを損なってしまうのではないでしょうか。
一方、細菌としての『化膿レンサ球菌』に興味を持って調べようとする利用者は、おそらくは知的好奇心のために閲覧するものと思われます。そのため、ある程度の基礎知識があるか、その基礎知識を得るためにさらに調べ物をすることを厭わないのではないかと思います。
利用者の側に立てば、細菌としての『化膿レンサ球菌』の項目と化膿レンサ球菌の感染症である『溶連菌感染症』に分割することは有益であると考えています。医師が当該疾患を説明する場合、多くの場合は『溶連菌感染症』と呼んでいると思われるので、感染症の項目のタイトルには溶連菌感染症を用いるのがよいかと思います。Avec 2006年8月23日 (水) 06:36 (UTC)
1ヶ月の間賛否がつかなかったので、分割しました。サマリは当初考えていたよりもまとまりがなくなってしまいましたが・・・・Avec 2006年10月6日 (金) 12:22 (UTC)