ノート:チョウ目
せっかくお書きになってご苦労ですが、ノートに移します。ここは編集者自身の論説を世に問う場ではなく、既に出版された知見を引用を元に再構成する場です。全くそのような文体になっていませんので、書き直しをお願いします。 --Isorhiza 2011年11月7日 (月) 14:52 (UTC)
その境界は曖昧で、形態で分類するには例外が多すぎて、明確に区別することは難しい。その理由として、チョウ目に存在する多数の系統的分枝のうちわずか3上科を擁する1分枝をもって「チョウ」とし、その他大勢をもって「ガ」とする二大別法に系統分類学的根拠が乏しい事が挙げられる。すなわち、「チョウ」の属する分枝を特徴づける形質を列挙することはできるが、「ガ」を特徴づける形質を想定すること自体困難なのである。例えば、「チョウ」の大半は昼行性であるが「ガ」には昼行性のものと夜行性のものの両方が含まれる。また、「チョウ」は休息時に翅を垂直に立てるか水平に開いて止まるかのいずれかであるが、「ガ」には垂直に立てるもの、水平に開くもの、屋根型に畳むものなど様々な休息形態をとるものが存在する。要するに「チョウ」の特徴をある程度定義することはできるが、「ガ」の特徴は「チョウ」の系統を定義する特徴を用いて、消去法で表現することしかできない。系統分類学的に言えば、チョウはガの一部なのである。
見た目が「チョウ」であるのに「ガ」の属す科や属に属しているというアゲハモドキのような例もある。
日本語では「チョウ」と「ガ」をはっきり区別しているが、ドイツ語圏やフランス語圏など、この2者を区別しない言語・文化もある。元来、漢語の「蝶」とは「木の葉のようにひらひら舞う蟲」を意味し、「蛾」とはカイコの成虫及びそれに類似した蟲を意味する言葉であった。そのため、この漢語概念を取り入れた日本語において、そもそも「チョウ」と「ガ」は対立概念ではなかったのである。当然、今日「チョウ」と呼ぶ昆虫を「ガ」と認識することもあったし、逆もまた真である。さらに、「蛾」という語が産業昆虫として重要であり、しばしば民俗的に神聖視されるカイコの成虫がイメージの根底にあることからわかるように、今日のように不快昆虫というイメージもなかった。漢字文化圏で美人の眉のことを「カイコガの触角のような眉」を示す「蛾眉」なる語で示すことにそうした文化的背景がよく表されている。
むしろ日本における今日的な「チョウ」と「ガ」の線引きの起源をたどってみると、英語における "butterfly" と "moth" の線引きと一致し、英語圏からの近代博物学の導入に伴って英語の文化的分類様式が科学的分類法と混在して日本語に持ち込まれたことが推測される。英語と同じゲルマン語派のドイツ語におけるチョウ目の文化的分類様式を英語と比較してみると、日本語で「チョウ」と訳される "Schmetterling" はチョウ目の大型群、すなわち「チョウ」及び大蛾類を併せた概念であり、英語の "moth" に対応する "Motte" はチョウ目の小型群、すなわち小蛾類を指す概念で、英語及び近現代日本語における線引きと明瞭に異なっている。
よく日本の中学生用の国語の教科書に掲載されているヘルマン・ヘッセの短編小説、『少年の日の思い出』で、主人公が友人の展翅板から盗み出すヤママユが、原文が Schmetterling であるが故に「蝶」と訳されていることに違和感を覚えた読者も多いであろうが、それはこうした事情に立脚する。ちなみに、 moth や Motte は元々は毛織物や毛皮を食害する小蛾類であるイガの仲間を指す語であったらしい。今でもドイツ語の Motte の狭義の意味はイガ類を指している。このため、中世以来毛織物が重要な衣料であった西ヨーロッパでは moth-Motte 系統の単語には害虫としての不快感が付きまとっており、この事が明治以降の学校教育における博物学の授業を通じて、チョウは鑑賞に堪える美しい昆虫、ガは害虫が多い不快な昆虫というイメージが日本に導入され、定着したことが根底にある可能性がある。 日本語では、ハエ、ハチ、バッタ、トンボ、セミなど、多くの虫の名称が大和言葉、すなわち固有語である。しかし、この蝶と蛾に関しては漢語である。蝶、蛾もかつては、かはひらこ、ひひる、ひむしなどと大和言葉で呼ばれていた。その際、蝶と蛾は名称の上でも、概念の上でも区別されていなかった。しかし上記のごとく英語圏からの博物学の導入に伴って蝶と、蛾の区別を明確に取り入れたため、両者を区別しない、かはひらこなどの大和言葉はむしろ不都合であった。そこで漢語の蝶、蛾にその意味を当てたわけだが、それも上記のとおり、本来の字義とは異なっている。
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