ノリリスク油流出事故
ノリリスク油流出事故 | |
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現場 | ロシア クラスノヤルスク地方 ノリリスク カイエルカン地区 |
座標 | 北緯69度19分38.0秒 東経87度56分2.6秒 / 北緯69.327222度 東経87.934056度座標: 北緯69度19分38.0秒 東経87度56分2.6秒 / 北緯69.327222度 東経87.934056度 |
発生日 | 2020年5月29日 |
原因 | #原因を参照 |
流出詳細 | |
流出量 | 約21,000 t |
流出面積 | 約350 km2 |
ノリリスク油流出事故(ノリリスクあぶらりゅうしゅつじこ、露: Утечка дизельного топлива в Норильске, 英: Norilsk oil spill)は、ロシア・ノリリスクで発生した油流出事故である[1]。
概要
[編集]2020年5月29日の午後12時45分頃(現地時間)、クラスノヤルスク地方の都市、ノリリスクのカイエルカン地区において、ノリリスク・ニッケルの子会社、ノリリスク・タイミル・エネルギー・カンパニーによって運営されている第3火力発電所(露: ТЭЦ-3, 英: TETs-3)の緊急時用地上燃料貯蔵タンク5号基(露: Аварийный резервуар № 5, 英: emergency diesel tank No.5)から燃料が流出した[2][3][4][5][6][7]。
流出したのは、軽油や潤滑油であり、流出総量はおよそ21,000トンに及んだ。そのうち、およそ15,000トンはアンバルナヤ川の支流のダルディカン川 (Далдыкан) に流出し、およそ6,000トンは地盤面に流出した[8][9][10]。
流出によって環境災害が引き起こされた[11]。油の流出によって汚染された面積は、およそ350平方キロメートルに及ぶ[12]。アンバルナヤ川は赤色に染まった[13]。油の一部は、ピャシノ湖に流れ込んだ[14]。油の流出量としては、1994年にコミ共和国で、石油パイプラインの腐食が原因でおよそ94,000トンの原油が流出した事故に次いで、ロシア史上2番目に大きい[12][15]。
原因
[編集]ノリリスク・ニッケルは、事故後、油流出の発生原因について、永久凍土が融解したことによって、燃料貯蔵タンクの基礎部分を支える支柱が沈下したためであると説明した[16][17]。
2020年11月、ロシア連邦環境・技術・原子力監督庁は、事故の原因について、タンクが粗雑に建設されたことと、タンクの運用段階に違反行為があったことであるとし、タンクの基礎の下部において、永久凍土が融解する兆候が確認されなかったことから、永久凍土の融解によって事故が発生したという可能性を否定した[18][19][20]。
脚注
[編集]- ^ 高倉浩樹ほか (2020年6月22日). “ノリリスクの油流失事故に対する北極域研究者の緊急オンライン懇談会”. 国立極地研究所. 2021年4月25日閲覧。
- ^ Якуцени 2020.
- ^ キャロリン・コルマン (2020年9月21日). “永久凍土の融解、石油流出……地球の炭素貯蔵庫・北極圏に“もたらされた”悲惨な夏”. WIRED. 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Review of May 2020 Catastrophic Tank Failure, HPP-3, Norilsk”. ノリリスク・ニッケル (2020年11月25日). 2021年4月25日閲覧。
- ^ “«Норникель» выплатил 146 млрд рублей штрафа за аварию в Норильске”. コメルサント. (2021年3月10日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Ликвидация последствий аварийного разлива нефтепродуктов на ТЭЦ-3 Норильский никель”. ノリリスク・ニッケル (2020年10月). 2021年4月25日閲覧。
- ^ 秋月悠也 (2020年6月8日). “ロシア:Norilskの燃料漏れ事故で連邦レベルの緊急事態宣言”. 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構. 2021年4月25日閲覧。
- ^ 小柳悠志 (2020年6月7日). “北極圏の軽油流出事故にプーチン氏激怒”. 東京新聞 2021年4月25日閲覧。
- ^ “【解説】永久凍土の融解が原因、ロシア北極圏の燃料流出事故 開く「パンドラの箱」”. AFPBB News. (2020年6月9日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Russia's Nornickel says it will pay for clean-up after fuel spill”. ロイター. (2020年6月5日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Экологическая катастрофа в Норильске: задержаны еще трое человек”. 英国放送協会. (2020年6月10日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ a b Rajendran 2021.
- ^ Olesya Vikulova (2020年6月5日). “The river runs red – catastrophic oil accident in the Russian Arctic”. グリーンピース. 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Norilsk Nickel: Mining firm pays record $2bn fine over Arctic oil spill”. 英国放送協会. (2021年3月10日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Хронология крупнейших случаев разлива нефти и нефтепродуктов в России”. ТАСС. (2020年6月4日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “«Норникель» создаст мониторинг мерзлоты в 2021 году”. コメルサント. (2020年7月2日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ “ロシアの北極圏内での燃料大量流出事故、原因は地盤の永久凍土の緩み。ロシア当局は事態を重視し、石油・ガスインフラ含め、危険建物の総点検へ。温暖化の影響予想以上に大きく(RIEF)”. 一般社団法人環境金融研究機構 (2020年6月10日). 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Technical issues, not permafrost, to blame for fuel spill in Russian Arctic: watchdog”. ロイター. (2020年11月10日) 2021年4月25日閲覧。
- ^ Тимур Батыров (2020年11月10日). “Ростехнадзор исключил таяние мерзлоты как причину аварии под Норильском”. フォーブス 2021年4月25日閲覧。
- ^ “Russian Government Body Links Norilsk Arctic Fuel Spill To Shoddy Construction, Not Permafrost Melt”. ラジオ・フリー・ヨーロッパ. (2020年11月11日) 2021年4月25日閲覧。
参考文献
[編集]- Sankaran Rajendran, et al. (2021-02-15). “Monitoring oil spill in Norilsk, Russia using satellite data”. Scientific Reports (シュプリンガー・ネイチャー) 11. ISSN 2045-2322 .
- Якуцени Сергей Павлович, Соловьёв Иван Андреевич (2020). “РАСЧЁТ УЩЕРБА ОКРУЖАЮЩЕЙ СРЕДЕ В РЕЗУЛЬТАТЕ АВАРИИ НА СКЛАДЕ ГСМ В НОРИЛЬСКЕ”. Географическая среда и живые системы / Geographical Environment and Living Systems (Moscow Region State University). ISSN 2712-7613 .