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ノトスクス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ノトスクス
ノトスクスの生体想像復元図
地質時代
後期白亜紀
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜型下綱 Archosauromorpha
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
上目 : ワニ形上目 Crocodylomorpha
亜目 : ノトスクス亜目英語版 Notosuchia
: ノトスクス科英語版 Notosuchidae
: ノトスクス Notosuchus
学名
Notosuchus Woodward1896

ノトスクス学名Notosuchus)は、アルゼンチンに分布する後期白亜紀地層から化石が産出した、ノトスクス亜目英語版に属する偽鰐類[1]。全長は約1.4メートルで、頭部は上下に高く、吻部が前後に短い[1]哺乳類のような異歯性を示し、門歯犬歯臼歯に類似する多様な歯を有する[1]。食性については動物食性説と植物食性説がある[1]

分類

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ノトスクスは比較的小型で、全長は約1.4メートルに達し、タイプ種ノトスクス・テレストリス (N. terrestris) の選定基準標本は頭骨長約16センチメートルである[1]。化石はアルゼンチンパタゴニアバホ・デ・ラ・カルパ層英語版で発見された。命名された1896年当時、ノトスクスは最初に知られたノトスクス亜目の属となった[2]。タイプ種以外には1957年に未明された第二の種である N. lepidus がいる[3]

特徴

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2008年には N. terrestris の新たな化石が Fiorelli and Calvo (2008) により記載された[4]。同論文中では、著者らはブタに類似した短い鼻を頭蓋骨が支持していたことを提唱した。鼻孔が前側に向くことと骨質の鼻中隔が存在しないことからこの証拠が得られるほか、鼻骨と下顎の表面に走る線はそれぞれ鼻唇筋と下制筋の付着部として機能した可能性が高く見積もられる[5]。加えて、著者らは歯骨の外側の縁に整列した夥しい神経血管孔が存在することを指摘し、これが頬のよううな筋繊維が存在した証拠であると提唱した。突出した鼻は現生のイノシシ科ペッカリー科の哺乳類と同様に地面の臭いを嗅ぎ分けて餌を探すことに用いられ、頬は横からの餌の漏出を阻害して咀嚼を補助した可能性が高い[4]。その後の頭蓋骨の再記載において、ノトスクスの軟組織の増強は最小限に留まるという証拠が示された[6]

なお、ノトスクスが何を摂食したかは諸説ある[1]。食性として従来植物食性が指摘されており、先述した Fiorelli and Calvo (2008) は頭蓋骨の形態からノトスクスの食性について植物食性と判断し、先行研究の指摘を確認している[4]。ただし、Melstrom and Irmis (2019) は、歯の表面の形状の複雑性を定量的に評価するOPCRという指標を用い、ノトスクスのOPCRが絶滅したボヴェリスクス英語版や現生のカイマンよりも低いことを発見した。これに基づき、ノトスクスが植物性の物質を摂食したことを完全に否定したわけではないものの、本属が大部分を動物起源の肉に頼って栄養していたことを Melstrom and Irmis (2019) は論じている[7]

レクトタイプの他に60を超える完全な化石標本と断片標本を対象にネウケン州立自然史博物館が研究を行い、2018年に頭蓋骨と下顎の再記載を発表している[8]。それによればノトスクスの頭蓋骨には性的二形と解釈されうる形態差が存在しており、これを明らかにするためにはさらなる化石標本が必要とされる[8]

出典

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  1. ^ a b c d e f 土屋健『地球生命 水際の興亡史』技術評論社、2021年7月28日、124-125頁。ISBN 978-4-297-12232-4 
  2. ^ Woodward, AS (1896). “On Two Mesozoic Crocodilians Notosuchus (Genus Novum) and Cynodontosuchus (Genus Novum) from the Red Sandstone of the Territory of Neuquen (Argentine Republic)”. Anales del Museo de la Plata, Paleontologia Argentina 6: 1–20. 
  3. ^ Saez, MD (1957). “Crocodiloideos Fosiles Argentinos un nuevo Crocodilo del Mesozoico Argentino”. Ameghiniana 1–2: 49–50. 
  4. ^ a b c Fiorelli, L. E.; Calvo, J. O. (2008). “New remains of Notosuchus terrestris Woodward, 1896 (Crocodyliformes: Mesoeucrocodylia) from Late Cretaceous of Neuquen, Patagonia, Argentina”. Arquivos do Museu Nacional, Rio de Janeiro 66 (1): 83–124. 
  5. ^ Fiorelli, L. E. (2005). "Nuevos restos de Notosuchus terrestris Woodward, 1896 (Crocodyliformes: Mesoeucrocodylia) del Cretácico Superior (Santoniano) de la Provincia de Neuquén, Patagonia, Argentina". 79p. Tesis (Grado) Universidad Nacional de Córdoba, Córdoba.
  6. ^ Barrios, F.; Bona, P; Carabajal, A.P.; Gasparini, Z. (2017). “Re-description of the cranio-mandibular anatomy of Notosuchus terrestris (Crocodyliformes, Mesoeucrocodylia) from the Upper Cretaceous of Patagonia”. Cretaceous Research 83: 3–39. doi:10.1016/j.cretres.2017.08.016. 
  7. ^ Melstrom, K. M; Irmis, R. B (2019). “Repeated evolution of herbivorous crocodyliforms during the age of dinosaurs”. Current Biology 29 (14): 2389-2395. doi:10.1016/j.cub.2019.05.076. https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.05.076. 
  8. ^ a b Barrios, F; Bona, P; Paulina-Carabajal, A; Gasparini, Z (2018). “Re-description of the cranio-mandibular anatomy of Notosuchus terrestris (Crocodyliformes, Mesoeucrocodylia) from the Upper Cretaceous of Patagonia”. Cretaceous Research 83 (3-39). doi:10.1016/j.cretres.2017.08.016. https://doi.org/10.1016/j.cretres.2017.08.016.