ノイリー・プラット
ノイリー・プラット(Noilly Prat, フランス語ではノワイイ・プラット)とは、フランス南部のエロー県にあるマルセイラン(Marseillan)で生まれたドライ・ベルモットである。
混成酒の1種ではあるが、通常リキュールには分類されない酒。
1813年、植物学者ジョゼフ・ノワイイ(Joseph Noilly)によって作られた。
ドライ・ベルモットあるいはフレンチ・ベルモットと呼ばれる無色のベルモットの元祖である。
なお、赤いノイリープラットと琥珀色のノイリープラットは後年のものであり、あまり知られていない。
ノイリー・プラットのアルコール度数は18%である。
歴史
[編集]樽中に保管されたワインは、自然にその特性が変化することが知られていた。
長距離輸送中に樽の中のワインは色が濃く香りが深くなる。
この自然な変化を模倣し、1813年ジョゼフ・ノワイイはフランスで最初のベルモット製造方法を確立した。
1855年に、ジョゼフの息子ルイ・ノワイイ(Louis Noilly)と養子クロディウス・プラット(Claudius Prat)はマルセイランに ノイリー・プラット社を設立しベルモットの販売を開始した。
1971年,ノイリー・プラット社はマルティーニ・エ・ロッシ社に買収され、現在はブランド名となっている。
製造工程
[編集]製造方法は1850年代から基本的に変わっていない。
ノイリー・プラットの原料はマルセイランで栽培された、ピクプール・ド・ピネ種とクレレット種の白ブドウに限定されている。
これらを特製の貯蔵庫中の大きなカナディアンオーク樽で熟成させることで軽くフルーティなワインができる。
8か月間樽中で熟成させることで、ワインを熟成させ木のフレーバーを吸収させた後、より小さなオーク樽(バレル)へ移し屋外で一年間保管する。
太陽の熱、海風、そして冬の低温にさらされることでワインはゆっくりと変化する。
その結果、ワインはドライで重厚なコクが生まれ、またその色はマディラ・ワインやシェリー (ワイン)に似た琥珀色に変化する。
1年間の屋外での保管中に、容量の6%~8%が蒸発する。なお、この蒸発した分は、天使の分け前(Angel's share)と呼ばれる。
その後再び屋内で数か月保管した後、オーク樽(カスク)に移し替える。
その際、まろやかにするため少量のミステル(ブドウ果汁と蒸留酒)と、フレーバーを強化するために一つまみの果実精を加える。
オーク樽中では3週間にわたって(おそらくノイリー・プラット特有の)マセレーション(浸漬)という工程が行われる。
ここでは毎日20種類のハーブとスパイスが加えられる。添加物はカモミール、ビターオレンジの果皮、ナツメグ、セントーリー、コリアンダー、クローブを含んでいるが、全容は企業秘密とされている。
さらに6週間寝かせ出荷準備のできた製品は、タンカーでマルセイユに送られマルティーニ・エ・ロッシ社により瓶詰・出荷される。
亜種
[編集]生産されるノイリー・プラットのほとんどは、世界中で有名な透明のドライ・ベルモットであるが、その他に2種類の亜種が存在する。
- レッドノイリー・プラット
- 通常のノイリー・プラットと同じような製造工程で作られるが、およそ30種類のハーブ・スパイスが追加され、液色は深紅となる。フランスではノイリー・プラット直営店でのみ購入できる。
- アンバーノイリー・プラット
- マルセイユのノイリー・プラット直営店でのみ購入できる。液色は琥珀色。
カクテル
[編集]ノイリー・プラットはそのまま飲むことも多いが、カクテルの材料としてもよく使用される。
最も良く知られたカクテルは、ノイリープラット 1/3とジン 2/3 で作られるマティーニである。ただしこの混合比は好みによって調整される。
料理
[編集]ノイリー・プラットは、特に魚向けのソースに利用される。
BBCの料理番組「フレンチ・オデッセイ」(French Odyssey)において、プレゼンターでシェフのリック・スタイン(Rick Stein)はノイリー・プラットを「ラングドックのもたらした真の風味」と称し,「魚料理のソースとして数多の白ワインを試してみたが、ノイリー・プラットが最良であるとの結論に達した。実際、赤ワインのソースと違って、白ワインの良し悪しはソースの完成度にほとんど影響はないのだが、ノイリー・プラットの持つプロヴァンスのハーブ、スパイスの風味は風味づけに良い」と語っている。[1]
見学
[編集]ノイリー・プラットのワイン・セラーは一年を通して公開されており、わずかな入場料で見学することができる。
訪問者は、ツアーガイドによる製造工程の説明や、上記の三種類のノイリー・プラットの試飲などが体験できる。
年間8万人を超える観光客が訪れており、観光名所となっている。
その他
[編集]作家T・S・エリオットは飼い猫に「ノイリー・プラット」と名付けていた。
参照
[編集]- ^ Rick Stein, French Odyssey, Programme 9, BBC
外部リンク
[編集]情報源
[編集]- Green Guide: Languedoc, Rousillon, Tarn Gorges Michelin & Cie (1998), p 337 ISBN 2-06-136602-3