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ネプツノセン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネプツノセン
識別情報
CAS登録番号 154974-81-9 チェック
特性
化学式 C16H16Np
モル質量 445.35 g mol−1
外観 深茶色結晶(固体)、黄色(希溶液)
への溶解度 不溶、水と反応しない
塩化炭素への溶解度 やや難溶 (約0.5 g/L)
危険性
主な危険性 放射性、自然発火性
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ネプツノセン(Neptunocene)は、有機ネプツニウム化合物であり、ネプツニウム原子が2つのシクロオクタテトラエニド環(COT2-)に挟まれたサンドイッチ化合物である。固体状態では、暗い茶色から赤色であるが、わずかに溶解する有機塩素化合物に溶けると、黄色になる[1][2][3][4][5]。空気反応性が非常に高い[1][2][5]。化学式は、Np(C8H8)2

有機ネプツニウム化合物として最初に合成されたもので、アクチノイドメタロセンであるアクチノセンの一つである[2]

構造

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ネプツノセンのサンドイッチ構造は、単結晶X線結晶構造解析により決定された[4]。シクロオクタテトラエニド環は、等価な8つの長さ1.385 AのC-C結合からなる平面状で、重なり形配座で平行に位置している。ネプツニウム原子からシクロオクタテトラエニド環の中心までの距離は1.909 Aで、ネプツニウム原子と個々の炭素原子の間の距離は2.630 Aである[4]

ネプツノセンは単斜晶系空間群P21/n)と推定され、これはウラノセントロセンと同形だが、プルトノセンとは異なる[4]

合成と性質

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ネプツノセンは、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中での塩化ネプツニウム(IV)シクロオクタテトラエニド二カリウムの反応により、1970年に初めて合成された[1]

NpCl4 + 2 K2(C8H8) → Np(C8H8)2 + 4 KCl

それ以来、この化合物の合成には、同じ反応条件が日常的に繰り返されてきた[3][4]

ウラノセン、ネプツノセン、プルトノセンの3つのアクチノセンは、ほぼ同じ化学的性質を持つ。これらは水か希塩基の存在下では反応しないが、空気反応性は非常に高く、急速に酸化物を形成する[1][2][3]ベンゼントルエン四塩化炭素クロロホルム等の芳香族化合物有機塩素化合物の溶媒には、非常にわずかに溶ける(最大でも約10-3M)[1][2][4][5]

出典

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  1. ^ a b c d e Karraker, David G.; Stone, John Austin.; Jones, Erwin Rudolph.; Edelstein, Norman. (1970). “Bis(cyclooctatetraenyl)neptunium(IV) and bis(cyclooctatetraenyl)plutonium(IV)” (英語). Journal of the American Chemical Society 92 (16): 4841-4845. doi:10.1021/ja00719a014. ISSN 0002-7863. https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja00719a014. 
  2. ^ a b c d e Greenwood, Norman N.; Earnshaw, Alan (1997). Chemistry of the Elements (2nd ed.). Butterworth-Heinemann. pp. 1278-1280. ISBN 9780750633659 
  3. ^ a b c Eisenberg, David C.; Streitwieser, Andrew; Kot, Wing K. (1990). “Electron transfer in organouranium and transuranium systems”. Inorganic Chemistry 29 (1): 10-14. doi:10.1021/ic00326a004. ISSN 0020-1669. https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/ic00326a004. 
  4. ^ a b c d e f Ridder, D. J. A. De; Rebizant, J.; Apostolidis, C.; Kanellakopulos, B.; Dornberger, E. (1996). “Bis(cyclooctatetraenyl)neptunium(IV)” (英語). Acta Crystallographica Section C 52 (3): 597-600. doi:10.1107/S0108270195013047. ISSN 1600-5759. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1107/S0108270195013047. 
  5. ^ a b c Yoshida, Zenko; Johnson, Stephen G.; Kimura, Takaumi; Krsul, John R. (2006). “Neptunium”. In Morss, Lester R.; Edelstein, Norman M.; Fuger, Jean. The Chemistry of the Actinide and Transactinide Elements. 3 (3rd ed.). Dordrecht, the Netherlands: Springer. pp. 699-812. doi:10.1007/1-4020-3598-5_6. http://radchem.nevada.edu/classes/rdch710/files/neptunium.pdf