ニワシドリ科
ニワシドリ科 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Ptilonorhynchidae (Gray, 1841) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ニワシドリ(庭師鳥) コヤツクリ(小屋造) アズマヤドリ(東屋鳥) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Bowerbird | ||||||||||||||||||||||||||||||
属 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ニワシドリ科 (ニワシドリか、学名 Ptilonorhynchidae) は、鳥類スズメ目の科である。ニワシドリ、あるいはコヤツクリ、アズマヤドリと呼ばれる[1]。
分布
[編集]形態
[編集]概して地味な羽色だが、一部の種の雄は派手な色の羽や飾り羽を持つ[1]。
生態
[編集]森林ないし疎林に住み、果実・種子など植食を主食とするが、昆虫なども食べる[1]。
バワー
[編集]雄は繁殖期が近づくと、直径1–3mほどの区域から落ち葉や枯れ枝などを除いて、ニワシドリの名の由来となった「コート (court、庭)」にし、さらにその中に大きな小屋型の構造物「バワー (bower、あずまや)」を作る。なおこれは巣ではなく、巣はこれとは別に雌が単独で作る。
バワーにはさまざまな種類があるが、大きく「メイポール (maypole)」(「スピア (spire)」を含む)と「アベニュー (avenue)」とに分かれる[2][3]。ニワシドリ科は伝統的に、メイポールビルダー、アベニュービルダー、バワーを作らないものの3つに分けられてきた[2]。
大きな分類 | 和名 | 学名 | バワー | コート |
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なし | ネコドリ属 | Ailuroedus | なし | なし |
ハバシニワシドリ属 | Scenopoeetes | なし | 掃き清めたのみ | |
パプアニワシドリ属 | Archboldia | なしか蘭の枝 | シダと枝 | |
メイポール | カンムリニワシドリ属 | Amblyornis | メイポール | コケ |
オウゴンニワシドリ属 | Prionodura | 2本のスピア | なし | |
アベニュー | フウチョウモドキ属 | Sericulus | 簡単なアベニュー | なし |
アオアズマヤドリ属 | Ptilonorhynchus | 簡単なアベニュー | 藁 | |
マダラニワシドリ属 | Chlamydera | 複雑なアベニュー | 2つのコート |
メイポール
[編集]チャイロニワシドリなどは、若木の周りに、水平にした小枝を積み上げた「メイポール」を作る。メイポールの高さは最大2.5メートルに達する[3]。
メイポールの周囲はコケが円型に敷かれ、その周囲には小枝などさまざまな装飾品が積まれる[3]。
アベニュー
[編集]マダラニワシドリ、アオアズマヤドリなどは、乾燥した草の茎を多数立てて壁状にし、一対の壁で挟まれた「アベニュー」(道)を作る。アベニューの入り口には、小石、骨、貝殻、ガラス片など(どのようなものが好まれるかは種によって異なる)が散らばって置かれる[3]。
バワーを訪れた雌は、草に囲まれたアベニューの中に入る。雄はアベニューの外で、激しいディスプレイをする。草の壁はまばらなので、雌は壁を透かして雄のディスプレイを見ることができる[3]。
系統と分類
[編集]科間の系統関係は Ericson et al. (2002)[4]; Chesser & Have (2007)[5]、ニワシドリ科の内部系統は Kusmierski et al. (1997)[2]による。[M] はメイポールビルダー、[A] はアベニュービルダー。
スズメ亜目 |
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アベニュービルダーは単系統だが、メイポールビルダーは単系統ではなく、バワーを作らないパプアニワシドリを内包している。パプアニワシドリは二次的にメイポールを作らなくなった可能性がある[2]。
ニワシドリ科全体はキノボリ科と姉妹群で、合わせてニワシドリ上科を形成する[6]。ニワシドリ上科は、スズメ亜目の中でコトドリ上科の次に分岐した系統である。Sibley分類では、ニワシドリ上科はコトドリ上科に含められていたが、系統的には分離される。
属と種
[編集]国際鳥類学会議 (IOC) の分類では8属20種からなる[7]。
- Ailuroedus, ネコドリ属
- Ailuroedus buccoides, White-eared Catbird, ミミジロネコドリ
- Ailuroedus crassirostris, Green Catbird, ネコドリ
- Ailuroedus melanotis, Spotted Catbird, ミミグロネコドリ (A. crassirostris から分離)
- Scenopoeetes (Ailuroedus から分離)
- Scenopoeetes dentirostris, Tooth-billed Catbird, ハバシニワシドリ
- Archboldia
- Archboldia papuensis, Archbold’s Bowerbird, パプアニワシドリ (A. sanfordi, Sanford’s Bowerbird, トンバニワシドリ を含む)
- Amblyornis, カンムリニワシドリ属
- Amblyornis inornatus, Vogelkop Bowerbird, チャイロニワシドリ
- Amblyornis macgregoriae, Macgregor’s Bowerbird, カンムリニワシドリ
- Amblyornis subalaris, Streaked Bowerbird, アカエボシニワシドリ
- Amblyornis flavifrons, Golden-fronted Bowerbird, キエボシニワシドリ
- Prionodura
- Prionodura newtoniana, Golden Bowerbird, オウゴンニワシドリ
- Sericulus, フウチョウモドキ属
- Sericulus aureus, Masked Bowerbird (S. ardens を分離する前の旧名 Flame Bowerbird, オウゴンフウチョウモドキ)
- Sericulus ardens, Flame Bowerbird (S. aureus から分離)
- Sericulus bakeri, Fire-maned Bowerbird, ショウジョウフウチョウモドキ
- Sericulus chrysocephalus, Regent Bowerbird, フウチョウモドキ
- Ptilonorhynchus
- Ptilonorhynchus violaceus, Satin Bowerbird, アオアズマヤドリ
- Chlamydera, マダラニワシドリ属
- Chlamydera guttata, Western Bowerbird, ニシマダラニワシドリ
- Chlamydera nuchalis, Great Bowerbird, オオニワシドリ
- Chlamydera maculata, Spotted Bowerbird, マダラニワシドリ
- Chlamydera lauterbachi, Yellow-breasted Bowerbird, キバラニワシドリ
- Chlamydera cerviniventris, Fawn-breasted Bowerbird, チャバラニワシドリ
出典
[編集]- ^ a b c d e 浦本昌紀, [100.yahoo.co.jp/detail/ニワシドリ/ “ニワシドリ”], 日本大百科全書, Yahoo!百科事典, 小学館
- ^ a b c d e Kusmierski, Rab; Borgia, Gerald; Uy, Albert; Crozier, Ross H. (1997), Labile evolution of display traits in bowerbirds indicates reduced effects of phylogenetic constraint, 264, p. 307-313
- ^ a b c d e マイク・ハンセル 長野敬+赤松眞紀訳 (2009), “第8章 「美しい」あずまや?”, 建築する動物たち ビーバーの水上邸宅からシロアリの超高層ビルまで, 青土社, ISBN 978-4-7917-6485-3(原書: Hansell, Mike (2007), Built by Animals: The natural history of animal archite, Oxford University Press)
- ^ Ericson, Per G.P.; Christidis, Les; Irestedt, Martin; Norman, Janette A. (2002), “Systematic affinities of the lyrebirds (Passeriformes: Menura), with a novel classification of the major groups of passerine birds”, Mol. Phylogenet. Evol. 25: 53-62
- ^ Chesser, R. Terry; Have, José ten (2007), “On the phylogenetic position of the scrub-birds (Passeriformes: Menurae: Atrichornithidae) of Australia”, J. Ornithol. 148: 471-476, doi:10.1007/S10336-007-0174-9
- ^ O’Leary, Maureen A.; Allard, Marc; et al. (2004), “Phylogenic relationships among modern birds (Neornithes): toward an Avean tree of life”, in Cracraft, Joel; Donoghue, Michael J., Assembling the tree of life, Oxford University Press
- ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2012), “Lyrebirds to whipbirds”, IOC World Bird Names, version 3.1