ナガコガネグモ
ナガコガネグモ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Argiope bruennichi メス
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Argiope bruennichi (Scopoli, 1772) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Aranea brünnichii Scopoli, 1772 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ナガコガネグモ(長黄金蜘蛛) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Wasp spider orb-weaving spider | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ナガコガネグモ(長黄金蜘蛛、学名: Argiope bruennichi)は、コガネグモ科のクモ。
特徴
[編集]雌成虫の体長は20-25mm。胸部背面は黄色みを帯び、白い毛が密生する。腹部は楕円形で、前は平たく、後ろは少しとがる。背面には黄色っぽく、それに細い褐色の横縞がまばらに多数はいる。所々の線の間が白くなることもある。歩脚は灰褐色で、とげがまばらにある。
雄成虫は体長6-12mm、全体に雌成虫と形が似ているが、斑紋がはっきりしない[1]。
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メスの腹面
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卵のうを守るメス
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シオカラトンボを捕らえたメス
分布
[編集]北海道から南西諸島(沖縄島まで)に広く分布する。世界的には旧北区に広く分布し[2]、ヨーロッパでも普通にみられる。
生活史
[編集]年一化性。成虫は8月以降にみられ、地域によっては11月までみられる[3]。
卵は卵嚢内で秋のうちに孵化し、そのまま越冬して、翌春に一回目の脱皮をした後に分散する[4]。
習性
[編集]人家周辺から山麓までに生息し、明るい草原に多く、水田にも頻出する。あまり高くないところに中型の垂直円網を作る。クモは常に網の中央に頭を下に陣取る。隠れ帯をつけることが多い。他のコガネグモ類は足を伸ばす方向に沿ってX字状につけることが多いが、本種ではその形につけることは少ない。幼生ではジグザグに糸を張った馬蹄形が多く、亜成体では縦長の菱形となり、成体では縦に伸びたジグザグのリボン状が普通である[5]。
刺激を受けると、網を強く揺さぶる行動をとる[3]。
産卵は大きな卵嚢を形成する。雌は草の間に不規則網状の足場を作り、直径2-3cmにもなる西洋なし型、坪状の卵嚢をつける。上面はくぼんで壺の口を形成するが、その内側には丈夫な幕があり、内部は閉ざされている。壺内部には、クッションのような綿状の糸に包まれて、900個ほどの卵がまとめられている。
卵嚢について
[編集]コガネグモなど、同属の他の種では、より扁平な卵嚢を形成する例が多い。それらでは不規則な多角形のシート二枚の間に卵が納められる。産卵の際は、まず片面の膜を糸で作り、その上に産卵して、それを覆うもう一枚の膜を作るようにする。その点、この種の卵嚢は一見では異質である。
しかし、その産卵の過程をみると、雌グモはまず、壺の蓋に当たる幕を糸で形成し、その下面に腹部を押しつけ、産卵を行い、このようにして糸の幕にぶら下がったようになった卵塊に、下から糸を巻き付けることでクッションを作り、最後にそれを壺の壁に当たる膜で覆う。つまり、下側の幕が壺状に大きくふくらんではいるが、やはり二枚の幕に挟まれた形をなし、基本的には同じ構造といえる[6]。
ファーブルの観察について
[編集]『昆虫記』で知られるファーブルは、その中でクモについてもいくつかの記録を残しているが、その中に本種に関するものがある。しかし、その内容に問題が多いことが以前から知られている。
特に目立つのが卵嚢に関するもので、彼はその作成過程を記録しているのだが、これが実際のものと大きく異なる。彼は雌がまず袋を作り、次にその袋の中に卵を流し込み、最後にその上に蓋をするという風に書いており、これは上記のような実際の作成過程のほぼ逆である。
これについてはフランスのボネーが1925年にすでに指摘しており、日本では千国が上記の観察記録の中で問題にしている。ボネーはさらに卵嚢作成時間、産卵後の行動にも触れた上で、ファーブルは不十分な観察に想像を加えたために間違ったと記している[7]。
利害
[編集]人里に見られる普通種であり、大柄で目立つので広く知られてはいるが、明確な利害はない。水田によく出現するので、水田の農業害虫に対する天敵としてはそれなりに活躍する。高知県では「稲牛若」の名で親しまれている[8]。それ以外に大きなものは特にない。コガネグモはクモ合戦に使われるが、ナガコガネグモは攻撃的でなく、使ってもおもしろくないとのこと。斎藤慎一郎のアンケート調査では、東北地方に少なくとも7例のナガコガネグモ相撲(合戦、昆虫相撲)が確認されている[9]。
類似種
[編集]日本のコガネグモ属のものは、その多くがより幅広い腹部に幅の広い黒い横帯を持ち、この種だけが見かけでは大きく異なる。ただ、日本では南西諸島にナガマルコガネグモがおり、この種は形はコガネグモなどに似るが、斑紋はナガコガネグモによく似ており、両者の中間を感じさせる外見となっている。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 浅間茂・石井規雄・松本嘉幸『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』(改訂版)全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、2002年、70頁。ISBN 4-88137-084-7。
- 小野展嗣編著、『日本産クモ類』、(2009)、東海大学出版会
- 八木沼健夫,『原色日本クモ類図鑑』、(1986),保育社
- 八木沼健夫、(1979)、「ファーブルとナガコガネグモ -千国安之輔氏の発表に因んで-」、Atypus 75:p.19-20.
- 新海栄一、『日本のクモ』,(2006),文一総合出版
- 千国安之輔、「クモの奇妙な壺づくり」、『アニマ』No.87、(1980),p.59-67:平凡社