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プロ野球中継

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナイター中継から転送)
東京ドームでのプロ野球の試合

プロ野球中継(プロやきゅうちゅうけい)とは、プロ野球の試合を中継放送または配信を行う番組のことである。

本項では、日本の一般社団法人日本野球機構(NPB)によるプロ野球の試合中継について記述する。メジャーリーグベースボール(MLB)の中継についてはメジャーリーグベースボール#テレビ放映権を参照。

日本における歴史

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黎明期

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1936年7月に開かれた「日本職業野球連盟結成記念大会」(東京・早稲田大学戸塚球場〔後の安部球場〕)が、東京中央放送局(JOAK。現在のNHK)により放送。大会期間中の全試合を生中継し、特に初日と決勝戦には「神宮球場にが2羽、3羽」の名調子でならした松内則三和田信賢が実況を担当した。これは二人のアナウンサーが掛け合いで同時にしゃべるという試みであった。場内に集音マイクを設置してバットの打撃音や観客の声が流れるようにしたが、野球中継で集音マイクを設置した最初の例であるという[1]

1951年、実験放送であるが、後楽園球場でのパシフィック・リーグ大映近鉄毎日東急の2試合で日本初のテレビ中継が行われた[2]

1952年7月15日、前年に開局した神戸放送(現:ラジオ関西)により民放ラジオ局初のナイター中継が開始[3]

1953年8月29日、日本テレビにより民放テレビ局初のナイター中継が行なわれた。後楽園球場で行なわれた巨人阪神戦で、同局の開局翌日であった。同年、同局は民放テレビ初の「日本シリーズ」(巨人対南海・後楽園球場)中継も行った[4]

1970 - 1990年代

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読売ジャイアンツのV9により人気が全国的となり、対巨人戦の中継はキー局が争奪する人気コンテンツとなった。またセ・リーグの優勝決定試合は球団に関わらず全国ネットで生放送されることが恒例となっていった。一方パ・リーグは1980年代以降の西武ライオンズの黄金時代が到来したこともあり、対巨人戦ほどではないものの、中継される機会が次第に増加していった。

試合が長時間化していったことから、特にセ・リーグの対巨人戦のナイター中継では各局、21時前の中継終了時点で試合が続いていた場合は最大で30〜60分の中継延長オプションを設けるようになった(21時以降の番組は順次繰り下げ)[注釈 1]

カメラのマルチアングル化が進むなど、ハード面での新機軸導入が多く取り入れられた。日本テレビでは1971年に「ワイプナイター」という延長放送の手法も取った。中継時間終了後も後続番組(「怪奇十三夜」内など)で画面一部をワイプ処理して中継映像を映すものであった[5]が、同年に日本映画監督協会から中止の要請が入り取りやめた[6]テレビ朝日では野村克也の解説の下、ストライクゾーンを9分割した配球予測図のスーパーインポーズ表示「ノムラスコープ」が導入された。

1990年代以降はスポーツ中継専門のCS局やBSデジタル放送局が次々と開局し、12球団ほぼ全てが中継でカバーされるようになる。また試合中継時間に制約がないことから徐々に契約者を増やしていった。

日本シリーズがデーゲーム開催だった頃は、テレビ・ラジオ中継では、民放とNHKとの事実上の同時放送が行われていた事があった[注釈 2][7]

2000年代 -

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2006年から、裏番組球界再編問題の影響を受けて視聴率が低迷し、全国放送のレギュラー番組としては打ち切りレベルにまで低下してしまう。テコ入れのために野球ファンでも何でもない野球とは無関係のゲスト[注釈 3]を呼び、却って視聴者から不満の声が上がることも多くなった。ナイター中継の視聴率低迷は全体の番組編成にも悪影響を及ぼすようになったため[注釈 4]、テレビ中継は地上波から視聴率に影響されにくい衛星放送へ徐々に移行していき、地上波全国放送は開幕戦や週末・祝日デーゲーム、オールスターゲーム、日本シリーズに限られるようになった[注釈 5]

視聴率低迷の原因として、日本テレビの岡田謙吾プロデューサーは団塊ジュニアポスト団塊ジュニアをはじめとする昭和40年代後半以降(1970年以降)に生まれた世代が、サッカーなどの野球以外のスポーツやバラエティ番組などのプロ野球中継以外のテレビ番組に魅了されたことが原因とされており、プロ野球中継を視聴することが生活習慣として身に付かないまま定着していったことにあると述べている[8]。また、メディアアナリストの鈴木祐司は、令和初頭に執筆した記事において『野球中継の視聴者層は男性の後期高齢者中心となっており[注釈 6]、特に女性視聴者全般から敬遠されていること[9][10]』やサッカーに比べて競技のテンポが遅い点』を指摘している[11]亀山千広フジテレビ社長(当時)は2015年10月23日の定例会見で「系列ネットワーク局にとって宝のコンテンツ」と理解を示す一方で「フジのことだけを考えれば野球中継は苦しい」と述べた[12]

2004年5月2日の対広島戦が、視聴率20%を超えた「巨人の公式戦中継」最後の試合となっている[5]。さらに2015年8月25日にフジテレビ系列で放送された、ヤクルト対巨人戦では3.7%の低視聴率を記録し[13]、2010年代以降はオールスターゲーム・日本シリーズでも視聴率が低迷するようになった[14][15][16]。さらに2014年の日米野球では、全て一桁を記録している[17]

その一方で、関東地方以外の本拠地を持つ球団では地域密着の一環として[18]、地元局でのローカル中継または巨人戦の差し替えが増加するようになった[注釈 7]。特に広島戦の広島地区での平均視聴率は高視聴率を記録しており[19][20][21][22]、広島が25年ぶりのリーグ優勝を決めた2016年9月10日NHK総合テレビで放送された対巨人戦(東京ドーム)の広島地区での平均視聴率は60.3%を、瞬間最高視聴率は71%を各々記録した[23]。近年は関西地区でも阪神戦を中心に高視聴率を記録するようになり[24][25][26][27]、オリックスが出場した2021年2022年の日本シリーズの関西地区の平均視聴率は2桁前後を相次いで記録した[28][29][30][31][32][33][34]

名古屋地区での中日戦の平均視聴率も2020年に2桁台を相次いで記録しており[35][36]、日本ハムが10年ぶりの日本一を決めた2016年10月29日日本テレビ系列で放送された『日本シリーズ第6戦「広島対日本ハム」』(マツダスタジアム)の札幌地区での平均視聴率は50.8%を、瞬間最高視聴率は66.5%を各々記録[37]。ソフトバンクが4年連続の日本一を決めた2020年11月25日にフジテレビ系列で放送された『日本シリーズ第4戦「ソフトバンク対巨人」』(福岡PayPayドーム)の北部九州地区での平均世帯視聴率も27.8%を、瞬間最高視聴率は38.2%を各々記録した[38]。一方関東地区の独立局[注釈 8]でも放送が増加し、キー局である日本テレビでも地上波関東ローカル巨人主催試合中継の週末・祝日デーゲームを放送している。

ラジオでは聴取者に中高年が多いことや、編成の柔軟性がテレビより高い[注釈 9]ことから2000年代以降も放送されることが多かったが、デーゲームの増加や聴取率低迷、radikoの普及を理由にラジオ大阪TBSラジオDeNA主催試合JRN系列局への裏送りのみ2022年まで継続)のように撤退する放送局も現れた[39][40][41][42]。特にTBSラジオの撤退以降はキー局の文化放送[43]やフランチャイズ球団が無い地方局では野球中継を縮小、あるいは撤退する動きが相次いでおり、フランチャイズ球団のある地方でもSTVラジオ九州朝日放送のように縮小する局が現れている。その一方でフランチャイズ球団がない地方でもスポンサーがある程度見込めるなどの場合は枠を維持している例がある。

インターネット中継

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2000年代頃からはインターネットを活用した中継を行う事例が多くなりつつある。但しこれらは放映権の関係から視聴可能な球団は配信業者ごとに異なっており、単一業者で12球団視聴可能なサービスは2019年まで存在していなかった。また日本シリーズはネット配信の導入が遅く、全試合の配信が行われるようになったのは2018年からである。

エピソード

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2010年の日本シリーズはセ・リーグ覇者の中日ドラゴンズとパ・リーグはクライマックスシリーズを制覇したリーグ3位の千葉ロッテマリーンズの対戦となった。しかし、この年は第1・2・5戦が地上波での全国中継がなくなるという(民放全国ネット確立後)史上初の出来事が発生した[54][55]。なお、11月6日のシリーズ第6戦はフジテレビ系列で放送されたが、延長15回まで縺れたため3時間10分に及ぶ大幅な延長により21:00 - 23:10の放送予定だった土曜プレミアム(映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』)が日付を跨いで、日曜0:10 - 2:20まで『土曜プレミアム』として放送された。また、これにより深夜から朝方にかけて放送予定だった一部の番組が休止となった[56]

ちなみに、プロ野球中継の史上最長は、サンテレビが1992年9月11日に阪神甲子園球場から中継した阪神対ヤクルト戦の6時間26分(0時26分まで)である[57]

脚注

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注釈

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  1. ^ 1990年代のフジテレビは、最大30分の延長オプションでは試合終了まで中継できないことがあったことも踏まえて、中継開始を従来の19時から19時30分に繰り下げた上で、延長オプションを最大60分とした。
  2. ^ 1985年の日本シリーズでは、サンテレビも加えて民放2局が同時放送を行ったこともあった。
  3. ^ 例として、番組宣伝を兼ねて放送日の週に始まるテレビドラマの主演俳優が登場することがある。
  4. ^ 具体的には、中継に伴うレギュラー番組の休止、中継延長に伴う後番組の放送開始遅延・休止がある。
  5. ^ 延長放送の無い地上波全国放送での中継は、何れも無料BS放送へのトップ&リレーを実施している。
  6. ^ 当該記事の執筆時期を考慮すると団塊の世代以前に生まれた世代の男性を指すものと思われる。
  7. ^ ナイター中継の場合、休止した全国ネットのレギュラー番組は、土曜・日曜午後の振替放送で対応する。
  8. ^ 県域放送局と球団本拠地を持つ埼玉県テレビ埼玉神奈川県テレビ神奈川千葉県千葉テレビが該当。これ以外では、東京都東京MXテレビでは、福岡ソフトバンクホークス主催試合中継を実施している。
  9. ^ 中継終了後の番組は生放送の番組が編成されることが多く、中継が延長したときでも裏送りが可能なことや、予定されていた中継が中止になっても、予備カードとして設定していた他球場の中継に切り替えることができる。

出典

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  1. ^ 鈴木龍二『プロ野球と共に五十年(上)』(恒文社、1984年)P35 - 37。なお、本書にはこの結成記念大会の中継が「プロ野球が、初めてNHKのラジオで放送された」と記されているが、上記の通り名古屋放送局の中継が先行しているため、正確な記述ではない。
  2. ^ プロ野球中継における地域性
  3. ^ ラジオ関西ってこんな会社! - ウェイバックマシン(2007年4月18日アーカイブ分)
  4. ^ 日本テレビ放送網株式会社社史編纂室 編『大衆とともに25年 沿革史』日本テレビ放送網、1978年8月28日、416 - 417頁。NDLJP:11954641/224 
  5. ^ a b スポーツ報知 2014年9月25日24面 「巨人軍80周年 あの時」第15回
  6. ^ 日本映画監督協会 Archived 2010年7月26日, at the Wayback Machine.
  7. ^ 1987年10月29日の東奥日報テレビ欄とラジオ欄から。但しラジオ中継に関しては、現在でも同時放送が行われている。
  8. ^ “ファン高齢化打開へ? 桑田&立浪コンビ、実現のワケ”. 夕刊フジ (ZAKZAK). (2010年5月6日). オリジナルの2010年5月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100509100212/http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20100506/bbl1005061615005-n2.htm 2011年2月15日閲覧。 
  9. ^ “日本シリーズで巨人が2勝以上してはいけない“事情”~関東のプロ野球中継は見直しが必要!~”. 鈴木祐司. (2020年11月21日). https://news.yahoo.co.jp/byline/suzukiyuji/20201121-00208983/ 2020年11月22日閲覧。 
  10. ^ “巨人戦はオワコンか?~日本シリーズ視聴率一桁から見える現実~”. 鈴木祐司. (2019年10月27日). https://news.yahoo.co.jp/byline/suzukiyuji/20191027-00148483/ 2020年11月22日閲覧。 
  11. ^ 沼澤典史 (2021年8月27日). “若者たちに不人気な「スポーツ観戦」…東京五輪で若年層の視聴率は伸びた? プロ野球中継のメイン視聴者は“75歳以上”説も…”. Number Web. https://number.bunshun.jp/articles/-/849424?page=2 
  12. ^ “日本シリーズ:どうした視聴率、関東で低迷”. 毎日新聞. https://archive.fo/20151029035539/http://mainichi.jp/select/news/20151028k0000e040199000c.html 2015年10月28日閲覧。 
  13. ^ “視聴率3%…巨人戦、テレビ局は「もう中継必要なし」 日テレ、天王山すら中継なしの異常事態”. Business Journal. https://web.archive.org/web/20151002065534/http://biz-journal.jp/2015/10/post_11784.html 2015年10月1日閲覧。 
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  17. ^ “日米野球、全試合視聴率1ケタで壊滅的…各局が放送“せざるを得ない”裏事情とは?”. Business Journal. https://web.archive.org/web/20141203032331/http://biz-journal.jp/2014/11/post_7503.html 2014年11月29日閲覧。 
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関連項目

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