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ドロミーティ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドロミテから転送)
ドロミーティ
所在地 イタリアの旗 イタリア
位置 北緯46度26分 東経11度51分 / 北緯46.433度 東経11.850度 / 46.433; 11.850座標: 北緯46度26分 東経11度51分 / 北緯46.433度 東経11.850度 / 46.433; 11.850
最高峰 マルモラーダ(3343 m
SOIUSAの定義するドロミーティ(青緑)と
世界遺産としてのドロミーティ(茶)
プロジェクト 山
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ドロミーティイタリア語: Dolomiti)は、イタリア北東部にある山地で、東アルプス山脈の一部。ドロミテなどとも表記される(#名称節参照)。おおむね北はリエンツァ川、西はイザルコ川アディジェ川、南はブレンタ川、東はピアーヴェ川に囲まれた一帯で、ボルツァーノ自治県(南チロル)、トレント自治県ベッルーノ県にまたがる。

上記の範囲以外にも、共通の地質的特徴を持つ山地が「ドロミーティ」と呼ばれている。たとえば、アディジェ川以西のドロミーティ・ディ・ブレンタイタリア語版や、ピアーヴェ川以東(ポルデノーネ県ウーディネ県にまたがるフリウーリ地方北西部)に所在するドロミーティ・フリウラーネイタリア語版などである。

狭義のドロミーティおよび、ドロミーティ・ディ・ブレンタ、ドロミーティ・フリウラーネに含まれるいくつかの山塊は、ユネスコ世界遺産自然遺産)に「ドロミーティ」の名で登録されている。また、アダメッロ・ブレンタ国立公園英語版を含むドロミーティ・ディ・ブレンタからガルダ湖までの一帯は2015年にユネスコ生物圏保護区に指定された[1]

名称

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ドロミーティの名は、18世紀フランスの地質学者デオダ・ドゥ・ドロミューDéodat de Dolomieu)に由来する。デオダ・ドゥ・ドロミューは、この山々で非常に豊富な鉱物である苦灰石ドロマイト dolomite)を発見した人物である(苦灰石を主成分とする苦灰岩(マグネシウム質石灰岩)もドロマイトと呼ばれる)。イタリア語では、モンティ・パッリディMonti Pallidi、淡色の山々)とも呼ばれる。

イタリア語以外の言語では以下のように呼ばれる。

日本語文献では、ドロミティドロミテドロミチなどとも表記され、-アルプス-山脈-山塊が末尾につけられる事も多い。

歴史

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今から数千年前には、狩猟や採集を行っていた人々が山岳地帯にまで進出し、いくつかの山頂には到達していたようである。1790年代クラーゲンフルト出身のイエズス会の司祭、フランツ・フォン・ヴルフェンがリュンコフェル(Langkofel)とデューレンシュタイン英語版(Dürrenstein)に登頂したという記録が残されている。1857年イギリスの博物学者、ジョン・ボールがモンテ・ペルモの初登頂を行った。その後、オーストリアの登山家、パウル・グローマン英語版が、アンテラーオ(Antelao)やマルモラーダ(Marmolata)、トファーナ(Tofana)、モンテ・クリスタッロ(Monte Critallo)、ボエ(Boè)といった山に登頂。1860年代頃には、アーゴルド出身の登山家、シモーネ・デ・シルヴェストロがチヴェッタ(Civetta)を意識的な初登頂を果たした。また、ミヒャエル・インナーコフラー英語版トレ・チーメ・ディ・ラヴァレードに最初に登頂を果たしたはメンバーの一人であった。さらにその後、アンジェロ・ディボーナ英語版ジョバンニ・ピアッツ英語版といった地元の登山家たちが数々の初登頂で名を馳せた[2]

第一次世界大戦中、イタリア軍とオーストリア帝国軍がこのドローミティで対峙し、両軍によって地雷がこの地の広範囲にわたって埋設された。現在、チンクェトッリとモンテ・ピアナ(Monte Piana)、モンテ・ラガツオイ(Monte Lagazuoi)に野外戦争博物館が開設されている。また、第一次大戦中に岩壁に築かれた保護登山路、ヴィア・フェラータ英語版:Via Ferrata - 鉄の道)を登るため、多くのクライマーが訪れている。

20世紀に入り、ボルツァーノ出身の民俗学者にして民話研究家カール・フェリックス・ヴォルフ英語版と、彼の友人のフーゴ・フォン・ロッシラディン語版による『ドロミテのサガ』("Dolomiten-Sagen")が世にでたことで、バディーア谷やファッサ谷を中心としたドロミーティは、ファネス王国英語版の叙事詩の舞台としても知られるようになった[3]

ドロミーティには、数多くの長距離遊歩道が存在する。これらの道はアルテ・ヴィエ(伊:Alte Vie)、または「ドロミテン・ホーエンヴェーグ」(:Dolomiten Höhenwege - 高地路)とよばれ、1から10までの番号が割り振られている。全ての道を踏破するのには一週間前後かかり、道中各所にはいくつものリフジ(伊:rifugi - 山小屋)が設けられている。1番目の道であるアルタ・ヴィア1英語版は、アルテヴィエのなかで最も有名なハイキングルートである。アルタ・バディア英語版では、地滑りの活動と気候変動との関連性を実証するために、放射性炭素年代測定が行われている[4]

地理

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最も標高が高い山は標高3343mのマルモラーダ(Marmolada)である。特徴的な形の急峻な岩山が多く、比高100mオーダーの岩壁は格好のロッククライミングの場である。標高1800m(北側斜面)または2200m(日射のある斜面)以下は主に針葉樹林ドイツトウヒヨーロッパモミヨーロッパアカマツヨーロッパハイマツ英語版ムゴマツ)となっている。アルペ・ディ・シウージ(Alpe di Siusi)やアンペッツォ(Ampezzo)の高地では放牧が営まれる。付近にはオオヤマネコハイイロイワシャコクマゲラスズメフクロウシロツメザリガニ英語版ミヤマイモリ英語版クスシヘビなどが生息し、ヒグマの再導入も行われる[1]。また、山中に中生代炭酸塩台地(「化石環礁」)が発達しており、P-T境界後の三畳紀に出現した海洋生物の化石が多く見つかり、三畳紀の層序における重要な地点もいくつかある[5]

他の石灰岩質の地域とは異なりドロミーティには石灰岩侵食現象による洞窟などが存在しない。

2022年7月上旬にはマルモラーダ山で氷河の一部が崩壊し発生した雪崩で、9人が亡くなった[6]。熱波による気温上昇によるとみられる[6]

主な山

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マルモラーダからの 360°の景観

山群

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  • ソラピス(Sorapiss)
  • アンテラーオ(Antelao)
  • ラゴライ(Lagorai)
  • ボスコネーロ(Bosconero)
  • ヴェッテ・フェルトリーネ(Vette Feltrine)
  • スキアーラ(Schiara)
  • ドロミーティ・ディ・ブライエス(Dolomiti di Braies)
  • ドロミーティ・ディ・セスト(Dolomiti di Sesto
  • ガルデナッチャ山群(Gruppo della Gardenaccia)

純粋なドロミーティの地域外:

  • ドロミーティ・フリウラーネ(Dolomiti friulane):南カルニケ・アルプス
  • ドロミーティ・ディ・ブレンタ(Dolomiti di Brenta)
  • Lienzer Dolomiten
  • 低エンガディーナのドロミーティ(Dolomiti della Bassa Engadina)

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名称 高さ(m) 名称 高さ(m)
Marmolada 3343 Pala di San Martino 2996
Antelao 3263 Catinaccio(Rosengartenspitze) 2981
Tofana di Mezzo 3241 Marmarole 2961
Sorapiss 3229 Cima di Fradusta 2941
Monte Civetta 3220 Fermedaturm 2867
Vernel 3145 Cima d'Asta 2848
Monte Cristallo 3199 Cima Canali 2846
Cima di Vezzana 3191 Croda Grande 2839
Cimon della Pala 3186 Torri del Vajolet(maggiore) 2821
Langkofel 3178 Sass Maor 2816
Monte Pelmo 3169 Cima di Ball 2783
Cima dei Tre Scarperi(Dreischusterspitze) 3162 Cima della Madonna(Sass Maor) 2751
Piz Boe(Gruppo Sella) 3152 Cima della Rosetta 2741
Croda Rossa d'Ampezzo(Hohe Gaisl) 3148 Croda da Lago 2715
Piz Popena 3143 Central Grasleitenspitze 2705
Grohmannspitze(Langkofel) 3111 Schiara 2562
Zwolferkofel(Croda dei Toni) 3094 Sasso di Mur 2554
Elferkofel(Cima Undici) 3092 Cima delle Dodici 2338
Sass Rigais(Geislerspitzen) 3027 Monte Pavione 2336
Tre Cime di Lavaredo 3003 Cima di Posta 2235
Catinaccio d'Antermoia(Kesselkogel) 3001 Monte Pasubio 2232
Funffingerspitze 2997

主な峠

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ランコフェル峠
ガルデナ峠
名称 形態 標高(m)
Passo d' Ombretta(Campitello - Caprile) 小道 2738
Langkofeljoch(Val Gardena - Campitello) 小道 2683
Tschagerjoch(Karersee - Valle Vajolet) 小道 2644
Grasleiten Pass(Valle Vajolet - Valle Grasleiten) 小道 2597
Passo di Pravitale(Altopiano di Rosetta - Valle Pravitale) 小道 2580
Passo delle Comelle(Altopiano di Rosetta - Cencenighe) 小道 2579
Passo Rosetta(San Martino di Castrozza - Altopiano di Rosetta) 小道 2573
Passo Vajolet(Tiers - Valle Vajolet) 小道 2549
Passo di Canali(Primiero - Agordo) 小道 2497
Passo dell'Alpe di Tierser(Campitello - Tiers) 小道 2455
Passo di Ball(San Martino di Castrozza - Valle Pravitale) 小道 2450
Forcella di Giralba(Sesto - Auronzo) 小道 2436
Col dei Bos(Valle del Falzarego - Valle Travernanzes) 小道 2313
Forcella Grande(San Vito - Auronzo) 小道 2262
Passo Pordoi(Caprile - Campitello) 道路 2250
Passo Sella(Val Gardena - Campitello) 道路 2218
Passo Tre Sassi(Cortina - San Cassiano) 小道 2199
Mahlknechtjoch(Alta Val Duron - Alpe di Siusi) 小道 2168
Passo Gardena(Val Gardena - Colfosco) 道路 2137
Passo Falzarego(Caprile - Cortina) 道路 2105
Passo Fedaia(Campitello - Caprile) 道路 2046
Passo Valles(Paneveggio - Falcade) 道路 2032
Passo Rolle(Predazzo - San Martino di Castrozza e Primiero) 道路 1984
Forcella Forada(Caprile - San Vito) 道路 1975
Passo di San Pellegrino(Moena - Cencenighe) 道路 1910
Forcella d'Alleghe(Alleghe - Valle di Zoldo) 小道 1820
Passo Tre Croci(Cortina - Auronzo) 道路 1808
Passo di Costalunga/Karerpaß(Nova Levante - Vigo di Fassa) 道路 1753
Passo di Monte Croce(San Candido/InnichenとSesto/Sexten - Valle del Piave と Belluno 道路 1638
Passo di Ampezzo(Dobbiaco/Toblach - Cortina と Belluno) 道路 1544
Passo Cereda(Primiero - Agordo) 道路 1372
Passo di Dobbiaco/Toblach(Brunico/Bruneck - Lienz 道路と鉄道 1209
Passo Duran(La Valle Agordina - Zoldo) 道路 1601

主な谷

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  • ヴァッレ・デル・ボイテ(Valle del Boite)
  • コンカ・アンペッツァーナ(Conca Ampezzana)
  • ヴァル・ガルデーナ(Val Gardena)
  • ヴァル・バディーア(Val Badia)
  • ヴァル・ディ・ファッサ(Val di Fassa)
  • ヴァッレ・デル・プリミエーロ(Valle del Primiero)
  • ヴァルゾルダーナ(Valzoldana)
  • ヴァル・ディ・フィエンメ(Val di Fiemme)
  • ヴァル・デーガ(Val d'Ega)
  • ヴァッレ・ディ・リヴィナッロンゴ(Valle di Livinallongo)または、ラディン語でフォドム(Fodom)
  • ヴァッレ・デル・コルデヴォーレ(Valle del Cordevole)
  • ヴァル・フィオレンティーナ(Val Fiorentina)
  • ヴァルベッルーナ(Valbelluna)
  • ヴァッラータ・アゴルディーナ(Vallata Agordina)

主な湖

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カレッツァ湖

世界遺産

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世界遺産 ドロミーティ
イタリア
ドロミーティ最高峰マルモラーダ
ドロミーティ最高峰マルモラーダ
英名 The Dolomites
仏名 Les Dolomites
面積 135,910.9370 ha
(緩衝地域98,511.9340 ha)
登録区分 自然遺産
登録基準 (7),(8)
登録年 2009年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
地図
ドロミーティの位置
使用方法表示

世界遺産としての「ドロミーティ」 (de:Welterbe Dolomitenは、以下の地域から構成される(番号は右表内の地図に対応する)。

  1. Pelmo-Croda da Lago
  2. Marmolada
  3. Pale di San Martino San Lucano – Dolomiti Bellunesi – Vette Feltrine
  4. Dolomiti Friulane e d`Oltre Piave
  5. Dolomiti Settentrionali Cadorine, Sett Sass
  6. Puez-Odle / Puez-Geisler / Pöz-Odles
  7. Sciliar-Catinaccio
  8. Rio delle Foglie
  9. Dolomiti di Brenta

世界遺産登録基準

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この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
  • (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

地域社会

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イタリア北東部のフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州フリウーリ地方で使われるフリウリ語スイスの第四の公用語ロマンシュ語とともにレト・ロマンス語群のひとつであるラディン語(ドロミテ語、ドロミーティ語)が使われている地域でもある。

この地域の経済は主として冬と夏の観光で成り立っている。

ドロミーティに因む名称

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  • 登山靴、スキーブーツのブランド「ドロミテ」名の由来ともなっている。
  • 英国の自動車ブランドであるトライアンフが、1930年代(初代〈英語版〉)と1970年代(2代目)に、英語読みの「Dolomite」(ドロマイト)を車名に用いている。

関連作品

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2022年に公開された映画「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(原題: Jurassic World: Dominion)」のストーリーにおける重要な要所としてドロミーティ山脈が設定されている。

劇中では前作で島から本土に持ち込まれ、世界中に散らばった恐竜国連の指揮下のもとで捕獲し、バイオエンジニアリング企業「バイオシン社」がドロミーティ山脈の麓に所有する保護区「サンクチュアリ」に移送するという保護活動が行われている。

出典

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  1. ^ a b Ledro Alps and Judicaria Biosphere Reserve, Italy” (英語). UNESCO (2022年4月). 2023年3月19日閲覧。
  2. ^ Die Besteigung der Berge - Die Dolomitgipfel werden erobert (German: The ascent of the mountains - the dolomite peaks are conquered)
  3. ^ 増山 2017, p. 239.
  4. ^ Borgatti, Lisa; Soldati, Mauro (2010-08-01). “Landslides as a geomorphological proxy for climate change: A record from the Dolomites (northern Italy)”. Geomorphology. Landslide geomorphology in a changing environment 120 (1–2): 56–64. Bibcode2010Geomo.120...56B. doi:10.1016/j.geomorph.2009.09.015. 
  5. ^ The Dolomites” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年5月6日閲覧。
  6. ^ a b イタリアの氷河崩壊、死者9人に 2人の遺体発見、行方不明は3人|秋田魁新報電子版”. 秋田魁新報電子版. 2022年8月3日閲覧。

参考文献

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  • 増山 暁子『イタリア古代山岳王国悲歌』悠書館、2017年6月22日。ISBN 9784865820294 

関連項目

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外部リンク

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  • visitfassa.com ファッサ渓谷 山を愛し、平和を愛する皆様に。 ドロミティ山 イタリア

主にイタリア語