ドル箱
ドル箱(ドルばこ)とは、俗語のひとつ。
明治時代初期に出来た言葉で、千両箱をもじったものが由来である。
当初は金庫の事をさしていたが、まもなく横浜の貿易商の間で使われていた「ドル旦」(ドルを稼ぐ金持ちの旦那)と結びつき、金持ちや金の引き出せそうな客を「ドル箱」「ドル旦」と呼ぶようになった。ドル旦は死語になったが、ドル箱は生き残り、のちに「金になる」という部分だけがクローズアップされ、儲けの良い俳優などが「ドル箱」と呼ばれるようになった(例:あいつは○○社のドル箱だね)。また、多くの利益をもたらす商品やコンテンツなども「ドル箱」と呼ばれる場合も少なくない。
ドル箱路線
[編集]鉄道や航空機、バスなどの交通機関において、需要が多く、さらに収益性の高い区間をドル箱路線(ドルばころせん)と呼ぶことがある。
ドル箱路線の存在は、その運行事業者の経営安定化に大きく寄与することが多い。例えば、東海道新幹線の収益は運行事業者であるJR東海の全収益の8割以上を占めている。JR各社の在来線で言えば、山手線、中央線快速、横浜線(JR東日本)やJR神戸線、JR京都線(JR西日本)など。大手私鉄では、東急東横線(東急電鉄)[1]、京急空港線(京急電鉄)[2][3]、西武池袋線(西武鉄道)[4][5]、名鉄名古屋本線(名古屋鉄道)[6]、阪急神戸線(阪急電鉄)[7]、近鉄奈良線(近畿日本鉄道)[8][9][10][11]など。中小私鉄ではOsaka Metroの御堂筋線など。公営交通では名古屋市営地下鉄東山線、福岡市地下鉄(福岡市交通局)の空港線などが挙げられる。
また、特急列車を始めとした速達列車の需要が高いため、特急券などによる運賃収入が高くなる路線もある。前述した東海道新幹線をはじめとする新幹線路線や智頭急行智頭線などが挙げられる。
なお、需要が多い区間においてはシェアの奪い合いが起こることがあり、運賃の値下げやサービスアップなどでシェア獲得を試みた結果として収益性が悪化することがあるため、必ずしも需要の多い区間がドル箱路線であるとは限らない。例えば、東京国際空港(羽田空港)と新千歳空港を結ぶ航空路線は1年あたり900万人から1000万人もの利用客が存在する[12]。しかし、この路線は日本航空・全日空・スカイマーク・AIRDOの4社が競合している。
パチンコ
[編集]パチンコ・パチスロで、勝ち取った玉やメダルを入れておく器のことも、ドル箱と呼ぶ。これは本来、パチンコで一番大きな箱が、左官で壁土を練る「トロ箱」に似ているため、トロ箱と呼ばれていたが、それが誤って覚えられ、ドル箱となった。ただし2000年後半以降は出玉循環機システムが普及しつつありドル箱を採用しているパチンコ店は減少している。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 昼間たかし、伊藤圭介『これでいいのか東京都大田区』マイクロマガジン社〈地域批評シリーズ日本の特別地域 9〉、2009年9月25日、80頁。ISBN 978-4896373226。国立国会図書館書誌ID:000010565719・全国書誌番号:21657089。「東横線は従来からドル箱路線なので……」
- ^ 佐藤良介『京急電車の運転と車両探見 向上した羽田空港アクセスと車両の現況』 140巻、JTBパブリッシング〈キャンブックス 鉄道〉、2014年3月15日、34頁。ISBN 978-4533097058。 NCID BB16542499。国立国会図書館書誌ID:025308989・全国書誌番号:22384848。「ドル箱の空港線」
- ^ 佐藤良介『なぜ京急は愛されるのか "らしさ"が光る運行、車輌、サービス』 120巻、交通新聞社〈交通新聞社新書〉、2018年2月15日、34頁。ISBN 978-4330862187。 NCID BB25677047。国立国会図書館書誌ID:028794462・全国書誌番号:23024308。「ドル箱の空港線」
- ^ 岡田悟、佐藤寛久、清水量介、須賀彩子、松本裕樹 著、週刊ダイヤモンド編集部 編『鉄道新発見!』(電子版) 24巻(第1版)、ダイヤモンド社〈週刊ダイヤモンド特集BOOKS〉、2013年8月3日、19頁 。「西武鉄道の“ドル箱路線”は、池袋駅から埼玉県所沢市方面へ向かう池袋線、そして西武新宿駅から高田馬場駅を経由して西東京市へ向かう新宿線だ。」
- ^ 岡田悟、佐藤寛久、清水量介、須賀彩子、松本裕樹 著、週刊ダイヤモンド編集部 編『週刊ダイヤモンド「鉄道特集」3冊パック』(電子版) 24巻(第1版)、ダイヤモンド社〈週刊ダイヤモンド特集BOOKS〉、2013年8月3日、249頁 。「西武鉄道の“ドル箱路線”は、池袋駅から埼玉県所沢市方面へ向かう池袋線、そして西武新宿駅から高田馬場駅を経由して西東京市へ向かう新宿線だ。」
- ^ 白井良和、諸河久「第一章 東海道本線のライバル名鉄の魅力」『日本の私鉄 4 名鉄』 780巻、保育社〈カラーブックス〉、1989年6月1日、4頁。ISBN 978-4586507801。 NCID BN03642804。国立国会図書館書誌ID:000001996904・全国書誌番号:89053558。「名古屋本線は、文字通り名鉄のドル箱路線であり、」
- ^ PHP研究所 編『阪急電鉄のひみつ』PHP研究所、2013年7月1日、15頁。ISBN 978-4569812854。 NCID BB13003250。国立国会図書館書誌ID:024632704・全国書誌番号:22279384。「例えばドル箱区間である梅田〜三宮に相当する 33km で……」
- ^ 「企業の目 近畿日本鉄道--多角化経営の転換期」『エコノミスト』第53巻第50号、毎日新聞社、1975年11月11日、98-99頁。「近鉄のドル箱路線である奈良線は……」 - 通巻:第2114号(1975年11月11日号)。
- ^ 増井健一(編著者)「第六章 ケース > 第一節 近畿日本鉄道 > いくつかのエピソード」『私鉄業界』(第一刷)教育社〈教育社新書 産業界シリーズ 30〉、1977年11月10日、215頁。 NCID BN05602775。国立国会図書館書誌ID:000001345324・全国書誌番号:77025335。「かつては放蕩息子と呼ばれた大軌奈良線や参宮急行線をドル箱路線に育てあげたのは……」
- ^ 『読売新聞』2004年4月30日大阪朝刊大阪版第二地方面26頁「近鉄奈良線が90周年 きょう沿線13駅で多彩なイベント」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2009年9月5日大阪夕刊第一総合面1頁「(ぷらっと沿線紀行:105)近鉄奈良線 その道、千金の輝き」(朝日新聞大阪本社 文・長崎緑子)
- ^ 「新千歳-羽田線年間旅客1000万人達成!」より