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トラルテクトリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2006年に発見されたトラルテクトリの石板。テンプロ・マヨール博物館蔵
トラルテクトリの彫刻。メトロポリタン美術館

トラルテクトリ[1]ナワ語群: Tlaltecuhtli / Tlalteuctli ナワトル語発音: [t͡ɬaːl.teːkʷ.t͡ɬi])は、アステカ神話の大地の神または怪物。

「トラルテクトリ」とは「大地(tlālli)の主(tēuctli / tēcuhtli)」を意味する。文字通りには男性のはずだが、女性として描かれることが多い[2]。実際には男性でも女性でもあった[3]

概要

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トラルテクトリには地母神的な側面と軍神の側面の両方があり、この両者はメソアメリカにおいては死と再生を司るという点で結びつきが強い。トラルテクトリは大地と農業の神であるマヤウェルアガベの神)やトラロック(雨の神)と関係が深いが、その一方で祭儀面では戦争と人身御供が中心になる[4]

アステカの彫刻では、地面を表すためにしばしば底部に刻まれる[2]。しゃがんで上を向いた姿で描かれ、笑った仮面をかぶり、しばしば背中に生贄の象徴や骸骨を背負っている[5]。顔がトラロックになっているものも多く見られる[4]

創造説話では、ケツァルコアトルテスカトリポカがトラルテクトリとチャルチウトリクエから雨の神々を創造したとされる[6]。またトラルテクトリは巨大なワニのような怪物で、ヘビに変身した神々によって2つに引き裂かれ、半分が大地に、半分が天空と星々になり、その背中で動植物が育ち、川が流れたという[2][7]

2006年にテンプロ・マヨールの近くでトラルテクトリを刻んだ大きな石板が発見された。アステカ皇帝アウィツォトルの没年である1502年に対応する10のウサギの年が記されており、アウィツォトルの墓の可能性が高いと考えられている[8]

脚注

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  1. ^ Miller & Taube (1993) の日本語訳では「トラルテクートリ」と伸ばされている
  2. ^ a b c Miller & Taube (1993) pp.167-168 "Tlaltecuhtli"
  3. ^ Miller & Taube (1993) pp.83-84 "Earth"
  4. ^ a b Baquedano (2001) p.351
  5. ^ Townsend (2000) p.123
  6. ^ Read & González (2000) p.223
  7. ^ Smith (2012) p.199
  8. ^ Smith (2012) pp.57-58

参考文献

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  • Baquedano, Elizabeth (2001). “Earth Deities”. The Oxford Encyclopedia of Mesoamerican Cultures. 1. Oxford University Press. pp. 351-352. ISBN 0195108159 
  • Miller, Mary; Taube, Karl (1993). The Gods and Symbols of Ancient Mexico and the Maya: An Illustrated Dictionary of Mesoamerican Religion. Thames & Hudson. ISBN 0500050686 (日本語訳:『図説マヤ・アステカ神話宗教事典』東洋書林、2000年)
  • Read, Key Almere; González, Jason J. (2000). Handbook of Mesoamerican Mythology. ABC-CLIO, Inc. ISBN 0874369983 
  • Smith, Michael E. (2012). The Aztecs (3rd ed.). Wiley-Blackwell. ISBN 9781405194976 
  • Townsend, Richard F. (2000) [1992]. The Aztecs (Revised ed.). Thames & Hudson. ISBN 0500281327