コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

トラム (ルクセンブルク)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トラム(ルクセンブルク)
シンボルマーク
主力車両のウルボス3 (2018年撮影)
主力車両のウルボス3
2018年撮影)
基本情報
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク
所在地 ルクセンブルク市
種類 路面電車ライトレール
路線網 1系統(2024年現在)[1][2]
開業 2017年12月10日[3][1][2]
所有者 ルクストラムフランス語版[4]
車両基地 1箇所
使用車両 ウルボス3[2][4]
路線諸元
営業キロ 12.2 km(2024年7月現在)[2]
軌間 1,435 mm[4]
電化区間 8.6 km(2024年7月現在)[3][5]
電化方式 直流750 V
架空電車線方式[4]
路線図(未開通区間も含む)
テンプレートを表示

この項目では、ルクセンブルク首都であるルクセンブルク市路面電車ライトレールについて解説する。2017年に開通後、ルクセンブルク市の要所を経由する公共交通機関として路線網の拡充が続いており、多くの乗客に利用されている。2024年現在はルクセンブルクとルクセンブルク市が所有する公開有限会社のルクストラムフランス語版(Luxtram)による運営が行われている[3][1][2][6][7][8]

歴史

[編集]

ルクセンブルク市には、かつて1875年に開通した馬車鉄道が存在し、1908年には路面電車ルクセンブルク市電フランス語版)への転換が実施された。それ以降も路線網は拡大を続け、1930年には総延長31 kmの路線網が築かれ、年間利用客数は700万人を記録した。だが、1926年に営業運転を開始した路線バスへの置き換えが進められた事で廃止が進められ、最後に残った系統も1964年9月5日をもって営業運転を終了した[6][7][5][9]

その後、ルクセンブルク市内では自動車が主要な交通機関となったが、道路の混雑の悪化が課題となっていた。それを解消するため、1990年代以降ルクセンブルク市に再度路面電車を導入する動きが起こり始めた。当初計画された、ルクセンブルク国鉄に直通するトラムトレインは反対運動や国鉄側の難色により実現しなかったものの、2006年にルクセンブルク市内に路面電車(ライトレール)を導入する方針が採択され、翌2007年にこれらの建設・運営を担う「ルクストラム(Luxtram)」が発足した。これは今後のルクセンブルク市の人口および近隣諸国からの通勤客の増加による公共交通機関の需要増大を受けてのものである[5][10]

金融危機による建設開始の大幅な遅れや幾度かの反対運動も起きたが、2015年から敷設に向けた準備工事が、2016年7月から本格的な工事が開始された。また、2015年にはスペインの鉄道車両メーカーであるCAFとの間に使用される車両導入に関する契約を交わした。そして2017年12月10日に最初の路線となるルクセスポフランス語版電停(Luxexpo) - ルート・ブレック - パフェンダル電停(Rout Bréck – Pafendall)間が営業運転を開始した。また、これに合わせて当初の終点の1つとなったルート・ブレック-パフェンダル電停とルクセンブルク国鉄プファフェンタール-キルヒベルク駅英語版フランス語版の間を結ぶケーブルカープファフェンタール-キルヒベルク・ケーブルカーフランス語版)が開通している[3][5][10][1][2][6]

その後、翌2018年7月27日、ルート・ブレック - パフェンダル電停からシャーロット大公爵夫人橋フランス語版を渡りスターレ広場/エトワールフランス語版電停(Stäreplaz / Étoile)へ向かう区間が営業運転を開始した。続けて2020年12月13日にはエトワール広場電停からルクセンブルク駅電停(Gare centrale)、2022年9月11日にはルクセンブルク駅電停からボヌヴォア工業高校フランス語版電停(Lycée technique de Bonnevoie)へ向かう区間が、更に2024年7月7日にはボヌヴォア工業高校電停からサッカー・ラグビースタジアムであるスタッド・ドゥ・ルクセンブルク(Stadion)まで向かう全長3.7 kmの区間の延伸が実施されている[5][1][11][2][6][7][12][4][13][14][15][16]

利用客は開通以降増加を続けており、2024年2月時点の1日平均利用客数は10万7,000人を記録している[2]

概要

[編集]
路面電車の車庫(2017年撮影)

2024年7月時点で、ルクセンブルク市では以下の区間で路面電車が運行している他、後述の通り2つの延伸区間の工事が進められている。一部の電停では路線バスルクセンブルク国鉄と接続している他、パーク・アンド・ライド(P+R)に対応した大型駐車場も設置されている。また、ルート・ブレック-パフェンダル電停(Rout Bréck – Pafendall) - ルクセンブルク駅電停(Gare centrale)の間、全長3.6 kmの区間は景観保護のため架線が設置されておらず、この区間を走行する電車はスーパーキャパシタに充電した電気を用いて走行する他、各電停の線路の中央に設置された第三軌条からの充電が実施される。車両の検査や修理に対応した施設を備えた車庫はルクセスポ電停(Luxespo)付近に存在し、最大32両の車両が収容可能となっている[3][5][6][7][4][13][17][18][19]

運賃については、混雑・渋滞の緩和や非富裕層の労働者支援、環境問題への対策を目的に、2020年3月1日以降多くの公共交通機関と共に無料となっている[1][20][21]

画像 電停名 運行開始年 接続交通機関 備考・参考
Findel Aéroport 2025年(予定) 路線バス ルクセンブルク=フィンデル空港と接続
Héienhaff 路線バス 駐車場を設置
Luxexpo 2017年 路線バス 駐車場を設置
Alphonse Weicker 路線バス
Nationalbibliothéik - Bibliothèque nationale
Universitéit
Coque 路線バス
Europaparlament / Parlement européen
Philharmonie - Mudam 路線バス
Rout Bréck – Pafendall 路線バス
ケーブルカー
ケーブルカーはルクセンブルク国鉄の駅と接続
Theater 2018年 路線バス
Faïencerie 路線バス
Stäreplaz / Étoile 路線バス
Hamilius 2020年 路線バス
Place de Metz
Paräisser Plaz / Place de Paris
Gare centrale 路線バス
ルクセンブルク国鉄
Leschte Steiwer / Dernier Sol 2022年 路線バス
Lycée Bouneweg 路線バス
Scillas 2024年
Howald Gare 路線バス
ルクセンブルク国鉄
駐車場を設置
Lycée Vauban
Wassertuerm
Stadion 路線バス 駐車場を設置

車両

[編集]
ウルボス3(2024年撮影)

ルクセンブルクのトラムで使用されている車両は、スペインCAFが展開する路面電車・ライトレール向け車両であるウルボス(Urbos)のうち、超低床電車ウルボス3である。全長45,400 mm、全幅2,650 mm、定員数最大420人の両運転台式7車体連接車で、アヴァン・プルミエール・エージェンシー(Agence Avant-Première)に所属するコンストラクター兼デザイナーのエリック・リン(Eric Rhinn)、造形作家のミシェル・レオナルディ(Michel Léonardi)、照明デザイナーのイザベル・コールテン(Isabelle Corten)が手掛けた車体・車内デザインには、展望性を向上させた大きな窓や幅広の車体を活かした開放感ある車内レイアウトが含まれている。また、両側に8箇所づつ存在する乗降扉の窓は車体によって異なる色のガラスが用いられており、乗降扉の識別の容易さに加えて路面電車を使った移動の誘致を図ったデザインとなっている。また、車内にはUSBタイプの充電ポートや冷暖房も完備されている。屋根上には架線レス区間での走行に備え、CAFが開発したスーパーキャパシタ(ACR)が搭載されている。2024年現在33両(101 - 133)が在籍している[1][5][10][17][22][23][24]

今後の予定

[編集]

2024年現在、ルクセンブルクでは以下の路面電車の延伸区間の建設や計画が進められている他、更なる延伸の検討も行われている[11][2][25][6][7][26]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 当初は2024年末までに工事が完了する見込みであったが、諸事情によりスケジュールに遅れが生じている。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g Luxembourg: Free public transport requires more investments”. Urban Transport Magazine (2019年6月12日). 2024年8月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i Libor Hinčica (2024年3月9日). “Tramvaj v Lucemburku se má dočkat dalšího rozšíření”. Československý Dopravák. 2024年8月30日閲覧。
  3. ^ a b c d e LA LIGNE DE TRAMWAY”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Michael Beitelsmann 2018, p. 27.
  5. ^ a b c d e f g Witold Urbanowicz (2018年12月9日). “Tramwaje wróciły do Luksemburga we francuskim stylu”. TransportPubliczny. 2024年8月30日閲覧。
  6. ^ a b c d e f Przemysław Farsewicz (2024年3月29日). “Luksemburg wzbogaci się o nowe linie tramwajowe”. TransportPubliczny. 2024年8月30日閲覧。
  7. ^ a b c d e Roman Czubiński (2024年7月13日). “Luksemburg rozszerza sieć tramwajową”. TransportPubliczny. 2024年8月30日閲覧。
  8. ^ A propos de Luxtram”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  9. ^ Il y a cinquante ans disparaissait le dernier tram”. vergule (2024年7月4日). 2024年8月30日閲覧。
  10. ^ a b c Historique”. tram.lu. 2022年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月30日閲覧。
  11. ^ a b Jens Brenhardt (2020年12月15日). “Luxembourg: The tram reaches the Central Station”. Urban Transport Magazine. 2024年8月30日閲覧。
  12. ^ TRONÇON D”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  13. ^ a b Michael Beitelsmann 2018, p. 26.
  14. ^ RED BRIDGE”. Luxemburg. 2024年8月30日閲覧。
  15. ^ Opening of the new tram section between the ‘Gare Centrale’ and ‘Lycée Bouneweg’ on 11 September 2022”. Mobiliteit.lu (2022年9月8日). 2024年8月30日閲覧。
  16. ^ Extension of the T1 tram line”. Ville de Luxemburg (2024年7月7日). 2024年8月30日閲覧。
  17. ^ a b Michael Beitelsmann 2018, p. 28.
  18. ^ Un tracé multimodal”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  19. ^ LE « NEIE TRAMSSCHAPP »”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  20. ^ ルクセンブルク、全国で公共交通機関を無料化 世界初”. AFP BB News (2020年3月1日). 2024年8月30日閲覧。
  21. ^ TARIFS”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  22. ^ Le design”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  23. ^ CAPACITÉ”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  24. ^ CHIFFRES CLÉS”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  25. ^ Noah Bovenizer (2024年2月5日). “Luxembourg approves €135m tram extensions”. Railway Technology. 2024年8月30日閲覧。
  26. ^ UNE RÉALISATION EN PLUSIEURS ÉTAPES”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  27. ^ TRONÇON E”. Luxtram. 2024年8月30日閲覧。
  28. ^ Luxexpo The Box”. Luxemburg City Tourist Office. 2024年8月30日閲覧。

参考資料

[編集]
  • Michael Beitelsmann (2018-10). “Drahtlos in die City”. Strassenbahn Magazin (GeraMond Verlag GmbH): 26-28. 

外部リンク

[編集]