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トニー・セール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
再構築したColossusでの暗号解読を監督するトニー・セール(右)(2006年、国立コンピューティング博物館にて)

トニー・セール(Tony Sale)ことアンソニー・エドガー・セール(Anthony Edgar Sale、1931年1月30日 - 2011年8月28日)は、イギリス電子工学者、プログラマであり、コンピュータ史に関する技術史学者である。

彼は1993年から2008年にかけて、完全動作するColossus Mark IIの再構築を指揮した[1][2]。再構築された装置は、イギリスのブレッチリーパークにある国立コンピューティング博物館で展示されている[3]

生涯

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彼はロンドン南部のダリッジ・カレッジで教育を受けた[4]。12歳のときに金属製組み立て玩具「メカノ」を使ってジョージ英語版と名付けた人型ロボットを作成した。以降1949年に第4版になるまで改造を続けた。ジョージ・マークIVは後にメディアで取り上げられている[5][6]。セールは1949年にイギリス空軍に入隊し、1952年まで務めた。空軍での3年間で、flying officer空軍中尉)まで昇進した。彼はデブデン空軍基地の空軍士官レーダー学校の講師だった[6]。セールは、1950年代にはピーター・ライト英語版の下でMI5のエンジニアとして働いていた[4]

1992年から2007年にかけて、セールはColossus Mark IIの再構築を指揮した。完成した装置は、ブレッチリーパークにある国立コンピューティング博物館で展示されている[7][8]

セールは2011年に、妻のマーガレットと3人の子供、7人の孫を残して亡くなった。

業績

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セールはマルコーニ研究所と協力して、英国コンピュータ協会(BCS)の技術部長として、ロンドンのサイエンス・ミュージアムでコンピュータの修復プロジェクトを監督していた[9]

彼は1965年に準会員としてBCSに加盟し、1967年に会員、1988年にフェロー、1996年に名誉フェローに選出された。1967年から1970年までにBCS評議会に選出された。1965年、BCSのベッドフォードシャー支部の創設メンバーとなり、1979年に会長に指名された[9]

1989年、セールはサイエンス・ミュージアムの上級キュレーターに任命され、ドロン・スウェード英語版と協力して博物館が保有するコンピュータの一部を復元した[4]。彼は1989年にコンピュータ保存協会英語版を立ち上げたグループの一員であり、1992年以降はブレッチリーパークトラストと関係を持った[10]。1991年、彼はブレッチリーパークを住宅開発から救うキャンペーンに参加した。

1992年、彼は新設されたブレッチリーパークトラストの幹事となり、1994年からは無給の博物館館長を務めた[9]トミー・フラワーズが1943年にロンドン郵便本局英語版で開発・構築したColossusを再構築するためのColossus Rebuild Projectを1993年に創設し、1994年に始動した[11]

セールは、英国、ヨーロッパ、米国での戦時の暗号解読について講義した。彼は2001年の映画『エニグマ』の技術顧問だった[12]

セールのウェブサイト、Codes and Ciphers in the Second World Warは、第二次世界大戦の暗号解読に関する情報源である。彼の小冊子Colossus 1943–1996[13]では、ドイツのローレンツ暗号英語版の解読と、Colossusの再構築について概説している。

再構築されたColossusを正面から見た写真。右から左に、(1)ベッドステッド。連続したループ内にメッセージテープを含み、2番目のテープがロードされている。(2)Jラック。選択パネルとプラグパネルを備える。(3)Kラック。大きな"Q"スイッチパネルと傾斜パッチパネルを備える。(4)ダブルSラック。コントロールパネルと、5つの2行のカウンターを備える。(5)Cラック。5組×4つの「セット合計」決定スイッチを備える。その前にタイプライターが置かれている[14][15]

賞と栄誉

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Colossusの再構築作業により[7]、1997年にCOMDEX ITパーソナリティオブザイヤーを受賞した[16]。また、2000年にスコットランド王立技芸協会英語版のシルバーメダルを受賞した[17]

彼の死後、2012年にコンピュータ保存協会はコンピュータの保存と復元に関するトニー・セール賞を創設した[18]

脚注

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  1. ^ Sale, Tony. “Video of Tony Sale talking about rebuilt Colossus 2008-6-19”. 13 May 2017閲覧。
  2. ^ https://www.theguardian.com/theguardian/2011/aug/31/tony-sale-obituary
  3. ^ Colossus – The Rebuild Story, The National Museum of Computing, http://www.tnmoc.org/colossus-rebuild-story 13 May 2017閲覧。 
  4. ^ a b c Campbell-Kelly, Martin (31 August 2011), “Tony Sale obituary”, Guardian, https://www.theguardian.com/theguardian/2011/aug/31/tony-sale-obituary 31 August 2011閲覧。 
  5. ^ Robot George: early humanoid revived after 45 years”. Daily Telegraph (22 November 2010). 26 November 2010閲覧。
  6. ^ a b A walk of fame for George the robot”. BBC News. BBC (17 November 2010). 30 August 2011閲覧。
  7. ^ a b https://www.bbc.com/news/av/technology-14726045/computer-conservationist-sale-dies
  8. ^ The Colossus Gallery, The National Museum of Computing, http://www.tnmoc.org/explore/colossus-gallery 13 May 2017閲覧。 
  9. ^ a b c Tony Sale. “Tony Sale CV”. codesandciphers.org.uk. 31 August 2011閲覧。
  10. ^ Tony Sale on the regeneration of Bletchley Park”. Open University. 23 November 2010閲覧。
  11. ^ p. 150, Colossus: the secrets of Bletchley Park's code-breaking computers, B. Jack Copeland, Oxford University Press, 2006, ISBN 0-19-284055-X Google Books
  12. ^ Jagger's at breaking point over code, Henry Fitzherbert, Daily Express, 26 August 2001
  13. ^ Sale, Tony (2004) [1998], The Colossus Computer 1943–1996 and how it helped to break the German Lorenz cipher in WWII, Cleobury Mortimer: M & M Baldwin, ISBN 0 947712 36 4  – A slender (20 page) booklet
  14. ^ Sale, Tony, The Colossus its purpose and operation, http://www.codesandciphers.org.uk/virtualbp/fish/colossus.htm 
  15. ^ https://www.codesandciphers.org.uk/lorenz/pods/coltalk_2.html
  16. ^ Nicolle, Lindsay, Whizkids no match for wartime wizards, The Times, 7 May 1997.
  17. ^ Minutes, Opening Meeting of the 180th Session (2000-2001), RSSA official site
  18. ^ Welcome to the Tony Sale award web site”. Computer Conservation Society. 12 October 2012閲覧。

外部リンク

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