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トゲアシガニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トゲアシガニ
トゲアシガニ
分類De Grave et al. (2009)
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 甲殻綱 Crustacea
: エビ目(十脚目) Decapoda
亜目 : エビ亜目 Pleocyemata
下目 : カニ下目 Brachyura
上科 : Grapsoidea
: イワガニ科 Grapsiidae
亜科 : ショウジンガニ亜科 Plagusiinae
: トゲアシガニ属 Percnon
: トゲアシガニ
P. planissimum
学名
Percnon planissimum (Herbst)

トゲアシガニ Percnon planissimum (Herbst) は、イワガニ科カニの1種。岩礁海岸に生息し、岩に張り付く姿勢できわめて素早く動き回る。

特徴

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全体に扁平なカニ[1]背甲の長さは約40mm、幅は37mm程度。背甲の輪郭はほぼ丸く、前の部分では第1触角窩が深くくぼみ、背面側から第1触角が見て取れる。額は狭く、前に突き出し、先端は鋭く2つに割れ、また側面の中程から左右前方に鋭い棘が1対出る。第1触角窩と眼窩の間は幅広く、前に突き出して先端が3つの棘に分かれる。眼窩の後は大きく突き出した棘になり、その後方、背甲の側面にはそれに続いて3つの鋭い突起が並ぶ。背甲は短毛に覆われ、背面は赤褐色で、『出』の字のような緑青色の模様があり、背甲の前縁や歩脚の前面にある橙色の筋模様がよく目を引く[2]

鉗脚は左右同型、大きさも同じ。長節は細く、内側の縁に上下2列の小さな棘の列がある。腕節は短くて小さな棘が多い。前節は基部の上に小さな棘があるが全体には表面は滑らか。掌部は扁平で幅広くなっている[3]。4対の歩脚の内、第2、第3脚はよく発達し、第1、第4脚はそれらよりやや小柄。どの足も長節の前縁には7-8個の鋭い棘が並び、後側の縁には揃った毛の列がある。 雌雄とも腹部は5節のみ[4]

分布

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日本では房総半島から琉球列島小笠原諸島にまで見られる。国外ではインド洋太平洋に広く分布する[5]

生態など

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外洋性の岩礁海岸に生息する。潮間帯下部におり、ほとんど常に水面下におり、岩面に張り付くようにしている。行動はきわめて素早く、岩から岩へと敏速に移動するのがよく見られる[3][4]。岩の隙間にいることもよくある[6]

メガロパは甲長5mmほど、淡黄色に生態と同じような鮮やかな緑の斑紋がある。額棘ははっきり突き出して先端はかすかに2つに割れる。眼窩外歯、つまり眼窩の前にある棘は3角に突き出す。背甲の後端は第4歩脚の基部には届かない。幼蟹は甲長5.5mm、成体と形態的には変わらない。この段階では雌雄の形態差、つまり性的2形はまだ見られず、また腹部は6節に区別される[7]

近似種

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本種はこの属では日本で唯一のものである。やや似たものにショウジンガニがあり、共にショウジンガニ亜科に属している。ただし背甲はより角張っており、全体にそこまで扁平でないなど、一見して区別は容易である。

出典

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  1. ^ 記載は主として岡田他(1965),p.721
  2. ^ 今原編著(2011)p.134
  3. ^ a b 三宅(1983),p.186
  4. ^ a b 西村編著(1995),p.411
  5. ^ 三宅(1983)p.186
  6. ^ 阿部(2008),p.15
  7. ^ 村岡(1967)

参考文献

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  • 岡田要他、『新日本動物図鑑 〔中〕』、(1967)、図鑑の北隆館
  • 西村三郎編著、『原色検索日本海岸動物図鑑〔II〕』、1992年、保育社
  • 三宅貞祥、『原色日本大型甲殻類図鑑(II)』、(1983)、保育社
  • 今原幸光編著、『写真で分かる磯の生きもの図鑑』、(2011)、トンボ出版
  • 阿部正之、『海辺の生物観察図鑑 海辺をまるごと楽しもう!』、(2008)、大丸グラフィックス
  • 村岡健作、(1967)「イワガニ科トゲアシガニ Percnon planissimum (herbest) の後期幼生について」、甲殻類の研究(3):p.61-67.