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デイヴィッド・デリンジャー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
デイヴィッド・デリンジャー
David Dellinger
生誕 (1915-08-22) 1915年8月22日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 マサチューセッツ州ウェークフィールド（英語版）
死没 2004年5月25日(2004-05-25)（88歳没）
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 バーモント州モントピリア
教育 イェール大学（学士）
オックスフォード大学ニュー・カレッジ（英語版）
ユニオン神学校
職業 著述家、活動家
著名な実績 政治活動、シカゴ・セブン
配偶者 Elizabeth Peterson[1]
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デイヴィッド・T・“デイヴ”・デリンジャー（David T. "Dave" Dellinger [ˈdɛlɪndʒər]、1915年8月22日 - 2004年5月25日）は、アメリカ合衆国の政治活動家である。ベトナム反戦運動や非暴力社会変動に関わった。1968年の民主党全国大会で暴動を扇動しようとしたとして起訴された7人、いわゆる「シカゴ・セブン」の一人である。

若年期と教育

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デリンジャーは、マサチューセッツ州ウェークフィールド（英語版）の裕福な家庭に生まれた。父レイモンド・ペニントン・デリンジャー(Raymond Pennington Dellinger)はイェール大学出身の法律家で、著名な共和党員であり、後に大統領となるカルビン・クーリッジの友人だった[1]。母方の祖母アリス・バード・フィスク(Alice Bird Fiske)は、アメリカ革命の娘たち（英語版）で活動していた[1][2][3]。

イェール大学で経済学の学士を取得して卒業した後、オックスフォード大学ニュー・カレッジ（英語版）に1年間留学し、会衆派の牧師になるつもりでユニオン神学校で神学を学んだ[4][5]。イェール大学では、同級生に経済学者のウォルト・ロストウがおり、友人となった。在学中には、大恐慌下にあって快適な生活を送っていることが嫌になり、大学を出てホーボーたちとともに生活したこともあった。オックスフォード大学在学中には、ナチス政権下のドイツを訪問し、内戦下のスペインで救急車の運転手を務めた。デリンジャーはフランシスコ・フランコ率いるナショナリスト派に反対していた。後にデリンジャーは、「第二次世界大戦はスペイン内戦よりも単純だった。ヒトラーが相手であっても、ゼネラル・モーターズ、USスチール、チェース・マンハッタン銀行（英語版）のために銃を取って戦おうという気にはならなかった」と述べた[6]。

政治活動

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第二次世界大戦中には、反戦を訴え、良心的兵役拒否者として投獄された。連邦刑務所では、同じく良心的兵役拒否者であるラルフ・ディジア（英語版）、ビル・サザランドらとともに、刑務所内の食堂の人種隔離に抗議し、それにより食堂は統合された[7]。

デリンジャーはアメリカ社会党に加盟し、その青年部である青年社会主義者連盟（英語版）の執行委員を務めていたが、1943年に脱退した。1946年2月、デリンジャーは急進的な平和主義団体である非暴力革命委員会（英語版）の設立に関わった[2]。1948年には良心的兵役拒否者中央委員会（英語版）を共同で設立した。また、戦争反対者同盟（英語版）の長年に渡るメンバーであり、1955年3月にはその職員となった。

1951年7月から11月にかけて、デリンジャーはラルフ・ディジア、ビル・サザランド、アート・エメリーとともに、ピースメーカーズ（英語版）が支援する、パリからモスクワまでの軍縮を呼びかける自転車旅行に参加し、途中、連合軍占領下のウィーンのソ連占領区域内の軍司令部まで到達した。デリンジャーは後に「我々はソ連占領区域には行くなと警告されていた。ソ連軍司令部へ行った者は、それ以降消息不明になっていた。しかし、我々はそんなことにはならないと考えていた。最悪でも刑務所に入れられるかもしれないが、私はそれに耐えられるということがわかっていた。ただ心配だったのは、家族をアメリカに戻らせたことだった」と述べた[8]。この自転車旅行は、1960年から1961年にかけて行われたサンフランシスコ＝モスクワ平和ウォーク（英語版）に影響を与えた[9]。

1950年代から1960年代にかけて、デリンジャーはアメリカ南部の「自由への行進」（公民権運動支持のための行進）に参加し、刑務所で何度もハンガーストライキを行った。1956年、デリンジャー、ドロシー・デイ、A・J・マスティ（英語版）は、非マルクス主義的左翼のための雑誌『リベレーション（英語版）』を創刊した[10][11]。

デリンジャーは、様々な人と接触し、親交を持った。それは、エレノア・ルーズベルト、ホー・チ・ミン、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、アビー・ホフマン、A・J・マスティ、グレッグ・カルバート（英語版）、ジェームズ・ベヴェル（英語版）、デイヴィッド・マクレイノルズ（英語版）などや、彼が尊敬するフレッド・ハンプトンを始めとするブラックパンサー党のメンバーである。また、多くの反戦組織とともに働き、キングやベヴェルを1960年代の反戦運動の指導者として引き込んだ。

1966年には、北ベトナムと南ベトナムの両方を訪問し、アメリカ軍の空爆の影響を直接見た。デリンジャーは後に、評論家たちが自身のハノイ訪問のみについて語り、サイゴンにも訪問していたことは無視されたと回想した[12]。

1968年、ベトナム戦争に抗議して納税を拒否する「戦争税に抗議する作家と編集者」宣言に署名し[13]、反戦のために納税拒否を実践する「戦争税抵抗プロジェクト」を支援した[14]。

デリンジャーはマハトマ・ガンディーの非暴力の原則を自身の反戦活動に応用するようになった。

シカゴ・セブン

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1968年にシカゴで開催された民主党全国大会に反戦デモ隊が乱入した。その後、デリンジャーら8人がその首謀者として逮捕され、暴動を煽動する目的で共謀し、違法に州境を越えた容疑で起訴された。うち1人は別審理となったため、残りの7人は「シカゴ・セブン」と呼ばれ、全米から注目された。7人の被告は、この裁判はベトナム戦争の遂行の是非を問う裁判だと喧伝した。1970年2月18日に判決が出され、共謀罪については全員無罪、暴動を煽動する目的で州境を越えた罪でデリンジャーら5人が有罪となった。その後、裁判長のジュリアス・ホフマン（英語版）がFBIを通じて弁護団の盗聴をしていたことが明らかとなり、控訴審で逆転無罪となった。また、法廷で裁判長を侮辱したとして侮辱罪でも有罪判決が出ていたが、控訴審では侮辱罪については誰にも判決を下さなかった[15][16]。

その後の活動

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デリンジャーは、1971年12月にミシガン州アナーバーで行われたジョン・シンクレア・フリーダム・ラリー（英語版）でスピーチした[17]。

1970年代後半、デリンジャーはゴダード大学（英語版）の社会人学位プログラムやバーモント芸術大学（英語版）で2年間教員を務めた[18][19]。2001年にはゴダード大学の卒業式でスピーチを行った[20]。

1996年、1968年以来初めてシカゴで民主党全国大会が開かれたとき、デリンジャーは自身の孫やアビー・ホフマンの息子らとともに、シカゴで座り込みをして逮捕された。

2001年、ケベック・シティーで開かれる自由貿易地域（英語版）に関する会議に対して、バーモント州モントピリアの若い活動家のグループとともに抗議活動を行った。

2004年、バーモント州モントピリアのヒートンウッズ老人ホームにて亡くなった。

著作物

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  • Dellinger, David T., Revolutionary Nonviolence: Essays by Dave Dellinger, Indianapolis : Bobbs-Merrill, 1970
  • Dellinger, David T., More Power Than We Know: The People’s Movement Toward Democracy, Garden City, N.Y. : Anchor Press, 1975. ISBN 0-385-00162-2
  • Dellinger, David T., Vietnam Revisited: From Covert Action to Invasion to Reconstruction, Boston, MA : South End Press, 1986. ISBN 0-89608-320-9
  • Dellinger, David T., From Yale to Jail: The Life Story of a Moral Dissenter, New York : Pantheon Books, 1993. ISBN 0-679-40591-7. (Dellinger's autobiography)
  • Dellinger, David (1999). “Why I Refused to Register in the October 1940 Draft and a Little of What It Led To”. A Few Small Candles: War Resisters of World War II Tell Their Stories. Kent State University Press. pp. 20–37. ISBN 0-87338-621-3. https://books.google.com/books?id=5lRGm8ETFGUC&pg=PA20 
  • デイヴ・デリンジャー、小田実 著、ギブソン松井佳子 訳『「人間の国」へ―日米・市民の対話』藤原書店、1999年。ISBN 978-4894341272。 

大衆文化において

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脚注

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  1. ^ a b c Kaufman, Michael T., "David Dellinger, of Chicago 7, Dies at 88", The New York Times, May 27, 2004
  2. ^ a b Hunt, Andrew E. (2006). David Dellinger: the life and times of a nonviolent revolutionary. NYU Press. p. 88ff. ISBN 978-0-8147-3638-8. https://books.google.com/books?id=785AOwJFGmoC&pg=PA88 2 October 2011閲覧。 
  3. ^ Revolution, Daughters of the American (28 March 2018). “Directory of the National Society of the Daughters of the American Revolution”. Memorial continental hall. 2022年8月7日閲覧。
  4. ^ “Lifelong Protester David Dellinger Dies (washingtonpost.com)”. www.washingtonpost.com. 2022年8月7日閲覧。
  5. ^ “Interview with David Dellinger”. 2022年8月7日閲覧。
  6. ^ “A quote from From Yale to Jail”. www.goodreads.com. 2022年8月7日閲覧。
  7. ^ Matt Meyer and Judith Mahoney Pasternak, "David Dellinger, 1915–2004," Nonviolent Activist, May–June 2004, pp. 10–11, 21.
  8. ^ “Ralph DiGia Fund for Peace & Justice » Timeline of a Life of Activism” (英語). 2020年9月16日閲覧。
  9. ^ Lyttle, Bradford. (1966). You come with naked hands; the story of the San Francisco to Moscow march for peace.. Greenleaf Books. OCLC 3216677. http://worldcat.org/oclc/3216677 
  10. ^ James Tracy (1996). Direct action. University of Chicago Press. p. 85. ISBN 978-0-226-81127-7. https://archive.org/details/directactionradi00trac. "liberation magazine." 
  11. ^ Kaufman, Michael T. (May 27, 2004). “David Dellinger, of Chicago 7, Dies at 88”. New York Times. https://www.nytimes.com/2004/05/27/us/david-dellinger-of-chicago-7-dies-at-88.html January 26, 2014閲覧。 
  12. ^ “"Interview with David T. Dellinger, 1982." 08/31/1982.WGBH Media Library & Archives. Retrieved 3 November 2010.”. 2012年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月7日閲覧。
  13. ^ "Writers and Editors War Tax Protest," January 30, 1968 New York Post
  14. ^ "A Call to War Tax Resistance" The Cycle 14 May 1970, p. 7
  15. ^ Carlson, Michael, "Obituary: David Dellinger : Pacifist elder statesman of the anti-Vietnam Chicago Eight", The Guardian (UK), Friday 28 May 2004
  16. ^ United States v. Dellinger, Center for Constitutional Rights.
  17. ^ Barrett, Jane (1971-12-16), “John Sinclair: The Rally and the Release”, Village Voice, https://news.google.com/newspapers?id=mFQQAAAAIBAJ&pg=6476,5754947 2010年2月14日閲覧。 
  18. ^ "Life on the Edge: The turbulent public and private lives of David Dellinger & Elizabeth Peterson" Article dated 5/29/2006 from the Rutland Herald/Times Argus.
  19. ^ "Entry: David Dellinger", Cf. p. 103 in John J. Duffy, Samuel B. Hand, Ralph H. Orth, The Vermont Encyclopedia, University Press of New England, 2003. ISBN 9781584650867
  20. ^ Watch the video from Goddard College's archives.

参考文献

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  • Edited by Mark L. Levine, George C. McNamee and Daniel Greenberg / Foreword by Aaron Sorkin. The Trial of the Chicago 7: The Official Transcript. New York: Simon & Schuster, 2020. ISBN 978-1-9821-5509-4. OCLC 1162494002
  • Edited with an introduction by Jon Wiener. Conspiracy in the Streets: The Extraordinary Trial of the Chicago Seven. Afterword by Tom Hayden and drawings by Jules Feiffer. New York: The New Press, 2006. ISBN 978-1-56584-833-7
  • Edited by Judy Clavir and John Spitzer. The Conspiracy Trial: The extended edited transcript of the trial of the Chicago Eight. Complete with motions, rulings, contempt citations, sentences and photographs. Introduction by William Kunstler and foreword by Leonard Weinglass. Indianapolis: Bobbs-Merrill Company, 1970. ISBN 0224005790. OCLC 16214206
  • Schultz, John. The Conspiracy Trial of the Chicago Seven. Foreword by Carl Oglesby. Chicago: University of Chicago Press, 2020. ISBN 9780226760742. (Originally published in 1972 as Motion Will Be Denied.)

外部リンク

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