デジタルスレッド
デジタルスレッド(英:Digital Thread)とは、直訳すると「デジタルの糸」を意味し、デジタルデータが追跡可能な形で糸のようにつながっている状態を表す。
広義には、あらゆるコンピュータやシステム上のデジタルデータのつながりがあれば「デジタルスレッド」を成していると考えられるが、狭義には、主に製造業において、製品ライフサイクルの企画・設計から生産、納品後のアフターサービス、廃版にいたるまでの全プロセスにわたり、データのコンテキスト(文脈)を維持した状態でデータをつなぐものとして語られ、一般的にはデジタルスレッドについて述べるときには狭義の意味合いを指すことが多い。
起源
[編集]デジタルスレッドという言葉の起源は不確かではあるものの、2010年代にはアメリカ国防総省において、資材調達のトレーサビリティを確保する目的で使われ始めた[1][2]。
2016年頃には、米国のメディア上に定義が掲載され[3]、日本においても2020年現在に至るまで様々なITソリューションプロバイダーやIT系メディアによって言葉の定義やデジタルスレッドの必要性が語られている[4][5][6]。
これは、1999年にIoTという言葉が誕生し[7]、2011年にドイツでインダストリー4.0が謳われ始めたことで、製品がメカニカル、エレクトロニクス、ソフトウェアの組み合わせから成る製品がものづくりの前提となったことが背景にあると言える。製品の複雑さが高まる中、メカニカル、エレクトロニクス、ソフトウェアの各分野を完全に連携・連動することは難しく、それによる設計の手戻りや品質リスクなどの可能性が生じる[8]。 これらの各分野を含め、製品ライフサイクル全体にデジタルスレッドが構築されることで、データ入力や加工の減少を見込めるという効果がある[9]。
デジタルスレッドとデジタルツインの関係性
[編集]デジタルスレッドを語るときには、同時にデジタルツインについて言及されることが多い[10][11][12][13]。
製品をデジタルの双子として再現したデジタルツインで、実際の製品の状況を把握し、その設計背景や派生製品をたどるためにデジタルスレッドを使用するという用途の違い、関連性を持つ。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “Why Digital Thread?”. アメリカ合衆国国防総省. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “Digital Thread Implementation in the Air Force : AFRL’s Role”. アメリカ国立標準技術研究所. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “What is digital thread? - Definition from WhatIs.com” (英語). SearchERP 2020年6月12日閲覧。
- ^ “デジタルスレッド”. www.aras.com. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “これが製造業DXのすべてだ!生産ライフサイクル管理からVRまで、全方位で提供”. EnterpriseZine. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “デジタライゼーションの真の価値を創出する3つのデジタルツインとその統合”. TechFactory. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “第1回:30年の歴史の中で具体化するIoT”. www.eyjapan.jp. 2020年6月12日閲覧。 “「IoT」は1999年にケビン・アシュトン(Kevin Ashton)によって最初に使用された言葉ですが”
- ^ 山本節雄「メカ・エレキ・ソフト協調設計の最新動向」『精密工学会誌』第72巻第12号、精密工学会、2006年、1461-1464頁、doi:10.2493/jjspe.72.1461、2020年6月12日閲覧。
- ^ “製造業がデジタルスレッドに最優先で取り組むべき理由”. www.aras.com. 2020年6月12日閲覧。
- ^ 日経BizTarget. “「デジタルスレッド」を知らずして「デジタルツイン」を語るなかれ”. 日経BizTarget. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “デジタル・ツイン | シーメンス”. Siemens Digital Industries Software. 2020年6月12日閲覧。
- ^ “デジタルツインVSデジタルスレッド≫SSI”. SSI (2019年11月13日). 2020年6月12日閲覧。
- ^ “成功するデジタルツイン、失敗するデジタルツイン”. www.aras.com. 2020年6月12日閲覧。