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デイノテリウム科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
デイノテリウム科
デイノテリウム
デイノテリウム
アゾフ歴史考古学古生物学博物館(ロシア)
地質時代
古第三紀漸新世 - 新第三紀鮮新世
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
上目 : アフリカ獣上目 Afrotheria
階級なし : 近蹄類 Paenungulata
: 長鼻目 Proboscidea
階級なし : 近長鼻型類 Plesielephantiformes
: デイノテリウム科 Deinotheriidae
学名
Deinotheriidae

Bonaparte, 1845

亜科 -
Chilgatherium
Prodeinotherium
Deinotherium

デイノテリウム科(デイノテリウムか、学名Deinotheriidae ) とは、ゾウ目の絶滅した科である。学名は、「恐ろしい」(Deino) と「獣」(therium) を意味する[1]

チルガテリウムプロデイノテリウムデイノテリウム の3属が含まれる。

形態

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デイノテリウム科の体の形とプロポーションは、現代のゾウのそれによく似ているが、以下のような特徴があった。

デイノテリウムのイメージ図
現代のような上顎の牙はなく、代わりに下顎の前部の切歯が牙のように生えていた。これらは一種の巨大なフックのように下方と後方に湾曲しており、牙は掘るためではなく、樹木の皮などを剥ぎ取るために使用されたと考えられている[2]
長鼻目の中でも、このような牙を持つ種属は他におらず、デイノテリウム科の最も際立った特徴となっている。
頭骨に大きな鼻腔があることから筋肉のついた鼻を持っていたと考えられる。ただし、ゾウのような長い鼻だとすると水平に伸びる上顎骨はむしろ邪魔になるため、より筋肉質でバクの鼻に似ていたとされる[2]
一方で水を飲むのに膝をつくのはエネルギー効率が悪いため、立ったままで水を飲める程度には長かったとも考えられている[3]
デイノテリウムの頭骨と歯
デイノテリウム科の歯式は (乳歯 )となっている[4]
犬歯はなく、切歯は下顎のみにしかなく牙を形成している。
臼歯は 5 本の歯冠の低い臼歯が上下顎にある (P3-P4,M1-M3)。稜状の凸部を持つ横堤歯(ロフォドント)であるが、稜の数は属により異なる[5]
デイノテリウム科の臼歯は、上臼歯の稜(ロフ)の側端から後方に伸びる稜(クリスタ)があることが特徴的である(下臼歯からは前方に伸びる)[5]
  • ポストクラニアル (体骨格)
足は現代のゾウのように長かった。特に中手骨が長く、マヌス(足首関節以下の部位)は長鼻目の中で最も高い部類にはいる[6]
首は、現代のゾウに比べると長い[6]
デイノテリウムの骨格
現生ゾウの骨格

属による形態の違い

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大きな違いはサイズで、時代が新しくなると共にサイズが大きくなっている [7]

生息時代・生息域

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デイノテリウム科は、古第三紀漸新世から新第三紀を跨いで第四紀更新世まで生息していたと考えられている。 およそ2600万年もの長きに渡って科が存続したことになり、長鼻目の中でも成功した系統であるといえる[5][8]

新生代
古第三紀 新第三紀 第四紀
暁新世 始新世 漸新世 中新世 鮮新世 更新世
66 - 56M 56 - 34M 34 - 23M 23 - 5M 5 - 2.6M 2.6-
デイノテリウム科
生息時代

デイノテリウム科は、最初はアフリカに出現し、その後南アジア (インド - パキスタン) とヨーロッパに広がった。その間、サイズがはるかに大きくなったことを除けば、形態はほとんど変化していない。中新世後期までに、彼らは当時最大の陸上動物になっていた。 さまざまなマンモスマストドン類の系統とは異なり、デイノテリウム科は氷河時代を通じて存続するのではなく、更新世の初期に絶滅した[9]

生態

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Deinotherium giganteumの模型(マインツ自然史博物館ドイツ語版

デイノテリウム科は森林の近くに生息し、高木になる木の芽や果実を食べる摂食行動を取っていたとして知られている。 下向きの牙は樹皮や他の植物を剥ぐのに用いられ、鼻はバクのように植物を掴んで舌で操作できる場所に移動させるために使われていた[2]

植物食の動物は、ブラウザー(木の芽や枝葉を食べる)・グレイザー(草を食べる)・ミックスフィーダー(どっちも食べる)という3つの摂食タイプに分けられるが、化石でも臼歯の状態で摂食タイプを判断することができる。グレイザーは砂を含むことがあり歯に擦り傷が多く残るのだが、デイノテリウム科の臼歯にはそのような磨耗はほとんど見られず「ブラウザー」と診断されている[10]。 同一時代・同一地域にミックスフィーダーとされるゴンフォテリウムも生息していたことが分かっているが、摂食嗜好の異なる種は直接の食物競争を回避することができるため、同一地域で共存可能(ニッチ分化)であった[10]

デイノテリウムの臼歯は、前三本(P3-M1) が食物を砕く目的で使用し、奥二本(M2-M3)を植物材料を剪断(スライス)するのに使用していたと考えられている。剪断に用いられる第2と第3大臼歯は垂直方向に強く働き、横方向(左右方向)にはほとんど作用しない。この咀嚼動作は、ゴンフォテリウム科(横方向のすりつぶし) やゾウ(水平方向の剪断)に見られる歯の動作とは異なる[11]

デイノテリウム科の中でも原始的なチルガテリウムプロデイノテリウムは、上記の摂食嗜好から森林の近くに張り付いて生活していたと考えられているが、より大型のデイノテリウムに進化すると前脚が長くなり高い走行性(効率的な歩幅)を手に入れている[1]。中新世後期のヨーロッパにおけるサバンナの広がりへと適応して、広大で(彼らにとっては)役に立たない草原を横切り、おそらく森から森へと移動していたとされる。

分類

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下位分類

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 デイノテリウム科  
  チルガテリウム亜科  

 チルガテリウム Chilgatherium

Chilgatheriinae
デイノテリウム亜科

 プロデイノテリウム Prodeinotherium

 デイノテリウム Deinotherium

Deinotheriinae
Deinotheriidae


脚注

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  1. ^ a b Record of Prodeinotherium (Proboscidea; Mammalia) from the Mid-Tertiary Dharmsala Group of the Kangra Valley, NW Himalaya, India
    Tiwari et al, (2006)
  2. ^ a b c A reconstruction of the facial morphology and feeding behaviour of the deinotheres
    Markov et al, (2001)
  3. ^ 生命の大進化40億年史 新生代編
    土田 (2023), p. 144
  4. ^ Systematics and Taxonomy of the European Deinotheriidae
    Huttunen (2002a)
  5. ^ a b c New large-bodied mammals from the late Oligocene site of Chilga, Ethiopia
    Sandars et al, (2004)
  6. ^ a b Shoulder height, body mass and shape of proboscideans
    Larramendi (2016)
  7. ^ 各属のサイズの根拠は個別の説明ページを参照のこと。
  8. ^ Deinotherium in the Pleistocene Wayland (1932)
  9. ^ The record of Deinotheriidae from the Miocene of the Swiss Jura Mountains (Jura Canton, Switzerland)
    Gagliardi et al, (2021)
  10. ^ a b Feeding preferences of Gomphotherium subtapiroideum (Proboscidea, Mammalia) from the Miocene of Sandelzhausen
    Calandra et al, (2010)
  11. ^ Deinotheriidae (Proboscidea, Mammalia) dental remains from the Miocene of Lower Austria and Burgenland
    Huttunen (2002b)

参考文献

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外部リンク

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