ディリクレの関数
ディリクレの関数(ディリクレの-かんすう)とは、実数全体の成す集合 ℝ 上で定義される次のような関数のことである。
ただし、ℚ は有理数全体の成す集合であり、ℝ ∖ ℚ は無理数全体の成す集合である。式から分かるように、この関数はいたるところで不連続である。ディリクレの関数は数学者のペーター・グスタフ・ディリクレに因んで命名された[1]。
積分可能性
[編集]が成り立つから[注釈 1]、ディリクレの関数はリーマン積分不可能であることが分かる。一方、ルベーグ積分は可能で、その値は 0 である。これは、可算無限集合である ℚ はルベーグ測度に関して零集合であることによる。
周期性
[編集]この関数は、任意の有理数に対して となる。これは有理数体 ℚ が加法について閉じていることによる。
また、この関数は無限個の周期を持ち、かつ定数関数とならない一例である。
連続関数の極限としての表示
[編集]ディリクレの関数は、ディリクレ本人によって、
と表せることが示されている(したがってディリクレ関数は 2 階のベール関数の一例である)。その方法は次による。
任意の有理数 q を考える。n! q は、十分大きな n に対して恒等的に整数である。それに比べ、無理数 r は、いくら n を大きく取っても n! r が整数にならない。従って、ディリクレの関数は、次のように変形できる。
ただし、ℤ は整数全体の成す集合。さてここで、関数
を表示できれば、f(x) = lim[n→∞] F(n!x) となって決着がつく。(F は単独で考えても興味深い関数である。) F は、不連続でありながらも周期的である。一定の周期を持つ関数として三角関数を考える。cos2(πx) は、x が整数であれば 1 を返し、それ以外であれば [0, 1) 内の実数を返す。[0, 1) 内の実数は、無限回冪乗することによって 0 に収束させることが出来る。また、1 はいくら冪乗しても常に 1 となって変化しない。これより、
が結論付けられる。従って、
となる訳である。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ Lejeune Dirichlet, Peter Gustav (1829), “Sur la convergence des séries trigonométriques qui servent à représenter une fonction arbitraire entre des limites données”, Journal für die reine und angewandte Mathematik 4: 157–169 Google Books; arXiv:0806.1294
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Dirichlet関数 (PDF)
- Weisstein, Eric W. "Dirichlet Function". mathworld.wolfram.com (英語).