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ディストニックラジカルイオン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ディストニックイオンは、電荷と不対電子を同じ原子あるいは原子団の位置に書き表せないラジカルイオンである。

ディストニックラジカルイオン:distonic radical ion、:ione radicale distonico)とは、ラジカルとイオンが結合を介して離れた化学種である[1]ディストニックイオン(英:distonic ion)とも呼ばれる。

例えば、ラジカルカチオンはディストニックであるが、はディストニックではない。構造的特徴に応じて、さまざまなサブクラスが存在する[2]

歴史

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1959年、McLaffertyにより、カルボニル化合物のEIマススペクトルで生成される分子イオンからオレフィン分子が脱離する反応が発見された(McLafferty転位)。1970年代にかけて、McLaffertyおよびGrossによって、上記反応が現在で言うディストニックラジカルイオン種を経由することが提案されている。1984年、Bouma, Radom, およびYatesは、広範な実験的研究を通じて、この用語を生み出した[3]

性質

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ディストニックラジカルイオンは、その発生法や、それらの独特な振る舞いについて、種々の質量分析技術による解析が進んでいる。

ジラジカル双性イオンイオン化によって生成するラジカルカチオンまたはラジカルアニオンが典型例ではあるが、中性分子の一電子酸化還元によっても生成する[4]

得られたデータを通じて、ほとんどの場合、イオン化が生じる前よりも安定性が低いことを示している。とはいえ、ディストニックイオンは他の異性体と比較して安定なイオンと見なされており、多くの科学者の注目を集めているという事実を損なうものではない[5]。しかしながら、短寿命種ゆえにイオン部位とラジカル部位の機能を解析することが困難であることが指摘されている[6]

“アート”型ディストニックイオンの例[7]

脚注

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  1. ^ Muller, P. (1994). “Glossary of terms used in physical organic chemistry (IUPAC Recommendations 1994)”. Pure and Applied Chemistry 66 (5): 1077–1184. doi:10.1351/pac199466051077. ISSN 1365-3075. 
  2. ^ Hill, Brian T.; Poutsma, John C.; Chyall, Leonard J.; Hu, Jun; Squires, Robert R. (September 1999). “Distonic ions of the 'ate' class”. Journal of the American Society for Mass Spectrometry 10 (9): 896–906. doi:10.1016/S1044-0305(99)00053-7. 
  3. ^ Williams, Peggy E.; Jankiewicz, Bartlomiej J.; Yang, Linan; Kenttamaa, Hilkka I. (12 November 2013). “ChemInform Abstract: Properties and Reactivity of Gaseous Distonic Radical Ions with Aryl Radical Sites”. ChemInform 44 (46): no. doi:10.1002/chin.201346233. 
  4. ^ Tomazela, Daniela Maria; Sabino, Adão A.; Sparrapan, Regina; Gozzo, Fabio C.; Eberlin, Marcos N. (July 2006). “Distonoid ions”. Journal of the American Society for Mass Spectrometry 17 (7): 1014–1022. doi:10.1016/j.jasms.2006.03.008. PMID 16713292. 
  5. ^ Stirk, Krista M.; Kiminkinen, L. K. Marjatta; Kenttamaa, Hilkka I. (November 1992). “Ion-molecule reactions of distonic radical cations”. Chemical Reviews 92 (7): 1649–1665. doi:10.1021/cr00015a008. 
  6. ^ Stirk, Krista G.; Kenttamaa, Hilkka I. (1991-07-01). “Radical type reactivity in a .gamma.-distonic radical cation: a gas-phase experimental study”. Journal of the American Chemical Society 113 (15): 5880–5881. doi:10.1021/ja00015a062. ISSN 0002-7863. 
  7. ^ Hill, Brian T.; Poutsma, John C.; Chyall, Leonard J.; Hu, Jun; Squires, Robert R. (September 1999). “Distonic ions of the "Ate" class”. Journal of the American Society for Mass Spectrometry 10 (9): 896–906. doi:10.1016/S1044-0305(99)00053-7. 

参考文献

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