テネブレの7つの応唱
『テネブレの7つの応唱』(Sept répons des ténèbres) FP 181は、フランシス・プーランクが1961年に作曲した宗教音楽。曲はテネブレのレスポンソリウム(応唱)から採られたラテン語のテクストを用いた7曲から成り、ソプラノ独唱、合唱と管弦楽のために書かれている。ニューヨーク・フィルハーモニックの委嘱作品であり、初演は作曲者の死後の1963年4月にニューヨークのリンカーン・センターで行われた。
概要
[編集]プーランクは1936年に初めて宗教音楽へ意識を戻して『黒い聖母像への連禱』 FP 82を作曲、翌1937年には続けてミサ曲 ト長調などの複数の宗教的作品を書き上げた。また1956年のオペラ『カルメル会修道女の対話』ではフランス革命の最中、修道女たちに襲い掛かる宿命が扱われた[1]。
本作はリンカーン・センター内に新たに誕生したコンサート・ホールのこけら落としのためとして、レナード・バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニックからの委嘱を受けて1961年に作曲された。同ホールは当時フィルハーモニック・ホールと呼ばれていたが、その後エイヴリー・フィッシャー・ホールという名前が定着することになる[1][2]。プーランクはまず1961年にピアノ伴奏合唱曲とした版を書き上げ、1962年にこれにオーケストレーションを施した。初演は作曲者没後の1963年4月11日に行われ、指揮はトーマス・シッパーズ、ニューヨーク・フィルハーモニックの合唱と管弦楽が演奏した[3]。フランス初演は1963年12月10日にパリのシャンゼリゼ劇場において、ジョルジュ・プレートルの指揮、フランス国立管弦楽団とサント=クロワ少年合唱団[注 1]、フランス国営放送合唱団によって行われた[4]。
楽曲構成
[編集]曲はテネブレのレスポンソリウム(応唱)からのラテン語のテクストに基づいている[5]。7つの楽曲は以下のようになっている[5]。
- ひとときすらも (Una hora non potuistis vigilare mecum)
- 極悪なる商人ユダは (Judas, mercator pessimus)
- 不敬の者はイエズスを (Jesum tradidit)
- 私の眼は曇った (Caligaverunt oculi mei)
- 地上は暗闇となった (Tenebrae factae sunt)
- 主は埋められぬ (Sepulto Domino)
- 見よ、正しき者の最後を (Ecce quomodo moritur justus)
第1曲は聖木曜日の3番目の早課への応唱である「Una hora non potuistis vigilare mecum」に描かれる、ゲッセマネのイエスに関するものである。第2曲は聖木曜日の2番目の早課への応唱である「Judas, mercator pessimus」に描かれるイスカリオテのユダに焦点を当てている。第3曲と第4曲は聖金曜日の3番目の早課への応唱である「Jesum tradidit impius」と「Caligaverunt oculi mei」から採られたものである。第5曲は聖金曜日の2番目の応唱である「Tenebrae factae sunt」、第6曲は聖土曜日の3番目の応唱である「Sepulto Domino」、終曲は聖土曜日の2番目の応唱である「Ecce quomodo moritur justus」となっている[5]。
曲は少年合唱とソプラノ独唱、管弦楽のために書かれている。後の演奏では独唱パートと合唱部に女声が加えられている[2]。
脚注
[編集]注釈
- ^ Les Petits chanteurs de la Sainte-Croix
出典
- ^ a b Cookson 2014.
- ^ a b Bossert 2014.
- ^ BNF 2017.
- ^ gloriamusica 2017.
- ^ a b c Schmidt 1995.
参考文献
[編集]- Bossert, Dorothea (25 March 2014). “Bestechende Präzision und Klangkultur” (ドイツ語). Südwestrundfunk. 30 January 2017閲覧。
- Cookson, Michael (2014年). “Francis Poulenc (1899–1963) / Stabat Mater (1950) / Sept Répons des Ténèbres (1961/62)”. musicweb-international.com. 30 January 2017閲覧。
- Schmidt, Carl B. (1995). The Music of Francis Poulenc (1899–1963): A Catalogue. Oxford: Clarendon Press. ISBN 978-0-19-816336-7
- (French) Sept répons des ténèbres . FP 181 / liturgie. BNF. (2017) 30 January 2017閲覧。
- “Sept Répons des ténèbres de Francis Poulenc” (French). gloriamusica.fr (2017年). 30 January 2017閲覧。
関連文献
[編集]- Brandenstein, W.W. (2002). Francis Poulenc's Sept Répons Des Ténèbres: An Introduction and Analysis for Conductors. University of Southern California 642 pages. (要購読契約)