テトラ・アビエーション Mk-5
テトラ・アビエーション Mk-5(テトラ・アビエーション マーク5、英語: teTra aviation Mk-5)は、日本のテトラ・アビエーションが開発している有人eVTOL(空飛ぶクルマ)。
経緯
[編集]エア・モビリティ開発コンテスト「GoFly」向けのコンセプトモデルとして[1]2020年(令和2年)に発表されたMk-3に続き[2][3] [4]、テトラ・アビエーションは1年をかけてMk-5の開発を行った[3]。福島ロボットテストフィールドの飛行試験場における試験飛行などを経て[5][6]、2021年(令和3年)7月26日に「エアベンチャー オシュコシュ2021」にてMk-5の実機を初公開し、同時に予約販売のための有料ミーティングの受付を開始した[3]。
2021年8月16日にはアメリカにて連邦航空局(FAA)から実験航空機向けの特別耐空証明証と飛行許可証、登録記号「N155TA」を取得し、9月2日にカリフォルニア州で飛行試験を開始した[3][4][7][8]。2021年12月20日の時点で販売の成約がなされ[4][6]、2022年(令和4年)6月22日の時点で4機の試作機が完成している[9]。また、2022年9月17日には、福島ロボットテストフィールドにて岸田文雄内閣総理大臣の視察を受け、岸田総理がコックピットに搭乗している[10]。2022年末のデリバリー開始が予定されていたが[7][8]、後に2023年(令和5年)中に変更されている[4]。
想定している主な顧客はプライベートパイロットライセンスを持つアメリカの富裕層だが[3]、日本の顧客への販売も可能としている[11]。個人利用機としてアメリカの顧客からのフィードバックを受け[2][4]、2拠点間移動サービス向けの量産型eVTOLの開発へ活かす方針が立てられており[12]、2024年(令和6年)には実用機に位置づけられる2人乗りのMk-7の開発が、Mk-5での実証を基に開始されている[13]。
設計
[編集]「30分で100 km移動する移動体験」をコンセプトとする[6]。機体はアルミニウムおよび炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)製で[14]、市販向けの有人飛行における安全性を重視し、マルチコプター形式ではなく従来の有人航空機に近い形状を採用している[2]。前後2枚の固定翼に32枚の垂直離着陸用プロペラを、胴体後尾に1枚の推進用プロペラを備え、水平飛行は固定翼と尾部のプロペラで行う[2][3]。垂直離着陸用プロペラは4枚が故障しても安定飛行に支障はなく[3][6]。フライトシステムの制御系統も安全性のために二重化されている[6]。オプションとして緊急着陸用のパラシュートを装備することも可能[14]。乗員は1名で[13][14]、操縦にはジョイスティックを用いる[4][14]。
販売はキットプレーンとして行われる[2][14]。価格は約5,000万円[4]。また、機体の仕様はシリアル番号(SN)によって異なり[14]、「オシュコシュ2021」で発表された機体はSN2[3]、顧客にデリバリーされる機体はSN3以降となる[14]。
諸元(SN3以降)
[編集]出典:「テトラ・アビエーション」[14]
- 全長:6.15 m
- 全幅:8.62 m
- 全高:2.51 m
- 本体重量:357.8 kg
- 最大離陸重量:580 kg
- バッテリー:リチウムイオン電池[13](電力17 kWh)
- 最大推力:854 kgf(垂直方向)、125 kgf(水平方向)
- 巡航速度:160 km/h
- 航続距離:160 km
- 乗員:1名
脚注
[編集]- ^ 「Vision & History」
- ^ a b c d e 「購入後すぐに飛行できる空飛ぶクルマ「teTra Mk-5」を解説!」
- ^ a b c d e f g h 「テトラ・アビエーション、空飛ぶクルマ「Mk-5」を米国で初公開、予約販売を開始」
- ^ a b c d e f g 「日本発、空飛ぶクルマの国際コンペで唯一受賞。LAから第一顧客」
- ^ 「「南相馬バレー」が空飛ぶクルマ開発の聖地に!有力ベンチャーが集結」
- ^ a b c d e 「空の未来に挑む!日本の有力企業トップが語る「空飛ぶクルマ」の最前線」
- ^ a b 「テトラ・アビエーション、空飛ぶクルマ販売に向け米国で飛行試験を開始」
- ^ a b 「テトラ・アビエーション、新機種「Mk-5」米国で実験航空機としての認証取得」
- ^ 「テトラ、アビエーション、合計4.5億円の資金調達を完了。国内外問わずエンジニア採用に注力」
- ^ 「岸田首相、福島の研究機構を視察「世界に冠たる拠点に」…空飛ぶクルマにも乗り込む」
- ^ 「テトラ、アビエーション、新型eVTOL飛行動画初公開!」
- ^ 「テトラ・アビエーション、100kmを30分で移動する“空飛ぶクルマ”eVTOL「Mk-5」を披露[Japan Drone 2022]」
- ^ a b c 「航続距離は最高200km…福島発、2人乗り「空飛ぶクルマ」開発始動」
- ^ a b c d e f g h 「テトラ・アビエーション」
参考文献
[編集]- “Vision & History”. テトラ・アビエーション. 2024年5月29日閲覧。
- ドローンジャーナル編集部・芹澤 (2021年11月15日). “購入後すぐに飛行できる空飛ぶクルマ「teTra Mk-5」を解説!”. ドローンジャーナル. インプレス. 2024年5月29日閲覧。
- ドローンジャーナル編集部 (2021年7月30日). “テトラ・アビエーション、空飛ぶクルマ「Mk-5」を米国で初公開、予約販売を開始”. ドローンジャーナル. インプレス. 2024年5月29日閲覧。
- “日本発、空飛ぶクルマの国際コンペで唯一受賞。LAから第一顧客”. JOB PICKS. ニューズピックス (2023年9月27日). 2024年5月29日閲覧。
- 自動運転ラボ編集部 (2021年7月14日). “「南相馬バレー」が空飛ぶクルマ開発の聖地に!有力ベンチャーが集結”. 自動運転LAB.. ストロボ. 2024年5月29日閲覧。
- “空の未来に挑む!日本の有力企業トップが語る「空飛ぶクルマ」の最前線”. wisdom. 日本電気 (2021年12月20日). 2024年5月29日閲覧。
- ドローンジャーナル編集部 (2021年9月6日). “テトラ・アビエーション、空飛ぶクルマ販売に向け米国で飛行試験を開始”. ドローンジャーナル. インプレス. 2024年5月29日閲覧。
- “テトラ・アビエーション、新機種「Mk-5」米国で実験航空機としての認証取得”. DRONE. PRONEWS (2021年9月3日). 2024年5月29日閲覧。
- “テトラ・アビエーション、合計4.5億円の資金調達を完了。国内外問わずエンジニア採用に注力”. DRONE. PRONEWS (2022年6月22日). 2024年5月29日閲覧。
- “岸田首相、福島の研究機構を視察「世界に冠たる拠点に」…空飛ぶクルマにも乗り込む”. 読売新聞オンライン. 読売新聞東京本社 (2022年9月18日). 2024年5月29日閲覧。
- “テトラ・アビエーション、新型eVTOL飛行動画初公開!”. DRONE. PRONEWS (2021年10月7日). 2024年5月29日閲覧。
- “テトラ・アビエーション、100kmを30分で移動する“空飛ぶクルマ”eVTOL「Mk-5」を披露[Japan Drone 2022]”. DRONE. PRONEWS (2022年6月22日). 2024年5月29日閲覧。
- “航続距離は最高200km…福島発、2人乗り「空飛ぶクルマ」開発始動”. ニュースイッチ. 日刊工業新聞社 (2024年2月5日). 2024年5月29日閲覧。
- “テトラ・アビエーション”. テトラ・アビエーション. 2024年5月29日閲覧。